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報酬、料金等に係る源泉徴収義務

初回出稿日:2024年11月6日

事業者が、従業員へ給与等を支払う場合に所得税の源泉徴収義務があるように、従業員以外であっても特定の報酬、料金等を支払う場合には、所得税の源泉徴収義務があるので失念しないよう注意が必要です。

まず、源泉徴収義務のある事業者(支払者)は、給与所得の源泉徴収義務のある個人事業主、及び法人です(※1)

そして、源泉徴収が必要な報酬、料金等の概要は下表1の通りで、基本的に受領者が個人の場合に注意が必要です(※2)

【表1】源泉徴収が必要な報酬、料金等

受領者が個人の場合(※3)
原稿料や講演料などの報酬・料金(※4)
弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格をもつ人などに支払う報酬・料金
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
プロ野球選手、プロサッカー選手、プロテニス選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
映画、演劇その他芸能(音楽、舞踏、漫才等)、テレビ放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
受領者が法人の場合
馬主である法人に支払う競馬の賞金

(※1)個人事業主の場合は、従業員を雇っていない場合や、常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに報酬を支払っている場合は、原則、源泉徴収義務はありません。例外は、表1の⑥に該当する報酬等です。これについては従業員のいない個人であっても源泉徴収する義務があります(個人経営のバーでホステスを使用する場合など)。給与等(青色事業専従者給与(「個人事業の青色申告」ご参照)を含む)の支払がある個人は、たとえその給与等について納付すべき税額がない場合であっても、表内①〜⑧の報酬等を支払う場合、所得税の源泉徴収義務があります。一方、法人の場合は、従業員がいなくても代表者本人の報酬に対して源泉徴収義務があるので、全て該当します。

(※2)受領者が法人の場合は、馬主への賞金という限られたケースであり、注意が必要なのは個人に対する報酬、料金の支払だと言えます。

(※3)所得税法204条1項1号〜8号の概要です。詳細は、国税庁「源泉徴収のあらまし」「第5 報酬・料金等の源泉徴収事務」が参考になります。例えば、行政書士への報酬は(行政書士は同法同条2号の対象ではないので)一般に源泉徴収の対象外ですが、業務が建築代理士の業務に該当する場合は源泉徴収の対象となります。(「第5 報酬・料金等の源泉徴収事務」によれば、「建築代理士(建築代理士以外の人で、建築に関する申請や届出の書類を作成し、又はこれらの手続の代理をすることを業とする人を含みます。)の業務に関する報酬・料金」は源泉徴収の対象。)

(※4)この報酬・料金のうち、次のいずれかに該当し、同一人に対して1回に支払う金額が少額(おおむね5万円以下)のものについては、源泉徴収しなくても良い(所得税基本通達204-10)。(1)懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等、(2)新聞、雑誌等の読者投稿欄への投稿者又はニュース写真等の提供者に支払う謝金等(あらかじめその投稿又は提供を委託した人にその対価として支払うものを除く)、(3)ラジオやテレビジョン放送の視聴者番組への投稿者又はニュース写真等の提供者に支払う謝金等(あらかじめその投稿又は提供を委託した人にその対価として支払うものを除く)

源泉徴収する所得税額(及び復興特別所得税額)は、報酬・料金等の種類ごとに規定されています。例えば、表1の①原稿料や講演料などの場合は、以下の計算によります。計算結果に1円未満の端数がある場合は切捨てます(その他の報酬・料金等の計算においても同様です)。

計算式
支払金額(=A)税額
100万円以下A × 10.21%
100万円超(A − 100万円)× 20.42% +102,100円
計算例

原稿料として150万円を支払う場合

  • 所得税・復興特別所得税額 = (150万円 − 100万円)×20.42% + 102,100円 = 204,200円
  • 結果、150万円から、204,200円を控除した1,295,800円を相手先へ支払います

その他の報酬・料金等の源泉徴収税額の計算は、国税庁「源泉徴収のあらまし」「第5 報酬・料金等の源泉徴収事務」をご参照ください。

報酬・料金等の金額の中に消費税及び地方消費税が含まれている場合、消費税及び地方消費税を含めた金額が源泉徴収の対象となります。但し、報酬・料金等の受領者からの請求書等において報酬・料金等の額と消費税及び地方消費税の額とが明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象として差し支えありません(※5)

例えば、税理士(個人)からの請求書に、税理士報酬121,000円とだけ記載されていた場合には、源泉徴収税額は121,000円の10.21%相当額である12,354円(1円未満切捨て)となりますが、同請求書に、税理士報酬110,000円、消費税等11,000円と記載されていれば源泉徴収税額は110,000円の10.21%相当額である11,231円となります。

(※5)令和5年10月に所謂インボイス制度が導入されましたが、ここでいう報酬・料金等の受領者からの「請求書等」は、必ずしも適格請求書(インボイス)である必要はなく、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されていれば良いとされます。(国税庁「インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収」ご参照。)

尚、源泉徴収した所得税の納付手続については「所得税の納付手続」をご参照ください。

以上