最新更新日:2026年9月20日
この記事の内容
本記事では、会社の設立登記後、事業を開始するのに必須となる手続についてカバーします。これらは、株式会社、合同会社ともに共通して必要な手続であり、具体的には、以下の内容を章ごとに解説して行きます。
会社を設立した場合、社長(代表社員)が最低1人は必要であるため、本記事では自然人である代表者に関する社会保険等の手続についてもカバーします。それ以外に従業員等を採用する場合においては「会社に関する手続」から「採用に関する手続/初めて人を採用する場合の手続」をご参照ください。
(1)税務署への届出
会社を設立したら、所轄税務署において、国税関係の各種届出を行います。下表1に、提出が任意のものも含め、提出書類を一覧にまとめましたので、ご参照ください。
表1の手続は、e-Tax(※1)、又は法人設立ワンストップサービス(※2)によっても可能です。これらのオンラインサービスでは、次の章で説明する地方税に係る手続も(eLTAX(※3)と連携して)カバーしている為、窓口手続より効率的に対応することができます。これらのオンラインサービスを利用するには利用者登録とマイナンバーなどの電子証明書の取得が必要です。(詳しくは別記事「行政のオンライン手続について」をご参照ください。)
(※1)国税関係のオンラインサービス。
(※2)デジタル庁が運営する会社設立手続の総合オンライン窓口。
(※3)地方税共同機構が運営する地方税関係手続の共通オンラインサービス。
下表1のうち、「青色申告の承認申請書」の提出は任意ですが、会社はそもそも複式簿記による計算書類の作成義務があり)追加負担なしに税メリットが受けられるため、殆どの会社が青色申告を選択しています(※4)。従って、下表1のうち、①、②、③の書類はほぼ例外なく提出するもの、④、⑤、⑥.は必要に応じて提出するものになります。
(※4)国税庁の「令和3年度分 会社標本調査」によれば、99.2%の法人が青色申告を選択しています。
尚、消費税関係の届出に関しては、設立初年度から課税事業者となる場合や免税事業者ながら任意で課税事業者となる場合など、ケースに応じて判断やそれに伴う必要手続も違ってきます。これについては、別記事「消費税の課税事業者となるかどうか、について」にまとめましたのでご参照ください。
【表1】税務署への提出書類
| 提出書類 | 提出期限 | 備考 | |
|---|---|---|---|
| ① | 法人設立届出書 | 設立登記の日以降2ヶ月以内 | 定款の写しは必ず添付(状況により他にも添付書類あり)。 申請書様式、記載要領などは、国税庁「内国普通法人等の設立の届出」をご参照ください。 |
| ② | 青色申告の承認申請書 | 設立の日以降3ヶ月を経過した日と当該事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日まで | 青色申告を選択する場合に提出。提出期限に遅れた場合、青色申告の開始が1年遅れることになる。 申請書様式、記載要領などは、国税庁「青色申告書の承認の申請」をご参照ください。 |
| ③ | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 事務所等の開設から1ヶ月以内 | 経営者への報酬支払も対象となるため、法人を設立すると原則届出が必要。 申告書様式、記載要領などは、国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」をご参照ください。 |
| ④ | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 定めなし | 提出は任意。源泉所得税は、原則毎月納付しなければならないが、給与等の受給者が常時10人未満の事業所は、この特例により年2回(1月20日と7月10日)にまとめて納付することができる。 社長一人で会社を立ち上げた場合も、報酬から所得税を源泉徴収する必要があるため、納期の特例を受けるときには提出を要する。 申請書様式、記載要領などは、国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」をご参照ください。 |
| ⑤ | 棚卸資産の評価方法の届出書 | 第1期事業年度終了後2ヶ月以内(確定申告書の提出期限まで) | 提出は任意。提出しない場合、最終仕入原価法が適用になる。 申請書様式、記載例などは、国税庁「棚卸資産の評価方法の届出」をご参照ください。 |
| ⑥ | 減価償却資産の償却方法の届出書 | 第1期事業年度終了後2ヶ月以内(確定申告書の提出期限まで) | 提出は任意。提出しない場合、法定償却方法(※5)が適用になる。 申請書様式、記載例などは、国税庁「減価償却資産の償却方法の届出」をご参照ください。 |
(※5)建物、建物付属設備、構築物、生物、無形資産は定額法、それ以外は定率法(一部例外あり)。
(2)都道府県・市町村への届出
地方税に関する手続
地方税に係る届出を都道府県税事務所及び市町村役場へ行います。具体的には、法人設立届出書(と添付書類)を提出しますが、地方税は国税と違って自治体ごとに条例によって取扱いに多少違いがあります。
- ・提出先は自治体によって違うので、事前にチェックが必要です。
-
例えば、東京23区は都税事務所のみへの提出で良く、大阪市は市税事務所と大阪府税事務所へ提出します。
- ・提出期限、添付書類等も地域によって違いがあります。
-
例えば、東京都の提出期限は設立の日から15日以内、大阪市は2ヶ月以内とされています。
- ・地域によって届出書の様式も異なります。
-
但し、基本的には税務署への(所得税関係の)法人設立届出書と同じ内容です(税務署に提出する法人設立届出書と複写で作成する場合もあります)。
- ・都道府県事務所へ提出する場合、会社の所在地によって担当の事務所が異なるので、必ず管轄を確認してください。
-
例えば、東京都千代田区、文京区は千代田都税事務所、東京都中央区、江東区、江戸川区は中央都税事務所、などになります。
従って、窓口での手続にあたっては必ず自治体のホームページなどで、対応窓口や手続について最新の情報を確認しておきましょう。多くの自治体では、ホームページで届出書等の様式をダウンロードできるようになっています。
オンライン手続によれば、こうした自治体ごとの違いを自分で調べることなく対応できます。地方税ポータルシステムの eLTAX による手続もできますが、前章で述べた通り e-Tax、又は法人設立ワンストップサービスを通じて、国税関係の手続から続けて各自治体への提出も行うことができるのでお勧めです。
特別徴収した住民税に関する手続
従業員等の給与(役員報酬を含む)から特別徴収した住民税は、原則、徴収した月の翌月10日までに従業員等の住所地の市区町村に納付します(納付期限が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その次の平日が納付期限)。但し、給与等の受給者が常時10人未満の事業所は特例により年2回(6月から11月に特別徴収した住民税を12月10日まで、12月から5月分を6月10日まで)にまとめて納付することができます。
社長一人で会社を立ち上げた場合も、その報酬から住民税を特別徴収する必要があるため、納期の特例を受けるときには「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を(社長の1月1日時点の居住地である)市区町村へ提出し承認を受ける必要があります。手続には eLTAX(地方税のオンラインサービス)を利用することもできます。
(3)社会保険の加入
会社の場合は、経営者も従業員と同様に、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入義務があるので、会社を設立したら原則として(※6)社会保険の加入手続(届出)を行います。具体的には、下表2の事業所としての手続と下表3の被保険者となる社長(代表社員)に関する手続の2種類を行います。いずれも届出期限が短いので注意が必要です。
(※6)社長(代表社員)が適用除外に該当する場合を除く。社会保険の適用除外については別記事「社会保険の適用基準」をご参照。
設立した法人の事業所が社会保険に加入する手続
【表2】事業所としての手続
| 届出書類 | 届出先 | 届出期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 事業所の所轄年金事務所 | 事実発生日から5日以内 |
届出フォーマット、記入例、添付書類など手続の詳細は、日本年金機構「新規適用の手続き」をご参照ください。
被保険者(この場合は社長/代表社員)の資格取得手続
【表3】被保険者となる社長/代表社員に関する手続
| 届出書類 | 届出先 | 届出期限 | |
|---|---|---|---|
| ① | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 /厚生年金保険 70歳以上被用者該当届 | 事業所の所轄年金事務所 | 事実発生日から5日以内 |
| ② | 健康保険 被扶養者(異動)届 /国民年金 第3号被保険者関係届 | 同上 | 同上 |
届出フォーマット、記入例、添付書類など手続の詳細は、日本年金機構「被保険者・被扶養者関係(資格取得・喪失等)」をご参照ください。
以下、表3について補足致します。
- ①の届出の記入に必要な「報酬月額」については、別記事「社会保険の標準報酬月額とその決め方」の資格取得時決定をご参照ください。
- ①については、社長(代表社員)が高齢者の場合に注意が必要です。まず、厚生年金保険については70歳以上で加入義務がなくなるため「被保険者資格取得届」の代わりに通常は「70歳以上被用者該当届」の届出義務があります(本届出は表題の通りその両方を兼ねています)。また、健康保険については75歳以上で後期高齢者医療制度に切替わるため「被保険者資格取得届」の提出は不要になります。つまり、社長(代表社員)が厚生年金保険の「70歳以上被用者」に該当する限り本届出の提出が必要ですが、社長(代表社員)が75歳以上で、且つ「70歳以上被用者」に該当しない場合には本届出は不要になります。「70歳以上被用者」の該当要件については別記事「従業員等の70歳到達」をご参照ください。
- ②は社長(代表社員)の親族を健康保険の被扶養者とする場合、及び同配偶者を国民年金の第3号被保険者とする場合に提出します。それぞれの該当要件は「健康保険の被扶養者」、「国民年金の第3号被保険者」をご参照ください。
表2、表3の手続は、e-Gov (※7)によっても手続することができます。(法人設立ワンストップサービスでは、表2の手続のみカバーしており、表3の手続を行うことができません。)e-Gov を利用するには、GビズID(※8)やマイナンバーなどの電子証明書の利用が必要ですが、社会保険等の手続を広くカバーできるため、会社設立以降の手続効率化のためにもこの際利用を考えても宜しいかと思います。(e-Gov や GビズIDに関しても、詳しくは別記事「行政のオンライン手続について」をご参照ください。)
(※7)デジタル庁が運営する社会保険関係等のオンラインオンラインサービス。
(※8)デジタル庁が所管する、法人、個人事業主向けのオンライン行政手続のための共通ID。
(4)銀行口座開設
会社設立後、預金口座の開設が必要ですが、昨今はマネーロンダリング規制の強化に伴い銀行のモニタリング義務が強化されており、法人名義の口座開設には、各銀行とも慎重になっています。従って、余計な混乱を避けるため、以下のような対応をお勧めします。
- 法人設立以前から取引のある銀行など、日頃から付き合いのある銀行等を優先する。
- 特に親しい銀行等がない場合、本店所在地近くの銀行等の支店にアプローチする。
- (見栄を張って)メガバンクの本店など、関係のない銀行にアプローチすることは避ける。
口座開設にあたっては以下のような書類の提出が求められます。
- 定款
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 代表者印の印鑑証明書
- 代表者の本人確認書類
このほか、税務署宛の法人設立届出書(控)、取締役・業務執行社員等の本人確認書類、(株式会社の場合)公証人の発行する「実質的支配者に関する申告受理及び認証証明書」、(実際に銀行等との窓口となる)取引担当者の本人確認書類どを求められることがあります。
以上を踏まえ、口座開設の申し込み(資料提出)から実際に口座が開設されれるまで、2週間から1ヶ月ほどかかることもあるので、余裕を持ってアプローチすることをお勧めします。一般的に、ネット専用銀行は口座開設手続もオンライン中心で素早い対応に定評があり、最初の口座開設候補として検討しても宜しいかと思います(※9)。
口座開設が完了したら、代表者の預金口座にある出資金を会社の預金口座へ移しかえます。
(※9)最近では、メガバンクでも法人口座の獲得に積極的に対応しているところも出てきており、まずはネット検索などで調べてみると良いかと思います(2026年9月追記)。
以上
