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労働保険の加入手続

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一元適用事業(労働保険の) 二元適用事業(労働保険の)

人を雇用し始めたら、労働保険・社会保険の適用の有無について確認し、必要な手続を行わなければなりません。労働保険・社会保険が適用されるかどうかの判断基準については、別記事「労働保険・社会保険の適用基準」で説明しましたが、本記事では、そのうち労働保険(労災保険、雇用保険)が適用となる場合の加入手続について解説します。

尚、労働保険は、一般に、適用要件を満たせば(事業主の意思に関わらず)当然に加入するものなので、「労働保険に加入する」とは言わず、「労働保険関係が成立する」というのが正式ですが、本記事では単純に「加入手続」と表現しています。

一元適用事業と二元適用事業

労働保険とは、労災保険と雇用保険のことを言いますが、その適用や徴収関係の事務手続は、業種によって労災保険と雇用保険を一元的に扱う一元適用事業と、それぞれ別個に扱う二元適用事業に分かれます。ここでは、ご自身の事業がどちらに該当するのかを判断し、次章以下では該当する方の手続をご参照ください。

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一元適用事業労災保険と雇用保険の適用・徴収事務(※1)を一緒に(一元的に)行う事業
具体的には? → 以下の「二元適用事業」以外の事業
二元適用事業事業の実態からして労災保険と雇用保険の適用の仕方が異なるため、労災保険と雇用保険の適用・徴収事務(※1)を別個に(二元的に)行う事業。
具体的には? → 以下の事業
指定港湾(※2)で港湾運送を行う事業
農林、畜産、養蚕又は水産の事業(船員が雇用される事業を除く)
建設業

(※1)本記事では、労働保険の新規適用時の手続のみをカバーし、保険料の徴収など経常的な手続は別記事にてカバーします。

(※2)東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門の6港湾。詳細は、港湾労働法施行令の別表をご参照下さい。

一元適用事業者の労働保険の加入手続

対象となる労働者の雇用後速やかに、必要書類の提出、保険料の支払い等を下表1の通り行います。

【表1】一元適用事業者の加入手続

提出するもの提出先提出期限
①保険関係成立届所轄の労働基準監督署雇用の翌日から10日以内
②適用事業報告同上雇用後遅滞なく
③概算保険料申告書、納付書(概算で納付する)同上(※3)雇用の翌日から50日以内
④雇用保険適用事業所設置届所轄の公共職業安定所雇用の翌日から10日以内
⑤雇用保険被保険者資格取得届同上雇用の翌月10日まで

(※3)所轄の都道府県労働局または金融機関(日銀本支店、代理店、歳入代理店(銀行、信用金庫の本支店、郵便局))でも可。

以下、表1について補足します。

  • まず①を行なった後、③、④、⑤の手続を行います。手続はそれぞれの窓口のほか、e-Gov又は法人設立ワンストップサービスによる電子申請も可能です(※4)
  • ②は労働基準法に基づき、事業を開始した後遅滞なく提出するものですが、実際は労働保険の適用時に提出することが多いようです。②の様式は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー:労働基準法等関係主要様式」で入手することもできます。
  • 所轄の労働基準監督署、公共職業安定所は、厚生労働省「都道府県労働局所在地一覧」から確認できます。各手続に必要な添付書類なども事前に確認しておくと良いでしょう。
  • ③に関して補足すると、労働保険料は1年分を毎年一定期間内に概算で一括払いし、翌年同時期に確定額で精算するという手続を取ります(労働保険料の「年度更新」といいます)。従って、初めて労働保険に加入する場合は、まず加入時に概算で申告、納付することになります(※5)
  • ⑤は従業員採用時に、その従業員毎に行う手続です。従って、事業者として労働保険に加入する時だけでなく、該当する従業員の採用毎に行う手続になります(※6)
  • 雇用保険が適用外となる場合、④、⑤の手続は不要です。その場合でも労災保険は適用されるので、①、②、③の手続は必要です(※7)

(※4)電子申請に関しては、別記事「行政のオンライン手続について」もご参考下さい。

(※5)労働保険料の年度更新など、経常的な事務手続は別記事にてカバーします。

(※6)(ご参考)別記事「雇用保険、社会保険の資格取得手続」では、⑤に特化して解説しています。

(※7)雇用保険の適用除外等については、別記事「労働保険・社会保険の適用基準」をご参照下さい。

二元適用事業者の労働保険の加入手続

対象となる労働者の雇用後速やかに、必要書類の提出、保険料の支払い等を下表2、3の通り行います。

【表2】二元適用事業者の労災保険の加入手続

提出するもの提出先提出期限
①保険関係成立届所轄の労働基準監督署雇用の翌日から10日以内
②適用事業報告同上雇用後遅滞なく
③概算保険料申告書、納付書(概算で納付する)同上(※8)雇用の翌日から50日以内

(※8)所轄の都道府県労働局または金融機関(日銀本支店、代理店、歳入代理店(銀行、信用金庫の本支店、郵便局))でも可。

【表3】二元適用事業者の雇用保険の加入手続

提出するもの提出先提出期限
①保険関係成立届所轄の公共職業安定所雇用の翌日から10日以内
②概算保険料申告書、納付書(概算で納付する)所轄の都道府県労働局(※9)雇用の翌日から50日以内
③雇用保険適用事業所設置届所轄の公共職業安定所雇用の翌日から10日以内
④雇用保険被保険者資格取得届同上雇用の翌月10日まで

(※9)金融機関(日銀本支店、代理店、歳入代理店(銀行、信用金庫の本支店、郵便局))でも可。

以下、表2、3について補足します。

  • 労災保険はまず①を行なった後③の手続を行い、雇用保険はまず①を行った後②、③、④の手続を行います。手続はそれぞれの窓口のほか、e-Gov又は法人設立ワンストップサービスによる電子申請も可能です(※10)
  • 労災保険の②の手続は、労働基準法に基づき、事業を開始した後遅滞なく提出するものですが、実際は労働保険の適用時に提出することが多いようです。②の様式は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー:労働基準法等関係主要様式」で入手することもできます。
  • 所轄の労働基準監督署、公共職業安定所、都道府県労働局は、厚生労働省「都道府県労働局所在地一覧」から確認できます。各手続に必要な添付書類なども事前に確認しておくと良いでしょう。
  • 労災保険の③、及び雇用保険の②の手続に関して補足すると、労働保険料は1年分を毎年一定期間内に概算で一括払いし、翌年同時期に確定額で精算するという手続を取ります(労働保険料の「年度更新」といいます)。従って、初めて労働保険に加入する場合は、まず加入時に概算で申告、納付することになります(※11)
  • 雇用保険の④は従業員採用時に、その従業員毎に行う手続です。従って、事業者として雇用保険に加入する時だけでなく、該当する従業員の採用毎に行う手続になります(※12)
  • 雇用保険が適用外となる場合、表3の雇用保険の手続は不要です。その場合でも労災保険は適用されるので、表2の手続は必要です(※13)

(※10)電子申請に関しては、別記事「行政のオンライン手続について」もご参考下さい。

(※11)労働保険料の年度更新など、経常的な事務手続は別記事にてカバーします。

(※12)(ご参考)別記事「雇用保険、社会保険の資格取得手続」では、④に特化して解説しています。

(※13)雇用保険の適用除外等については、別記事「労働保険・社会保険の適用基準」をご参照下さい。

以上