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会社設立登記後の必要手続

この記事の内容

本記事では、会社の設立登記後、事業を開始するのに必須となる手続についてカバーします。これらは、株式会社、合同会社ともに共通して必要な手続であり、具体的には、以下の内容を章ごとに解説して行きます。

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(1) 税務署への届出
(2) 都道府県・市町村への届出
(3) 社会保険の加入
(4) 銀行口座開設

以上は、会社を設立したら必ず必要となる手続で、例えば代表者の1人会社であっても実施する必要があります。それ以外の、例えば従業員を雇用した場合の手続などは、別記事でカバーします。

(1)税務署への届出

会社を設立したら、所轄税務署において、国税関係の各種届出を行います。下表1に、提出が任意のものも含め、提出書類を一覧にまとめましたので、ご参照ください。

表1の手続は、e-Tax(※1)、又は法人設立ワンストップサービス(※2)によっても可能です。これらのオンラインサービスでは、次の章で説明する地方税に係る手続も(eLTAX(※3)と連携して)カバーしている為、窓口による手続より効率的に手続することができます。これらのオンラインサービスを利用するには利用者登録とマイナンバーなどの電子証明書の取得が必要です。(詳しくは別記事「行政のオンライン手続について」をご参照ください。)

(※1)国税関係のオンラインサービス。

(※2)デジタル庁が運営する会社設立手続の総合オンライン窓口。

(※3)地方税共同機構が運営する地方税関係手続のオンラインサービス。

下表1のうち、「青色申告の承認申請書」の提出は任意ですが、会社は(そもそも複式簿記による計算書類の作成義務があり)追加負担なしに税メリットが受けられるため、殆どの会社が青色申告を選択しています(※4)。従って、下表1のうち、1. 2. 3. の書類はほぼ例外なく提出するもの、4. 5. 6. は必要に応じて提出するものになります。

(※4)国税庁の「令和3年度分 会社標本調査」によれば、99.2%の法人が青色申告を選択しています。

尚、消費税関係の届出に関しては、設立初年度から課税事業者となる場合や、初年度は本来免税事業者ながら任意で課税事業者となる場合など、ケースに応じて判断やそれに伴う必要手続も違ってきます。これについては、別記事「消費税の課税事業者となるかどうか、について」にまとめましたのでご参照ください。

【表1】税務署への提出書類

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提出書類提出期限備考
1.法人設立届出書設立登記の日以降2ヶ月以内定款の写しは必ず添付(状況により他にも添付書類あり)。
申請書様式、記載要領などは、国税庁「内国普通法人等の設立の届出」をご参照ください。 
2.青色申告の承認申請書設立の日以降3ヶ月を経過した日と当該事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日まで青色申告を選択する場合に提出。提出期限に遅れた場合、青色申告の開始が1年遅れることになる。
申請書様式、記載要領などは、国税庁「青色申告書の承認の申請」をご参照ください。
3.給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書事務所等の開設から1ヶ月以内経営者への給与支払も対象となるため、法人を設立すると原則届出が必要。
申告書様式、記載要領などは、国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」をご参照ください。
4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書定めなし提出は任意。源泉所得税は、原則毎月納付しなければならないが、従業員が常時10人未満の事業所は、この特例により年2回(1月20日と7月10日)にまとめて納付することができる。
申請書様式、記載要領などは、国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」をご参照ください。
5.棚卸資産の評価方法の届出書第1期事業年度終了後2ヶ月以内(確定申告書の提出期限まで)提出は任意。提出しない場合、最終仕入原価法が適用になる。
申請書様式、記載例などは、国税庁「棚卸資産の評価方法の届出」をご参照ください。
6.減価償却資産の償却方法の届出書第1期事業年度終了後2ヶ月以内(確定申告書の提出期限まで)提出は任意。提出しない場合、法定償却方法(※5)が適用になる。
申請書様式、記載例などは、国税庁「減価償却資産の償却方法の届出」をご参照ください。

(※5)建物、建物付属設備、構築物、生物、無形資産は定額法、それ以外は定率法(一部例外あり)。

(2)都道府県・市町村への届出

地方税に係る届出を都道府県税事務所及び市町村役場へ行います。具体的には、法人設立届出書(と添付書類)を提出しますが、地方税は国税と違って自治体ごとに、条例により取扱いに多少違いがあります。

・提出先は自治体によって違うので、事前にチェックが必要です。

例えば、東京23区は都税事務所のみへの提出で良く、大阪市は市税事務所と大阪府税事務所へ提出します。

・提出期限、添付書類等も地域によって違いがあります。

例えば、東京都の提出期限は設立の日から15日以内、大阪市は2ヶ月以内とされています。

・地域によって届出書の様式も異なります。

但し、基本的には税務署への(所得税関係の)法人設立届出書と同じ内容です(税務署に提出する法人設立届出書と複写で作成する場合もあります)。

・都道府県事務所へ提出する場合、会社の所在地によって担当の事務所が異なるので、必ず管轄を確認してください。

例えば、東京都千代田区、文京区は千代田都税事務所、東京都中央区、江東区、江戸川区は中央都税事務所、などになります。

従って、窓口での手続にあたっては必ず自治体のホームページなどで、対応窓口や手続について最新の情報を確認しておきましょう。多くの自治体では、ホームページで届出書等の様式をダウンロードできるようになっています。

オンライン手続によれば、こうした自治体ごとの違いを自分で調べることなく対応できます。地方税ポータルシステムの eLTAX による手続もできますが、前章で述べた通り e-Tax、又は法人設立ワンストップサービスを通じて、国税関係の手続から続けて各自治体への提出も行うことができるのでお勧めです。

(3)社会保険の加入手続

会社の場合は、経営者にも社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入義務がありますので、会社を設立したら社会保険の加入手続(届出)を行います。具体的には、下表2の事業所としての手続と、下表3の被保険者となる社員(経営者を含む)ごとの手続の2種類の手続を行います。(前者は事業所開設時、後者は社員の採用等の都度必要な手続になります。)いずれも届出期限が短いので注意が必要です。

因みに、社会保険は社長(代表)1人しかいない会社でも、その社長自身が被保険者として加入する必要があるため、会社設立時の手続としてここで説明していますが、一般に従業員を採用した場合の社会保険、労働保険(労災保険、雇用保険)の適用要件については別記事「労働保険・社会保険の適用」をご参照ください。

設立した法人の事業所が社会保険に加入する手続

【表2】事業所としての手続

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届出書類届出先届出期限
健康保険・厚生年金保険 新規適用届事業所を所轄する年金事務所事実発生日から5日以内

届出フォーマット、記入例、添付書類など手続の詳細は、日本年金機構「新規適用の手続き」をご参照ください。

被保険者(経営者を含む)の資格取得手続

【表3】被保険者となる社員ごとの手続

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届出書類届出先届出期限
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届事業所を所轄する年金事務所事実発生日から5日以内
健康保険 被扶養者(異動)届/国民年金 第3号被保険者関係届
(家族を被扶養者にするとき)
同上同上

届出フォーマット、記入例、添付書類など手続の詳細は、日本年金機構「被保険者・被扶養者関係(資格取得・喪失等)」(※6)をご参照ください。

(※6)被保険者関係は、「就職した時(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」を、被扶養者関係は、「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」をご覧ください。

これらの手続は、e-Gov (※7)によっても手続することができます。(法人設立ワンストップサービスでは、表2の手続のみカバーしており、表3の手続を行うことができません。)e-Gov を利用するには、GビズID(※8)やマイナンバーなどの電子証明書の利用が必要ですが、社会保険等の手続を広くカバーしており、会社設立以降の手続効率化のためにも、この際利用を考えても宜しいかと思います。(e-Gov や GビズIDに関しても、詳しくは別記事「行政のオンライン手続について」をご参照ください。)

(※7)デジタル庁が運営する社会保険関係等のオンラインオンラインサービス。

(※8)デジタル庁が所管する、法人、個人事業主向けのオンライン行政手続のための共通ID。

(4)銀行口座開設

会社設立後、預金口座の開設が必要ですが、昨今はマネーロンダリング規制の強化に伴い銀行のモニタリング義務が強化されており、法人名義の口座開設には、各銀行とも慎重になっています。従って、余計な混乱を避けるため、以下のような対応をお勧めします。

  • 法人設立以前から取引のある銀行など、日頃から付き合いのある銀行等を優先する。
  • 特に親しい銀行等がない場合、本店所在地近くの銀行等の支店にアプローチする。
  • (見栄を張って)メガバンクの本店など、関係のない銀行にアプローチすることは避ける。

口座開設にあたっては以下のような書類の提出が求められます。

  • 定款
  • 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
  • 代表者印の印鑑証明書
  • 代表者の本人確認書類

このほか、税務署宛の法人設立届出書(控)、取締役・業務執行社員等の本人確認書類、(株式会社の場合)公証人の発行する「実質的支配者に関する申告受理及び認証証明書」、(実際に銀行等との窓口となる)取引担当者の本人確認書類どを求められることがあります。

以上を踏まえても、口座開設の申し込み(資料提出)から実際に口座が開設されれるまで、2週間から1ヶ月ほどかかることもあるので、余裕を持ってアプローチすることをお勧めします。一般に、ネット専用銀行と呼ばれる銀行は、口座開設手続もオンライン中心で素早い対応に定評があり、最初の口座開設候補として検討しても宜しいかと思います。

口座開設が完了したら、代表者の預金口座にある出資金を会社の預金口座へ移しかえます。

 

以上