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障害に伴う労災保険給付

初回投稿日:2025年3月27日

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本記事では、労災保険のうち、障害に伴う保険給付についてカバーします。まず、労災による傷病の治ゆ後に障害が残ったときの障害(補償)等給付について述べ、続けて、その受給権者であって一定基準の者が介護を受ける場合に受給できる介護(補償)等給付について解説します。

細かく見れば、下表1の通り、障害(補償)等給付、介護(補償)等給付とも、それぞれが災害区分によって3つに分かれますが、給付の内容は給付対象ごとにほぼ同様なため、以下の説明では、障害(補償)等給付と介護(補償)等給付として解説します。

【表1】障害に伴う労災保険給付一覧

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給付対象災害区分左3つをまとめた呼称
業務災害複数業務要因災害通勤災害
障害が残った場合障害補償給付複数事業労働者障害給付障害給付障害(補償)等給付
さらに介護が必要な場合介護補償給付複数事業労働者介護給付介護給付介護(補償)等給付

障害(補償)等給付

(1)給付の種類及び額について

障害(補償)等給付は、労働者が業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害によって負傷又は疾病にかかり、治ゆ(※1)したときに障害等級に該当する障害が存する場合に、その障害等級に応じて、下表2の障害(補償)等年金又は一時金として支給されるものです。加えて社会復帰促進等事業(※2)により障害特別支給金(一時金)と障害特別年金(又は一時金)が上積みで下表2の通り支給されることになっています。

【表2】障害(補償)等給付及び特別支給金の種類及び給付額

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障害等級障害(補償)等年金又は一時金障害特別支給金
(一時金)
障害特別年金又は一時金
第1級年金1年につき、給付基礎日額の313日分342万円年金1年につき、算定基礎日額の313日分
第2級年金1年につき、給付基礎日額の277日分320万円年金1年につき、算定基礎日額の277日分
第3級年金1年につき、給付基礎日額の245日分300万円年金1年につき、算定基礎日額の245日分
第4級年金1年につき、給付基礎日額の213日分264万円年金1年につき、算定基礎日額の213日分
第5級年金1年につき、給付基礎日額の184日分225万円年金1年につき、算定基礎日額の184日分
第6級年金1年につき、給付基礎日額の156日分192万円年金1年につき、算定基礎日額の156日分
第7級年金1年につき、給付基礎日額の131日分159万円年金1年につき、算定基礎日額の131日分
第8級一時金給付基礎日額の503日分65万円一時金算定基礎日額の503日分
第9級一時金給付基礎日額の391日分50万円一時金算定基礎日額の391日分
第10級一時金給付基礎日額の302日分39万円一時金算定基礎日額の302日分
第11級一時金給付基礎日額の223日分29万円一時金算定基礎日額の223日分
第12級一時金給付基礎日額の156日分20万円一時金算定基礎日額の156日分
第13級一時金給付基礎日額の101日分14万円一時金算定基礎日額の101日分
第14級一時金給付基礎日額の56日分8万円一時金算定基礎日額の56日分

障害等級の詳細は、労災保険法施行規則別表第一をご参照ください。

給付基礎日額とは、労働基準法の平均賃金に相当する額であり、これに労災保険法の規定による調整等を行なった額となります。また、算定基礎日額は、労災による負傷又は発病の日以前1年間に当該労働者に対して支払われた特別給与(賞与など3ヶ月ごとに支払われる賃金)の総額を365で割った額のことをいいます(※3)

障害特別支給金については、傷病特別支給金(※4)を受給した労働者の場合、障害特別支給金の額が傷病特別支給金の額を超えるときに限り、その差額相当額が支給されます。

また、算定基礎日額を基準とする障害特別年金又は一時金については、過去1年間の特別給与(賞与など3ヶ月ごとに支払われる賃金)が基になるので、特別給与がない場合には支給されません。

そのほか、特殊ケースにつき以下に補足します。

(※1)労災保険における「治ゆ」とは、健康時の状態に回復した状態だけをいうのではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行なっても、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいいます。

(※2)労災保険法29条1項に「政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。」とあり、特別支給金はその第2号に規定される被災労働者等の援護事業として支給されています。

(※3)給付基礎日額及び算定基礎日額の詳細は、「従業員の労災事故」をご参照ください。

(※4)傷病特別支給金については、傷病に伴う労災保険給付をご参照ください。

同一の事故により複数の障害が生じた場合

同一の事故による身体障害が2以上ある場合は、原則、そのうち重い方を全体の障害等級とします。但し、以下の調整があります。

  • 同一の事故による第13級以上の身体障害が2以上あるときは、以下のように重い方の障害等級を繰り上げて全体の障害等級とします。
第13級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の障害等級を1級繰り上げる。
第8級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の障害等級を2級繰り上げる。
第5級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の障害等級を3級繰り上げる。
  • 但し、繰り上げ後の障害等級が第8級以下の場合であって、元の各障害等級に応じた給付額の合計額が繰り上げ後の障害等級による給付額を下回るときは、各障害等級に応じた給付額の合計額を支給額とします。(つまり、第9級と第13級の身体障害がある場合の給付金は、第8級の額ではなく、第9級と第13級の額の合計額になります。)

既にある障害が労災によって加重した(さらに重くなった)場合

既に身体障害のあった者(労災によるかどうかは問わず)が、業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害により、同一の部位について障害の程度を加重した場合、以下のような差額支給が行われます。

① 加重前後の身体障害の障害等級がともに第7級以上の場合

差額支給額=「加重後の障害等級に応じた年金、一時金の額」−「加重前の障害等級に応じた年金、一時金の額」

② 加重前後の身体障害の障害等級がともに第8級以下の場合

差額支給額=「加重後の障害等級に応じた一時金の額」−「加重前の障害等級に応じた一時金の額」

③ 加重前の身体障害の障害等級が第8級以下で、加重後の身体障害の障害等級が第7級以上の場合

年金の差額支給額=「加重後の障害等級に応じた年金の額」−「加重前の障害等級に応じた一時金の額の25分の1」
一時金の差額支給額=「加重後の障害等級に応じた一時金の額」−「加重前の障害等級に応じた一時金の額」

年金給付を受ける労働者の当該障害の程度に変更があった場合

障害(補償)等年金(及び障害特別年金)を受ける労働者の当該障害の程度に変更(悪化又は軽減)があったため、新たに他の障害等級に該当するに至った場合には、新たな障害等級に応した年金(又は一時金)が支給され、その後は、従前の年金は支給されません。ここでいう「変更」とは、障害の程度が自然的に悪化又は軽減した場合をいい、新たな傷病や傷病の再発(後述)による場合は除きます。また「変更」の対象となるのは、年金のみであり、一時金についてはその支給を受けた後に自然的に障害の程度が悪化又は軽減しても、何ら対処する必要はありません。

年金給付を受ける労働者の負傷又は疾病が再発した場合

障害(補償)等年金(及び障害特別年金)の受給権者の負傷又は疾病が再発した場合は、従前の年金給付は打ち切られます。ここでいう「再発」とは、労災による傷病が一旦治ゆした後、再び療養を必要とするに至った場合をいいます。再発による療養期間中は、療養(補償)等給付を受給できるほか、傷病(補償)等年金の要件を満たす場合はこれを受給することができます(※5)

また、再治ゆ後の身体障害については、その障害等級に応じた障害(補償)等給付及び特別支給金を受けることができます(※6)

(※5)傷病(補償)等年金の要件を満たさない場合でも、休業中であれば休業(補償)等給付の受給要件は満たすものと思われます。但し、(後述する)介護(補償)等給付を受けていた場合、休業(補償)等給付に切り替わるとその支給はなくなります。「療養(補償)等給付」、「傷病(補償)等年金」、「休業(補償)等給付」については、「傷病に伴う労災保険給付」をご参照ください。

(※6)一時金受給者の再発の場合は、再治ゆ後の身体障害の程度が従前より悪化したときのみ、新たに給付を受けることができます。その場合の受給額は、上述「既にある障害が労災によって加重した(さらに重くなった)場合」に準じた差額支給になります。

(2)併給調整

障害(補償)等給付は、賃金を得ている場合であってもその支給額の調整(減額)はありません。但し、障害(補償)等年金については、障害年金との併給調整があります。

障害(補償)等年金の障害年金との併給調整

障害(補償)等年金を受ける労働者が、同一の事由により厚生年金保険法の障害厚生年金又は国民年金法の障害基礎年金を受給する場合、障害(補償)等年金の額が以下の調整率を掛けた金額に減額されて支給されます。(障害厚生年金、障害基礎年金は全額支給されます。)

尚、併給調整の対象は障害(補償)等年金のみで、表2に掲げた一時金や障害特別年金は調整(減額)されません。

併給対象障害(補償)等年金の調整率
障害厚生年金0.83
障害基礎年金0.88
障害厚生年金及び障害基礎年金0.73

(3)請求手続

障害(補償)等給付を請求するときは、所定の事項を記載した支給請求書を事業場を所轄する労働基準監督署へ提出します。支給請求書は「業務災害用・複数業務要因災害用」と「通勤災害用」に分かれています。尚、障害特別支給金(一時金)と障害特別年金(又は一時金)の支給申請も、同じ支給請求書によって同時に行うことができます。

障害(補償)等給付の支給請求書様式

業務災害用・複数業務要因災害用様式第10号
通勤災害用様式第16号の7
  • 支給請求書には、事業主の証明欄、及び添付として医師(診療担当者)の診断書があり、事前にそれぞれ取得する必要があります。

支給請求書の書式、記入方法など詳細は厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。

(4)支給期間

一時金は一度きりですが、年金としての給付は支給要件に該当することになった月の翌月分から、支給要件を満たす状態が継続している間、当該労働者に対して支給されます。年金の支給は毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれその前月分までが支払われます。

(5)障害(補償)等年金前払一時金について

上述「(4)支給期間」で述べた通り、年金としての給付は一定の支払期日ごとに行われるのが原則ですが、障害の残った労働者が社会復帰するためには一時的にまとまった資金が必要な場合も想定されます。そうした状況に対応できるように、障害(補償)等年金については、1回に限り、一定の範囲内の年金額を一括して前払いする制度が設けられており、これを障害(補償)等年金前払一時金(※7)といいます。

  • 障害(補償)等年金前払一時金として前倒しで受給できる額は、障害等級に応じて下表3に示す額から受給権者が選択する額となります。
  • 障害(補償)等年金前払一時金を請求する場合は、原則として、障害(補償)等年金の請求と同時に「年金前払一時金請求書(年金申請様式第10号)」を事業場を所轄する労働基準監督署へ提出します(※8)
  • 請求書の書式、記入方法など詳細は厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。
  • 前払一時金が支給された場合、障害(補償)等年金については、各支給月に本来支給されるべき額の合計額が前払一時金の額に相当する額に達するまでの間、その支給が停止となります。

【表3】障害(補償)等年金前払一時金の支給額(赤字は最高限度額)

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障害等級
第1級給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分、1,200日分、又は1,340日分
第2級給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分、又は1,190日分
第3級給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分、又は1,050日分
第4級給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、又は920日分
第5級給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、又は790日分
第6級給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、又は670日分
第7級給付基礎日額の200日分、400日分、又は560日分

尚、前払いの対象となるのは障害(補償)等年金のみであり、障害特別年金には前払い制度はありません。

(※7)労災保険法では、労災区分に応じて「障害補償年金前払一時金」、「複数事業労働者障害年金前払一時金」、「障害年金前払一時金」と分けて呼んでいますが、これらをまとめて一般に「障害(補償)等年金前払一時金」と呼びます。

(※8)但し、当該傷病の治った日の翌日から2年以内、且つ年金の支給決定のあった日の翌日から1年以内であれば、障害(補償)等年金を受けた後でも前払一時金を請求することができます。その場合には、各障害等級に応じた最高限度額から、既に支給された年金の額を減じた額を上限として請求ができます。いずれにしても請求できるのは1回のみです。

(6)障害(補償)等年金差額一時金等について

障害(補償)等年金を受ける権利を有する者が死亡した場合、その者に支給された年金の額(及び前払一時金を受けた場合はその額)の合計額が、その者の障害等級に応じた障害(補償)等年金前払一時金の最高限度額に満たないときは、その者の遺族に対し、その差額に相当する障害(補償)等年金差額一時金が支給されます。また、同様の仕組みは障害特別年金にもあり、障害特別年金差額一時金といいます。

  • 年金差額一時金の額は、下表4の障害等級ごとの額から、既に支給された年金額(前払一時金のある場合はその額も含め)の合計額を控除した額になります。

【表4】年金差額一時金の基準額

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障害等級障害(補償)等年金差額一時金障害特別年金差額一時金
第1級給付基礎日額の1,340日分算定基礎日額の1,340日分
第2級給付基礎日額の1,190日分算定基礎日額の1,190日分
第3級給付基礎日額の1,050日分算定基礎日額の1,050日分
第4級給付基礎日額の920日分算定基礎日額の920日分
第5級給付基礎日額の790日分算定基礎日額の790日分
第6級給付基礎日額の670日分算定基礎日額の670日分
第7級給付基礎日額の560日分算定基礎日額の560日分
  • 年金差額一時金の支給を受けることができる遺族は、次の①又は②の者で、支給を受けるべき順序は、①、②の順序、さらに①、②の中では記載の順序となります。また、最先順位者が複数いる場合はそのすべての者が受給権者となり、1人当たりの支給額はその人数で除した額となります。
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労働者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた配偶者(※9)、子、父母、孫、祖父母及び兄妹姉妹
上記①に該当しない配偶者(※9)、子、父母、孫、祖父母及び兄妹姉妹

(※9)婚姻の届出をしていない事実婚関係の者を含みます。

介護(補償)等給付

(1)支給要件

介護(補償)等給付は、障害(補償)等年金又は傷病(補償)等年金(※10)の受給権者であって、障害等級・傷病等級が第1級の者すべて及び第2級の精神神経障害又は胸腹部臓器障害を有している者(※11)が、当該障害により常時又は随時介護を要する状態にあり、現に介護を受けている間(但し、次の①〜③に掲げる間を除く)に支給されるものです。

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障害者総合支援法(※12)に規定する障害者支援施設に入所している間(生活介護を受けている場合に限る)
①の障害者支援施設(生活介護を行うものに限る)に準ずる施設として厚生労働大臣が定めるもの(※13)に入所している間
病院又は診療所に入院している間

(※10)傷病(補償)等年金については、「傷病に伴う労災保険給付」をご参照。

(※11)詳細は、労災保険法施行規則別表第三(及び別表第三が参照する別表第一、第二の各項目)をご参照ください。

(※12)正式名称は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」です。

(※13)より具体的には、労災保険法施行規則18条の3の3に以下3つが挙げられています。①特別養護老人ホーム、②原子爆弾被爆者特別養護ホーム、③親族又はこれに準ずる者による介護を必要としない施設であって当該施設において提供される介護に要した費用に相当する金額を支出する必要のない施設として厚生労働大臣が定めるもの。

(2)支給額

介護(補償)等給付の支給額は、常時介護と随時介護の別、及び親族等による介護を受けた日の有無により、月単位で以下の通り支給されます。

常時介護の場合
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① 親族又は友人、知人の介護を受けた日がない介護費用の実費(但し、上限177,950円)
② 親族又は友人、知人の介護を受けた日がある介護費用の支出がない一律81,290円
介護費用が81,290円以下一律81,290円
介護費用が81,290円以上介護費用の実費(但し、上限177,950円)
随時介護の場合
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① 親族又は友人、知人の介護を受けた日がない介護費用の実費(但し、上限88,980円)
② 親族又は友人、知人の介護を受けた日がある介護費用の支出がない一律40,600円
介護費用が40,600円以下一律40,600円
介護費用が40,600円以上介護費用の実費(但し、上限88,980円)

但し、介護を始めた最初の月は、介護費用を払って介護を受けたときは上限額の範囲で実費支給となり、介護費用を払わずに親族等で介護を行なったときは介護開始の月の支給はありません。また、上に示した上限額等の金額は、随時見直すこととなっており、上に示した金額は令和6年4月1日改定額です。

(3)請求手続

介護(補償)等給付を請求する場合は、「給付支給請求書(様式第16号の2の2)」を事業場を所轄する労働基準監督署へ提出します。

  • 初回の給付支給請求書には、障害の状態等につき医師等の診断書を添付する必要があります(※14)。また、介護費用を支出した場合は給付支給請求書提出の都度「介護に要した費用の額の証明書」を添付する必要があります。
  • 介護(補償)等給付の請求は、1ヶ月ごとに行うのが一般的ですが、3ヶ月分をまとめて行うことも可能です。
  • 給付支給請求書の書式、記入方法など詳細は厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。

(※14)傷病(補償)等年金の受給者及び精神神経障害又は胸腹部臓器障害を有し常時又は随時介護を要する者は診断書の添付は不要です。

以上