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マイナンバーとマイナンバーカード、及びマイナンバーの取扱いについて

初回出稿日:2024年5月26日

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マイナンバー 個人番号 マイナンバーカード 特定個人情報

本記事では、まず、マイナンバーについての基本事項を押さえ、次に、混乱しがちなマイナンバーカードとの違いを整理し、最後に、事業者が従業員等のマイナンバーを取得する必要がある場合とその管理等に関する注意事項について解説します。

マイナンバーカードは、利用する個人の立場からするとより広い利用方法があり、政府も普及促進のためあの手この手のプロモーションを行っていますが、それとマイナンバー自体ははっきりと区別して理解しておく必要があります。ここでは事業者として最低限知っておかなければならない事柄について解説します。

マイナンバーとは

マイナンバーとは、所謂マイナンバー法(※1)に規定された個人番号の通称で、住民票を持つ全ての個人に付与される個人固有の12桁の数字です。

マイナンバーは、行政機関や民間事業者が税、社会保障及び災害対策などの目的に限って利用できる制度としてスタートしました(※2)(※3)。マイナンバーの導入によって、行政としては税、社会保障分野の情報共有により、行政効率化やよりきめ細かな社会保障制度の設計、迅速な災害時対策などが可能になり、また個人としては、例えば所得証明書などの添付書類が不要になるなど利便性向上が期待できるわけですが、事業者としては、こうした法律で認められた税や社会保険の手続に限って従業員(及びその扶養家族)や個人事業の取引先のマイナンバーを取得する必要がある一方、それ以外の目的では、マイナンバーを取得することも利用することもできません。

マイナンバーは、2015年10月以降、市町村から「通知カード」により全対象者へ通知され、2016年1月から利用が開始されています。

(※1)正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(2013年5月成立)です。この法律では個人番号に加えて法人番号についても規定しており、マイナンバーに法人番号も含める考え方もあります。但し、法人番号は公開情報であり取扱いに特段の注意も必要ないことから、本記事では個人番号を前提に解説します。

(※2)マイナンバー法施行当初は、マイナンバーの利用目的は税、社会保障及び災害対策に限定されていましたが、その後、他の行政手続などに利用目的が拡大(例:国家資格等の取得・更新等の手続、自動車登録手続)されています。いずれにしても利用目的の範囲は法令に基づく必要があり、目的外利用は禁止されています。

(※3)マイナンバーの利用目的が制限されている理由は、マイナンバーと紐付く個人情報の種類を制限し、マイナンバーによってあらゆる個人情報が検索できるような事態を避けるためとされています。その為その管理方法も規定されています(後述)。

マイナンバーカードとは

マイナンバーがマイナンバー法に定められた目的に利用が限定され、それ以外の利用が禁止されているのに対し、マイナンバーカードはより広い目的で利用されるものです。ここではその違いについて説明します。

マイナンバーカードとは、裏面にマイナンバーが記載された、顔写真、ICチップ付きの公的な身分証明書です。前述の通知カード(※4)やマイナンバーが記載された住民票の写しなどが、単にマイナンバーを個人の基本4情報(氏名、生年月日、性別、住所)に紐付けて証明するものなのに対し、マイナンバーカードはそれに加えて対面での身分証明(そのための顔写真)やオンラインでの本人確認のための電子証明書、電子申請などに電子署名を付与する機能(ICチップ)があり、より広い利用に用いられます。マイナンバーカードは、希望する人に(通知カードを持っている場合はそれと交換で)交付されますが、利用場面がより広く、行政の効率向上などに資する為、政府をあげてマイナンバーカードの普及をプロモーションしていることはご承知の通りです。

マイナンバーとマイナンバーカードの利用場面の違いを具体的に説明します。

まず、マイナンバーの利用は、前述の通り、税、社会保障、災害対策など法的に許された目的に限定されます。例えば、事業者が従業員を採用する際、税や社会保険手続のためにマイナンバーを取得する必要がありますが、その場合、従業員はマイナンバーカードまたは通知カード等を提示することによって事業者にマイナンバーを告知します(※5)。このような場面で、民間事業者や役所がマイナンバーを取得する際には、取得したマイナンバーが間違いなく本人のものであるかを確認する本人確認義務が課されていますが、マイナンバーカードであれば告知と本人確認が1枚(裏面のマイナンバーと表面の本人確認情報)で済むのに対し、通知カード等では別途、運転免許証などの本人確認書類が必要になります。

次に、マイナンバーカードは、以上のマイナンバーの告知のための利用以外に、コンビニでの住民票(写)などの取得や、クレジットカードの契約、書留郵便の受取りなど、様々な場面での利用が可能(今後も利用範囲は拡大する見込み)となっています。このようなマイナンバー法の目的外の利用においては、通知カード等が用を為さないのはもちろん、マイナンバーカードの利用においても裏面のマイナンバーの取得、利用は禁止されています。

(※4)通知カードは、令和2年5月25日以降は新規発行や再交付は行われていませんが、氏名、住所等に変更ない場合は、引き続きマイナンバーを証明する書類として使用することができます。

(※5)通知カード(氏名、住所等の変更ない場合)の他、マイナンバーが記載された住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書でもマイナンバーの告知が可能です。

事業者によるマイナンバーの利用について

ここで、事業者が従業員等からマイナンバーを取得、利用する場合、及びその注意点についてまとめておきます。

利用目的

一般の民間事業者が従業員(及びその扶養家族)や個人の取引先のマイナンバーを取得、利用できるのは、現時点では税及び社会保障の手続において記入が求められる場合に限られています(※6)

【表1】マイナンバーの取得が必要となる主な場面

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社会保障関係従業員に関して健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険等の各種手続において書類に記入が求められる場合
税関係従業員に関して給与等に関する「給与所得の源泉徴収票」、個人事業の取引先に関して外交員報酬・弁護士報酬・講演料等の報酬に関する「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」等の法定調書に記入が求められる場合

(※6)金融機関が法律で認められた目的で利用する場合(例:相続対策などで預金者が口座とマイナンバーの紐付けを申請する場合)は除く。

取得時の手続

従業員等からマイナンバーを取得する際には、その利用目的を通知し、本人確認を行う必要があります。利用目的の通知は個別に行う以外に、社内広報や就業規則での明示や自社ホームページ等での公表なども許されています。

マイナンバーの管理に関するルール

取得したマイナンバーは、その目的に沿って必要な限り継続的に利用できますが、その保管方法及び不要となった場合(従業員の退職等)の破棄などについては注意が必要です。

マイナンバーを含む個人情報をマイナンバー法では「特定個人情報」と定義し、その「漏えい、滅失又は毀損の防止その他の特定個人情報等の管理のために、必要かつ適切な措置を講じなければならない」と規定しています(マイナンバー法12条)。具体的な管理方法に関しては、個人情報保護委員会(※7)がガイドライン(※8)を公表しており、例えば、従業員が100人以下の中小規模事業者であっても、以下のような安全管理措置の指針が示されています。

【表2】特定個人情報の安全管理措置(中小規模事業者の対応方法)

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項目中小規模事業者の対応方法
取扱規定等の策定特定個人情報等の取扱い等を明確化する
事務取扱担当者が変更となった場合、確実な引継ぎを行い、責任ある立場の者が確認する
組織的安全管理措置事務取扱担当者が複数いる場合、責任者と事務取扱担当者を区分することが望ましい
特定個人情報等の取扱い状況の分かる記録を保存する。
漏えい等事案の発生等に備え、従業者から責任ある立場の者に対する報告連絡体制等をあらかじめ確認しておく。
責任ある立場の者が、特定個人情報等の取扱状況について、定期的に点検を行う。
物理的安全管理措置特定個人情報等が記録された電子媒体又は書類等を持ち運ぶ場合、パスワードの設定、封筒に封入し鞄に入れて搬送する等、紛失・盗難等を防ぐための安全な方策を講ずる。
対象者のマイナンバーを必要とする事務を行わなくなり、所管法令等で定められている保管期間等を経過した場合は、マイナンバーをできるだけ速やかに削除又は廃棄する。この場合、特定個人情報等を削除・廃棄したことを責任ある立場の者が確認する。
技術的安全管理措置特定個人情報等を取り扱う機器を特定し、その機器を取り扱う事務取扱担当者を限定することが望ましい。
機器に標準装備されているユーザー制御機能(ユーザーアカウント制御)により、情報システムを取り扱う事務取扱担当者を限定することが望ましい。

(※7)個人情報保護法に基づき設置された内閣総理大臣の所轄に属する機関。独立的、専門的な立場から個人情報及び特定個人情報の適切な取扱いの確保を図るため、行政機関、民間等に対し指導、助言、その他の措置を講ずることを任務としています。

(※8)「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」。 表2は、このガイドラインの「(別添1)特定個人情報に関する安全管理措置(事業者編)」の中から中小規模事業者(従業員の数が100人以下の事業者)向けの特例的な対応方法を抜粋したものです。

最後に、下図1は、参考までに個人情報と特定個人情報の関係を図示したものです。特定個人情報はその管理面でより厳しい基準が求められています。

【図1】個人情報と特定個人情報の関係

以上