本記事では、従業員を採用する場合に必要な雇用保険と社会保険の手続について解説します。従業員にはいわゆる正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員なども含めて資格要件を満たす場合に必要な手続になります。
採用する従業員が資格要件を満たすかどうかの判断については、別記事「労働保険・社会保険の適用基準」をご参照ください。また、初めて従業員を採用する場合には、事業(所)としての手続も必要となりますが、それについては別記事「労働保険の加入手続」及び「社会保険の加入手続」をご参照ください。本記事では、事業(所)としての手続は済んでいる前提で、従業員の採用時に必要となる手続についてカバーします。初めて従業員を採用する場合にも、当然ながら従業員個人に関する手続も必要ですので、本記事の内容は、上述の別記事の内容から従業員に関する部分を抜粋し(やや詳しく解説し)たような内容となります。
因みに、労働保険には雇用保険の他に労災保険もありますが、労災保険は適用事業の労働者に自動的に適用され、労働者ごとの資格取得手続はない(労働者には保険料の負担もない)ため、本記事で触れることはありません。
雇用保険の資格取得手続
雇用保険の適用労働者を採用する都度、以下の手続を行います。尚、以下は、採用する労働者が日雇労働者以外の被保険者に該当する場合の手続であり、日雇労働被保険者に該当する場合には別の手続となる点、ご留意ください(※1)。
(※1)日雇労働被保険者など、雇用保険の被保険者の類型については、別記事「労働保険・社会保険の適用基準」をご参照。
提出するもの | 提出先 | 提出期限 |
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雇用保険被保険者資格取得届 | 所轄の公共職業安定所 | 雇用の翌月10日まで |
尚、雇用保険被保険者資格取得届の様式、記入方法などについては厚生労働省「マイナンバー制度(雇用保険関係)」からアクセス可能な他、e-Gov による電子申請も可能です。
公共職業安定所において手続き後、雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用・事業主通知用)と雇用保険被保険者証が送付されるので、このうち雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)と雇用保険被保険者証を従業員へ交付します。
社会保険の資格取得手続
社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用事業所が労働者を採用する都度、以下の手続を行います。尚、以下は、採用する労働者が健康保険の一般被保険者に該当する場合(つまり日雇労働者を採用する場合は除く)、及び厚生年金保険の当然被保険者に該当する場合(つまり70歳以上の高齢者を採用する場合は除く)の手続であり、それ以外の場合には必要に応じて別途行うことになります(※2)。
(※2)社会保険の被保険者の類型については、別記事「労働保険・社会保険の適用基準」をご参照。
提出するもの | 提出先 | 提出期限 |
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健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 事業所を所轄する年金事務所 | 事実発生日から5日以内(※3) |
健康保険被扶養者(異動)届/国民年金 第3号被保険者関係届(※4) | 同上 | 同上 |
(※3)船員の厚生年金保険及び船員保険(一般の健康保険に相当)の被保険者の資格取得届は、事実発生日から10日以内。
(※4)健康保険の被保険者の被扶養者、厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者がいる場合の届出。
尚、上記届の様式、記入方法などについては日本年金機構「被保険者・被扶養者関係(資格取得・喪失等)」からアクセス可能な他、e-Gov による電子申請も可能です。「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」に記入が必要な「報酬月額」については、別記事「社会保険の標準報酬月額とその決め方」の資格取得時決定をご参照ください。
年金事務所において手続き後、全国健康保険協会(協会けんぽ)から健康保険被保険者証が送付されるので従業員へ交付し、年金事務所からは標準報酬決定通知書が送付されるので従業員へ内容を通知するとともに、以降、記載された標準報酬月額を社会保険料控除額の計算に利用する(※5)ことになります。
(※5)社会保険料の控除や納付手続については、別記事にてカバーする予定です。
以上