初回出稿日:2025年6月12日
本記事では、18歳未満の年少者を使用する場合の注意点について解説します。概要としては、以下の通りです。
① | 年少者でも中学卒業後の年齢であれば労働者として使用可能。但し、一定の保護規制の対象となる。 |
② | それ以下の年齢の年少者(中学生以下)は原則使用禁止。但し、例外業務であって許可を受ければ使用することができる。尚、13歳未満の年少者については、例外業務は「映画の制作又は演劇の事業」に限られる。 |
以下、①、②について順に詳しく解説します。
中学卒業後の年齢にある年少者に対する保護規制
労働基準法では「使用者は、児童が満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。」と規定(※1)されていますが、逆に言えばそれ以上の年齢(つまり中学卒業後の年齢)であれば、使用すること自体は問題ありません。但し、使用にあたっては以下の規制を遵守する必要があります。
(※1)労働基準法56条1項。因みに、満15歳に達した日とは、15歳の誕生日の前日を指します。従って、4月1日生まれの人は15歳の誕生日から働くことができます。
証明書の備え付け
満18歳に満たない年少者を使用する場合、使用者はその年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければなりません(※2)。
(※2)労働基準法57条1項。戸籍証明書は、氏名と生年月日が記載された戸籍抄本や住民票記載事項証明書でも良いとされます。
労働時間の制限
- 原則
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満18歳に満たない年少者については、労働基準法に規定する以下の特例を適用でません(後述の例外を除く)。また、深夜業の時間帯(午後10時から午前5時まで(※3))においては18歳未満の年少者を使用してはなりません(後述の例外を除く)。
36協定による時間外および休日労働(※4) 特例措置対象事業場における労働時間の特例(※5) 変形労働時間制(※6) 高度プロフェッショナル制度(※6) 一定の事業について休憩のルールが適用されない特例(※7) (※3)厚生労働大臣が必要と認める場合は、地域又は期間を限って、午後11時から午前6時までとすることができる、とされています。
(※4)36協定を締結した事業場であっても、18歳未満の年少者は時間外労働、休日労働をさせてはいけません。
(※5)特例措置対象事業場とは、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業等の事業場であり、1日8時間、1週44時間の労働が許されています。但し、特例措置対象事業場であっても18歳未満の年少者は、原則通り1日8時間、1週40時間までとなります。
(※6)制度の解説は「労働時間のルール」をご参照。18歳未満の年少者には、これらの制度を適用できません。
(※7)長距離乗務員等や郵便局員であっても、18歳未満の年少者には休憩を与えなければならない、など。
- 例外
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- 年少者の労働時間の特例
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- 1週間の労働時間が40時間を超えない範囲において、1日の労働時間を4時間以内にして他の日の労働時間を10時間まで延長することができます
- 例えば、通常1日8時間勤務のところ、月曜日は休日、火曜日と水曜日は通常勤務、木曜日と金曜日は10時間勤務としても、1週間の合計労働時間は36時間となり、問題はない。
- 1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲において、1ヶ月単位の変形労働時間制、又は1年単位の変形労働時間制の規定に倣って労働させることができます
- 例えば、1ヶ月のうち1週間は48時間労働、その他の週は36時間労働として、1ヶ月平均では1週間あたりの労働時間が40時間以下であれば問題ない。
- 1週間の労働時間が40時間を超えない範囲において、1日の労働時間を4時間以内にして他の日の労働時間を10時間まで延長することができます
- 年少者の時間外・休日労働の例外
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次の場合には、年少者に時間外・休日労働をさせることができます。
- 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合
- 年少者が法41条該当者(※8)である場合
(※8)解説は「労働時間のルール」をご参照
- 年少者の深夜業の例外
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次の場合には、年少者に深夜労働をさせることができます。
- 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合の時間外・休日労働が深夜に及んだ場合
- 農林業、水産・養蚕・畜産業、保健衛生業又は電話交換の業務に使用される年少者の場合
- 交代制によって使用する満16歳以上の男性である場合
- 交代制によって労働させる事業であり、且つ、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、午後10時30分まで(深夜業の時間帯が午後11時から午前6時までとされている場合((※3)ご参照)にあっては、午前5時30分から)労働させる場合
中学卒業前の年齢にある年少者の例外的な使用
先に述べた通り、労働基準法では「使用者は、児童が満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。」と規定しており、中学卒業前の年齢にある年少者の使用は原則禁止されています。但し、以下のように例外も設けられています。
- 満13歳以上の児童については、非工業的業種の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、労働が軽易な者については、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、修学時間外に使用することができる
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- 非工業的業種とは、労働基準法別表第一の1号から5号にある製造業、鉱業、土木・建築業、運送業、貨物取扱業など以外の業種を指します。尚、満13歳に満たない児童については、映画の制作又は演劇の事業についてのみ、同様に使用することができます。
- 中学卒業前の年齢にある年少者を使用する場合、使用者はその年齢を証明する戸籍証明書に加え、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書、及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければなりません
- 労働時間については以下の制限が課されます
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- 1週間の労働時間は、休憩時間を除く修学時間を通算して、40時間を超えてはならない
- 1週間の各日の労働時間は、休憩時間を除く修学時間を通算して、7時間を超えてはならない
- 午後8時から午前5時までの間において使用してはならない(深夜業の制限)
最後の深夜業の制限については、「厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、児童の深夜業の時間帯を地域又は期間を限って、午後9時から午前6時までとすることができる。」とされており、演劇事業に使用される児童についてはこの時間帯が適用されています。
以上