MENU

労働保険・社会保険の基礎知識

初回出稿日:2024年2月5日

この記事のキーワード

社会保険 労働保険 健康保険 介護保険 厚生年金保険 労災保険 雇用保険

事業者にとって、労働保険と社会保険は必須の知識です。本記事では、それぞれの実務的な解説に入る前の予備知識として、全般的、基礎的な事柄をカバーします。

本記事の予備知識を前提とし、事業者として各保険への加入が必要になる基準、さらに従業員等がそれぞれに加入すべき基準、加入手続等については別記事で解説していきます。

日本では、国民の生活保障を目的に社会保険制度を採用しており、全体像は下図1のような構成になっています。この全体の制度が広い意味で社会保険と呼ばれています。

一方、労働者が加入する健康保険、介護保険、厚生年金保険をまとめて社会保険と呼ぶこともあり、こちらは狭義の社会保険となります。また、労働者に関する保険には、狭義の社会保険以外に労災保険と雇用保険があり、これらを労働保険と呼んでいます。事業者が労働者を雇用する場合に特に考慮すべきなのは、この狭義の社会保険と労働保険になります(図1の赤い部分)。

【図1】日本の社会保険制度

これら各保険の概要については、下表1をご覧ください。

表1の被保険者に関しては、正確に言うと細かい適用基準があり(別記事「労働保険の適用基準」「社会保険の適用基準」で解説します)ここでの説明はあくまで概要です。

【表1】労働者保険の概要

スクロールできます
労働者保険保険者(※1)被保険者概要
健康保険全国健康保険協会
又は
健康保険組合(※2)
事業者に雇用される者労働者(及びその被扶養者)の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡、出産に関して保険給付を行う
(業務災害は労災保険にてカバー)
介護保険市町村及び特別区(東京23区)(※3)保険者の区域内に居住する65歳以上の者(「第1号被保険者」)
保険者の区域内に居住する40歳以上65歳未満の公的医療保険加入者(「第2号被保険者」)
要介護認定又は要支援認定を受けた被保険者に対して保険給付を行う
厚生年金保険政府(※4)事業者に雇用される者労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行う
労災保険政府(※5)事業者に雇用される者(※6)労働者の、業務上又は通勤に伴う事由による負傷、疾病などに関して保険給付を行う
雇用保険政府(※7)事業者に雇用される者労働者が失業した場合などに、生活支援や求職支援などを目的に保険給付を行う

(※1)保険事業の運営主体として保険給付等を行うものをいいます。

(※2)健康保険組合は、一般に大企業が単独で設立するものと、複数の事業者が(業種毎などで)共同して設立するものがあります。一方、全国健康保険協会は、健康保険組合の組合員でない被保険者の保険を管掌しています。後者は「協会けんぽ」の通称で知られており、小規模事業、中小企業の従業員の多くが加入しており、当サイトの対象である事業者も、まずはほぼ協会けんぽに加入することになります。尚、労働者以外が加入する国民健康保険などを含めた公的医療保険制度の全体像については、別記事「公的医療保険の種類」をご参照ください。

(※3)保険者は市町村及び特別区ですが、費用負担を含め国、都道府県及び公的医療保険者が重層的に支える仕組みで運営されています。

(※4)公務員や私立学校教職員以外の被保険者(いわゆる会社員などの「第1号厚生年金被保険者」)の厚生年金保険は、厚生労働省が実施機関として責任を負っています。但し、その事務のほとんどは日本年金機構が厚生労働省から委任を受けて行っています。厚生年金保険は、民間事業者や公務員などの被用者が加入する年金制度ですが、全国民が加入する国民年金も含めた公的年金制度の全体像については、別記事「公的年金制度の種類」をご参照ください。

(※5)厚生労働省労働基準局で労災保険制度全体の管理運営を行うほか、地方出先機関として、保険の適用、保険料の徴収事務などを行う都道府県労働局、保険給付の事務を行う労働基準監督署が置かれています。

(※6)労災保険では、保険の対象者を被保険者ではなく適用労働者と呼びます。

(※7)厚生労働省職業安定局が雇用保険全体の管理運営を行うほか、地方出先機関として、保険料の徴収事務などを行う都道府県労働局、保険の適用、保険給付の事務を行う公共職業安定所があります。

以上