最新更新日:2026年10月14日
電子帳簿保存法
令和4年1月1日の改正電子帳簿保存法(※1)の施行以来、所得税、法人税、その他の国税(※2)に関する帳簿書類の保存方法が紙から電子データへとシフトしてきています。本記事では、電子帳簿保存法に基づく帳簿書類の扱いについて解説します(※3)。
(※1)正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。
(※2)電子帳簿保存法は国税が対象ですが、地方税法においても準じた規定(748条等)があり、保存義務のある帳簿等については地方税も同様の扱いになります。
(※3)電子帳簿保存法の全体像については国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」などが参考になります。
対象となる書類の種類
影響を受ける帳簿書類は下表1の3種類です。
【表1】電子帳簿保存法の対象となる書類
| 書類の種類 | 電子保存 (義務/任意) | 書類の概要 |
|---|---|---|
| 1. 電子取引書類 | 義務 | 電子取引を行った場合に授受した取引情報 ・注文書、送り状、請求書、領収書などの電子データ |
| 2. 電子帳簿書類 | 任意 | 自己がコンピュータを使用して作成した帳簿書類 ・ 仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳などの帳簿 ・ 損益計算書、貸借対照表などの決算関係書類 ・ 見積書、請求書、納品書、領収書など取引相手に交付した書類の控え |
| 3. スキャナ保存書類 | 任意 | 紙で受領した取引書類又は自己が作成した取引書類の控え ・契約書、見積書、注文書、納品書、検収書、請求書、領収書など |
以下、順に解説します。
1. 電子取引書類
表1の3種類の書類うち、電子データ(※4)での保存が義務となるのは「1. 電子取引書類」だけです.。
電子取引とは、企業間EDI、インターネット取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)など、取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引を言います(取引情報を受け取る場合だけでなく、送る場合の取引も該当します)。
また、この場合の取引情報とは、取引に関して受領し又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項を言います。
電子取引により取引情報を授受した場合、令和5年12月31日までは、その情報を印刷して紙で保存することができましたが、令和6年1月1日以降は、原則、電磁的記録での保存が義務となっています。
具体的な記録、保存の媒体としては、PCのハードディスク、USBメモリ、クラウドストレージ(サービス)等から適宜選択することができます。(以下の「2. 電子帳簿書類」「3. スキャナ保存書類」においても同様。)
電磁的記録の記録、保存にあたっては、下表2の要件を満たす必要があります。
【表2】電磁的記録の要件(電子取引の場合)
| (1) | 電磁的記録の記録事項について訂正・削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができること。 | |
| (2) | 以下の要件を満たす電磁的記録の記録事項の検索ができるようにしておくこと。 | |
| (イ) | 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(以下(ロ)及び(ハ)において「記録項目」という)を検索の条件として設定することができること。 | |
| (ロ) | 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。 | |
| (ハ) | 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。 | |
但し、表2の(2)の検索要件に関しては、以下の緩和措置が設けられています。
- 電磁的記録について税務調査等の際に調査担当者のダウンロードの求めに応じることができる場合には、(ロ)及び(ハ)の要件は必要としない。
- 更に、保存義務者の基準期間(※5)の売上高が5千万円以下の場合は、(2)の検索要件は必要ない。
表2の(1)(改ざん防止措置)、(2)(検索要件)の具体例や一定の場合の猶予措置など、電子取引書類の扱いについては、国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート」が参考になります。
(※4)以下、電子帳簿取引法の用語に従い「電磁的記録」と言います。
(※5)基準期間とは、個人事業主の場合は対象とする年の前々年(1月から12月の暦月ベース)、法人の場合は対象とする事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が1年未満の場合は、対象とする事業年度の開始の日の2年前の日の前日から同日以降1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間を言います。基準期間の詳しい解説は別記事「消費税の課税事業者となるかどうか、について」をご参照ください。
2. 電子帳簿書類
表1の「2. 電子帳簿書類」とは、電子計算機(PC等)を使用して自己(※6)が作成した帳簿、損益計算書や貸借対照表などの決算関係書類、請求書や領収書など取引相手に交付した書類などを言います。例えば、会計ソフトで作成した帳簿や決算関係書類、Word や Excel 等で作成した見積書や請求書など、電子契約システムで作成した契約書などが該当します。
これらの電磁的記録による保存は任意であり、PC等で作成した帳簿書類であってもプリントアウトして紙で保存することも可能です。但し、帳簿に関しては下表3の「優良な電子帳簿」の要件を満たす電磁的記録として保存することにより、過少申告加算税の軽減措置や、個人事業主の青色申告特別控除(65万円)の適用といったメリットの対象となります(※7)。
【表3】電磁的記録の要件(優良な電子帳簿の場合)
| (1) | 電磁的記録の記録事項について訂正・削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができること。 | |
| (2) | 以下の要件を満たす電磁的記録の記録事項の検索ができるようにしておくこと。 | |
| (イ) | 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(以下(ロ)及び(ハ)において「記録項目」という)を検索の条件として設定することができること。 | |
| (ロ) | 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。 | |
| (ハ) | 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。 | |
但し、表3の(2)の検索要件については、電磁的記録について税務調査等の際に調査担当者のダウンロードの求めに応じることができる場合には、(ロ)及び(ハ)の要件は必要としないことになっています。
「優良な電子帳簿」についての詳細は、国税庁「優良な電子帳簿の要件」などをご参照ください。また、市販の会計ソフトで優良な電子帳簿の要件を満たすものとして国税庁「JIIMA認証情報リスト」が参考になります。
(※6)会計事務所や記帳代行業者などに委託している場合も該当します。
(※7)65万円の青色申告特別控除を受けるためには、「優良な電子帳簿による保存」のほか、確定申告を e-Tax で行う方法もあります。詳しくは別記事「個人事業の青色申告」をご参照。
3. スキャナ保存書類
表1の「3. スキャナ保存書類」とは、取引先から受け取った取引書類又は自己が作成し取引先へ交付した取引書類の写しをスキャナ(※8)によって電磁的記録として保存したものを言います。
取引書類の電磁的記録による保存は任意であり、紙のまま保存することも可能です。
対象となる取引書類は、「重要書類」と「一般書類」に区分され、この区分により電磁的記録の要件(カラー保存など)に違いがあります(※9)。
【表4】電子帳簿保存法におKる「重要書類」と「一般書類」(※10)
| 重要書類 | 契約書、納品書、請求書、領収書など資金や物の流れに直結する書類 |
| 一般書類 | 見積書、注文書、検修書など重要書類以外の書類 |
更に、スキャナ保存による電磁的記録は下表5の要件を満たす必要があります(※9)。
【表5】電磁的記録の要件(スキャナ保存の場合)
| (1) | 電磁的記録の記録事項について訂正・削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができること。 | |
| (2) | 取引書類の記録事項とそれに関連する帳簿の記録事項との間で、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと(※11)。 | |
| (3) | 以下の要件を満たす電磁的記録の記録事項の検索ができるようにしておくこと。 | |
| (イ) | 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(以下(ロ)及び(ハ)において「記録項目」という)を検索の条件として設定することができること。 | |
| (ロ) | 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。 | |
| (ハ) | 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。 | |
但し、表5の(3)の検索要件については、電磁的記録について税務調査等の際に調査担当者のダウンロードの求めに応じることができる場合には、(ロ)及び(ハ)の要件は必要としないことになっています。
(※8)後述の通り、解像度や階調など一定の要件があります。要件を満たす限りデジカメやスマートフォンなども利用可能です。
(※9)スキャナ保存の要件について詳しくは、国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」内の国税庁「スキャナ保存関係」をご参照ください。
(※10)重要書類、一般書類の定義は平成17年1月31日国税庁告示第4号(その後改定あり)によります。詳しくは、国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」内の国税庁「法令」ご参照。
(※11)帳簿との関連性が義務付けられている取引書類は、令和6年1月1日以降は重要書類のみです。(令和5年12月31日以前は一般書類も含めて義務付けられています。)
以上
