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行政のオンライン手続について

初回出稿日:2023年7月10日

最新更新日:2024年5月28日

この記事のキーワード

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法人設立ワンストップサービス

e-Gov  e-Tax  eLTAX  GビズID(gBizID)

この記事の内容

本記事では、以下のような疑問を解決します。

  • オンラインでできる行政手続ってどんなものがあるの?
  • 個人事業主、会社、それぞれに適したオンライン手続は?
  • オンライン手続を利用するには、何が必要なの?
  • オンライン手続って本当に便利なの? 実際に使えるサービスは?

結論から言うと、便利にはなりつつあるものの、何でもオンラインで効率的に行えるわけではない、という状況です。これは、オンラインで対応できる手続は増えている一方で、中には素人が使うには実用的でないものがあることも理由の一つです。本記事では、オンライン行政サービスの現状を概観した上で、現時点でお勧めする利用方法について解説します。

また本記事の内容は、最新の状況に応じてアップデートしていく予定です(※1)。また、オンラインで行うことが困難な手続については、従来通りの窓口等の手続について本サイトのメインのコンテンツとして別記事でカバーしていく予定です。

(※1)現時点では2023年7月の状況をベースにしています。

本記事の章立ては以下の通りです。①〜③がメインの内容で、④以降は必要や関心に応じてご覧ください。

① 行政オンライン化の現状について
② 行政オンライン利用のための認証方法について
③ お勧めのオンライン手続について(結論:個人事業主、会社別)
④ 個人事業主向けお勧めオンライン手続(詳細説明)
⑤ 会社向けお勧めオンライン手続(詳細説明)
⑥ GビズIDについて(補足説明)
⑦ 電子認証局について(補足説明)

① 行政オンライン化の現状について

下表1は、オンラインで手続が可能な主な行政サービスを、そのサービス開始順に並べたものです。

【表1】主なオンライン行政サービス

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サービス名(現在の)運営機関 主な手続サービス開始
e-Gov電子申請システムデジタル庁社会保険関係の手続、その他2001年
国税電子申告・納税システム(e-Tax)国税庁国税関係の手続2004年
地方税ポータルシステム(eLTAX)地方税共同機構地方税関係の手続2005年
特許庁インターネット出願特許庁特許庁関係の手続2005年10月
登記・供託オンライン申請システム法務省法務局関係の手続2011年2月
法人設立ワンストップサービスデジタル庁会社設立手続の総合窓口2020年1月
jGrantsデジタル庁各種補助金の申請2020年1月
食品衛生申請等システム厚生労働省飲食店や食料品製造業などの認可、届出2021年6月
金融庁電子申請・届出システム金融庁金融庁関係の手続2021年6月
建設業許可・経営事項審査電子申請システム国土交通省建設業関係の手続2023年1月

ネットを通じてできる行政サービスが増えてきただけでなく、内容の拡充、サービス間の連携(例:法人設立ワンストップサービス)、システム間のバックヤード連携による添付書類の削減なども進行中で、オンライン利用のメリットは徐々に拡大しています。

また、表1には含まれてませんが、地方自治体レベルでも行政のオンライン化が進んでいます。デジタル庁では重点取組課題として「事業者向け行政サービスの利便性向上」を掲げており、国、自治体ともに、オンラインサービスの拡大と利便性の向上は、今後も進んでいくと期待されます。

さて、このように便利そうなオンライン手続ですが、なんとなく複雑でとっつきにくいイメージもあるのではないでしょうか。私が思うに、”とっつきにくいイメージ”の原因の一つに認証手続があると考えますが、次にその認証手続について見てみましょう。

② 行政オンライン利用のための認証方法について

以下の表2は、先ほどのオンラインサービスについて、その認証方法をまとめたものです。オンラインサービスを利用するための認証には、一般に、サービスを開始する際のログイン時の認証と、手続を実行する際に必要となる申請時の認証の2つがあります。

まず、ログイン時には、GビズID、またはサービス独自のID等による認証が必要になります。GビズID とは、各種の行政オンラインサービスを利用するのための、デジタル庁が所管する共通IDです。(詳しくは、後述「⑥ GビズIDについて(補足説明)」しますので、今はわからなくとも気にせず読み続けてください。)

また、申請時には、ログイン時と同じIDか、電子証明書による認証が必要になります。電子証明書とは、第三者機関である電子認証局が提供するID証明です。(これも後述「⑦ 電子認証局について(補足説明)」で説明します。)

【表2】主なオンラインサービスの認証方法

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サービス名認証方法(ログイン時)認証方法(申請時)
GビズID独自ID等(※2)ログイン時のID電子証明書
e-Gov電子申請システム(※3)(※3)
国税電子申告・納税システム(e-Tax)
地方税ポータルシステム(eLTAX)
特許庁インターネット出願
登記・供託オンライン申請システム(※3)
法人設立ワンストップサービスマイナンバーカードのみマイナンバーカードのみ
jGrants
食品衛生申請等システム
金融庁電子申請・届出システム
建設業許可・経営事項審査電子申請システム

(※2)独自の利用者IDや、Microsoftアカウント等、外部ベンダーが提供する共通IDが使える場合などがあります。

(※3)手続によって、ログイン時のIDで申請(請求)できるものと、電子証明書が必要なものがあります。

表2にある通り、サービスによってログイン時にGビズIDが使えるものと使えないものがあり、また、手続申請時には(ログインID以外に)電子証明書が必要なものがあるという状況です。先ほど述べた、オンライン手続の”とっつきにくいイメージ”は、さまざまなサービスが独立して存在することに加え、各サービスの認証方法がいろいろあることも原因の一つではないでしょうか。(例えば、事業者に関しては少なくともログイン時は GビズID、個人は全てマイナンバーカードで手続ができれば解りやすくなるのですが。)

この認証方法の複雑さに関し、デジタル庁は「(GビズIDの)利用できる手続は、各省庁および地方自治体の各種手続に順次拡大中です。」と述べており、事業者に関しては、今後、GビズIDへの統一化が進むものと期待されます。事実、GビズIDが登場した2020年4月以降の手続は、GビズIDの利用が基本となっており、また、それ以前からある e-Gov電子申請システムでも 2020年11月から GビズIDが使えるようになっています。

では、事業者にとって、GビズIDだけあれば十分でしょうか。

まず現状は、そうではありません。表2を見てわかる通り、現状では e-Tax など、GビズIDでは利用できない(ログインできない)主要なサービスがあるため、GビズID だけで全てカバーすることはできません。

将来的にはどうでしょうか。デジタル庁が推進する GビズID の利用が広がれば、それだけで全てのオンライン手続がカバーできるようになるでしょうか。それも残念ながら、難しいと思われます。何故なら、GビズID には電子署名の機能がなく、改ざん防止策にならないため、その部分で電子証明書に頼らざるを得ないからです。(電子署名については後述「⑦ 電子認証局について(補足説明)」ご参照。) e-Gov電子申請システムに GビズID が取り入れられた後も、主要な手続に電子証明書の利用が残っている状況を見ても、改ざん防止策としての電子証明書の利用は不可欠だと思われます。

結論として、事業者が行政オンラインサービスを利用するためには、少なくとも現在及び近い将来は、以下の3つの認証を用意する必要があります。

【表3】事業者に必要なオンラインサービスの認証

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GビズIDデジタル庁が所管するオンライン手続共通ID。 詳細は「⑥ GビズIDについて(補足説明)」ご参照。
電子証明書第三者機関である電子認証局が提供するID証明。詳細は「⑦ 電子認証局について(補足説明)」ご参照。
独自IDGビズID に対応していないオンライン行政サービスを利用する場合、当該サービスの独自ID。

③ お勧めのオンライン手続について(結論:個人事業主、会社別)

さて、ここまで行政オンラインサービスに必要な認証方法について述べてきましたが、この章では、事業者の立場から、手続の頻度と利用のし易さ(認証方法も含め)を考慮し、筆者がお勧めするサービスについて説明します。

お勧めのオンラインサービスは、個人事業主か会社によって異なりますので、順にカバーします。

個人事業主にお勧めのオンラインサービス

個人事業主にお勧めのオンラインサービスは、従業員がいる場合と、いない場合に分かれます。

まず、従業員がいない場合、e-Tax の利用をお勧めします。この場合、認証方法としてはマイナンバーカードだけあれば十分です。また、マイナンバーカードを読み込むICカードリーダの代わりに、無料でダウンロードできるマイナポータルアプリを使えばスマホでの読み込みも可能で、その場合、全て無料で(ICカードリーダも購入せずに)国税関係の手続が可能となります。また、個人事業主の場合、青色申告を選択して所得税の確定申告を e-Tax で行うと、65万円の青色申告特別控除が受けられる税メリットもあります。(青色申告のメリットについては、別記事「個人事業の青色申告」をご参照ください。)

従業員がいる場合は、e-Tax に加えて、従業員の社会保険関係等の手続をカバーするため、e-Gov の利用をお勧めします。e-Gov の利用には、マイナンバーカードに加えて GビズID の取得が必要です(費用は無料、詳しくは後述「⑥ GビズIDについて(補足説明)」)。また、e-Gov にはマイナンバーカード読み込み用のICカードリーダが必要になります(購入すれば、2、3千円程度)。

【表4】個人事業主にお勧めの行政オンラインサービス

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サービス 認証方法 お勧めの利用方法
従業員がいない場合e-Taxマイナンバーカードマイナンバーカードにより、e-Taxを利用して、国税関係の手続をオンラインで行う
(マイナンバーカード用の)ICカードリーダの代わりに、無料のスマホアプリの利用も可能
従業員がいる場合同上同上同上
e-GovGビズID及び
マイナンバーカード
従業員の社会保険関係の手続をオンラインで行うためe-Govを利用
e-Gov利用には、マイナンバーカードに加えてGビズIDの取得が必要
(マイナンバーカード用の)ICカードリーダ(2, 3千円程度)が必要

会社にお勧めのオンラインサービス

会社の場合にお勧めのオンラインサービスは、会社の設立時の手続と、その後の経常的な手続に分けて説明します。

会社の設立時には、「法人設立ワンストップサービス」の利用がお勧めです。これは、法務局での法人設立登記申請から、その後の税務署、都道府県税事務所、市町村役場への税務関係の手続、年金事務所への社会保険手続、労働基準監督署や公共職業安定所への手続まで、法人設立に係る手続を一箇所でカバーする総合窓口的なサービスです。(これを使わなければ、それぞれの窓口にいくか、それぞれ別のシステムにアクセスしなければなりません。)

認証方法としては代表者個人のマイナンバーカードを使います。また、設立した会社の GビズID や電子証明書(商業登記電子証明書)の発行申請も本サービスを通じて行うことができるので、設立後の経常手続のオンラインサービスの利用に活用することができます。

注意が必要なのは、会社設立の最初の段階である定款作成から法務局への法人設立登記申請までの手続です。ここは、定款や登記事項の作成、株式会社の場合は定款の認証手続など、素人がいきなりオンラインで手続を行うには、内容的、手続的、さらにはシステムの取り扱いの面でかなり難しいプロセスになります。従って、自力で行う場合には、無理にオンラインで手続するのは避け、書面での対応をお勧めします(※4)

(※4)書面による会社設立手続については、別記事「株式会社の設立手続」「合同会社の設立手続」をご参照ください。

会社設立後の経常的手続にお勧めのオンラインサービスは、国税関係の e-Tax、 地方税関係の eLTAX、法務局関係の「登記・供託オンライン申請システム」及び社会保険、労働関係の e-Gov の4つです。それぞれの概要は下表の通りですが、ここでも1点注意があります。

e-Tax、eLTAX では、法人税や地方税の申告、各種の申請や報告が可能ですが、注意が必要なのは、e-Tax、eLTAX の利用は、法人税等の申告手続を除く各種申請や報告に利用すべき、という点です。会社が払う税金には、法人税、法人事業税、法人住民税などがありますが、これらは納税者である会社が計算、申告して納税する義務があります。そのためには、決算から税務申告までを一連の作業として行う必要がありますが、中でも申告書の作成は非常に複雑で、オンライン手続で直接作成することは素人には不可能と言って良いと思います。(プロの税理士でさえ、専用ソフトを利用していることがほとんどです。) 会社設立後まもない間は、事業内容も比較的単純ですし、税理士費用などのコストも抑えるため、自力で法人税等の申告も行いたい方もおられるでしょう。(そもそも本サイトはそのような事業者のためのノウハウ共有を目指しています。)その場合には、仮決算の段階で事前に税務署へアポをとって相談に行くか、税務申告ソフトを利用するなどの方法をお勧めします。結果、e-Tax、eLTAX の利用は、従業員の源泉徴収所得税や特別徴収住民税の納付、法定調書や給与支払報告書などの提出など、法人税等の申告手続以外で利用するのが良いでしょう。(尚、法人税等の申告手続については、別記事「法人税等の申告手続について」をご参照ください。)

【表5】会社にお勧めの行政オンラインサービス

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サービス 認証方法 お勧めの利用方法
会社設立時の手続法人設立ワンストップサービス代表者のマイナンバーカード代表者のマイナンバーカードにより、法人設立ワンストップサービスを利用して会社設立時の税金、社会保険、GビズID発行、電子証明書発行などの手続をオンラインで行う
但し、設立登記手続はオンラインではなく、窓口などのアナログ対応を基本とする
設立後の経常的手続e-Tax独自ID及び電子証明書(※5)国税関係の手続(源泉所得税の納付、法定調書の提出など、税務申告以外)を行う
但し、税務申告(法人税及び課税事業者の場合は消費税も)手続は、e-Taxを直接利用するのではなく、税務署窓口で相談するか申告ソフトを使うなどの方法による
eLTAX独自ID及び電子証明書(※5)地方税関係の手続(特別徴収住民税の納付、給与支払報告書の提出など、税務申告以外)を行う
但し、税務申告(法人住民税、法人事業税)手続は、法人税の申告手続に従う(一般に、法人税と一連の手続で対応するものです)
登記・供託オンライン申請システム同上各種登記申請、証明書の交付請求を行う(※6)
e-GovGビズID及び電子証明書(※7)社会保険、労働保険、労働基準法関係の手続を行う

(※5)会社の独自ID及び電子証明書に代えて、会社の代表者またはその委任する者のマイナンバーカードでも可

(※6)利用するサービスによって、事前要件に違いがあります。詳しくは、別記事「商業登記関係のオンラインサービス」をご参照ください。

(※7)会社の電子証明書に代えて、会社の代表者またはその委任する者のマイナンバーカードでも可

お勧めオンラインサービスへのアクセスリスト

最後に、ここでお勧めしたオンラインサービスへのアクセスリンクをまとめておきます。

法人設立ワンストップサービス
国税電子申告・納税システム(e-Tax)
地方税ポータルシステム(eLTAX)
登記・供託オンライン申請システム
e-Gov電子申請システム

④ 個人事業主向けお勧めオンライン手続(詳細説明)

下表6は、個人事業主を対象とするオンライン行政サービスをまとめたものです(※8)

(※8)特定業種の行政手続(例:飲食店等の許可、届出手続)は除き、個人事業一般に関係する手続についてカバーしています。

【表6】個人事業主向けの主な行政オンラインサービス

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      サービス名      利用できる主な手続認証方法
(ログイン時)
認証方法
(申請時)
国税電子申告・納税システム
(e-Tax)
開業届
青色申告承認申請、青色事業専従者給与関係
確定申告、その他所得税関係手続
給与支払事務所等の開設等届
源泉所得税の納付、その他源泉所得税関係手続
法定調書の提出
消費税関係手続
マイナンバーカード
又は
利用者識別番号
マイナンバーカード
地方税ポータルシステム(eLTAX)従業員の特別徴収住民税の納付、採用時の手続
給与支払報告書、源泉徴収票の一括提出
償却資産の申告
(独自の)利用者IDマイナンバーカード
e-Gov電子申請システム健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
健康保険被扶養者(異動)届
社会保険の算定基礎届、報酬月額変更届等
労働保険の保険関係成立届
労働保険の概算保険料申告、年度更新手続等
労働基準法の適用事業報告
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険被保険者資格取得届
就業規則(変更)届、労使協定の提出
GビズIDマイナンバーカード
登記・供託オンライン申請システム商号の登記(独自の)申請者IDマイナンバーカード

まず、e-Taxは、マイナンバーカードさえあれば利用でき、開業時の手続から、所得税などに係る経常的な手続までカバーできており(※9)、可能な限り利用がお勧めです。ICカードリーダに代えてスマホ(マイナポータルアプリ)で認証ができるのも便利(ICカードリーダを購入する必要がない)です。

(※9)但し、開業届など一部の手続には Web版 e-Tax ではなく、e-Taxソフトのインストールが必要ですが、OSは Windows にしか対応していません。(Mac OS では利用できません。2024年11月現在。)

次に、e-Govは、従業員を採用する場合には、関連する社会保険等の手続を広くカバーしており、利用がお勧めです。マイナンバーカード認証用のICカードリーダが必要で、さらに別途 GビズIDを取得(無料)する必要があります。

eLTAX については、従業員の特別徴収住民税に係る手続が中心となるため、従業員の人数にもよりますが、通常は郵送等で対応するところをオンラインで済ませたい場合には、利用しても良いと思います。

最後に、登記・供託オンライン申請システムは、個人事業主の場合、利用機会が限られており(※9)、利用するメリットはあまりないでしょう。

(※9)商号の登記くらいですが、個人事業主の場合、商号(屋号)の登記は任意です。

⑤ 会社向けお勧めオンライン手続(詳細説明)

下表7は、会社に関連するオンライン行政サービス一般についてまとめたものです。(※10)

(※10)特定業種の行政手続(例:飲食店等の許可、届出手続)は除き、事業一般に関係する手続についてカバーしています。

【表7】会社向けの主な行政オンラインサービス

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      サービス名      利用できる主な手続認証方法
(ログイン時)
認証方法
(申請時)
法人設立ワンストップサービス法人設立時の手続をワンストップでカバー
登記、国税・地方税、社会保険、GビズID発行、商業登記電子証明書発行など
代表者の
マイナンバーカード
代表者の
マイナンバーカード
国税電子申告・納税システム
(e-Tax)
法人設立届出
青色申告承認申請
法人税の申告、その他法人税関係手続
給与支払事務所等の開設等届
源泉所得税の納付、その他源泉所得税関係手続
法定調書の提出
消費税関係手続
マイナンバーカード(※11)
又は
利用者識別番号
マイナンバーカード(※11)
又は
電子証明書(※12)
地方税ポータルシステム(eLTAX)法人設立届
法人住民税、法人事業税の申告、納付
従業員の特別徴収住民税の納付、採用時の手続
給与支払報告書、源泉徴収票の一括提出
償却資産の申告
(独自の)利用者ID同上
e-Gov電子申請システム健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
健康保険被扶養者(異動)届
社会保険の算定基礎届、報酬月額変更届等
労働保険の保険関係成立届
労働保険の概算保険料申告、年度更新手続等
労働基準法の適用事業報告
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険被保険者資格取得届
就業規則(変更)届、労使協定の提出
GビズID同上
登記・供託オンライン申請システム(※13)商業・法人登記の申請
登記事項証明書、印鑑証明書の交付請求
不動産登記関係手続
(独自の)申請者ID同上

(※11)会社の代表者、又はその委任する者のマイナンバーカード委任する場合の手続は各行政オンラインのガイドをご覧ください。

(※12)商業登記電子証明書又はその他の電子証明書。行政サービスによって利用できる電子証明書に違いがあるので、詳細は各オンラインサービスのガイドをご覧ください。

(※13)利用するサービスによって、事前要件に違いがあります。詳しくは、別記事「商業登記関係のオンラインサービス」をご参照ください。

会社形態の場合、個人事業者に比べて必要な手続が増えますので、オンラインで対応できる手続はできるだけ利用したいところです。但し、中には(司法書士や税理士のような)プロでないと扱いにくい手続もあり、一般の事業者としては、以下のような対応をお勧めします。

会社設立時には、代表者のマイナンバーカードで「法人設立ワンストップサービス」を利用

法人設立ワンストップサービスは、法務局への法人設立登記申請から、その後の税務署、都道府県税事務所、市町村役場への税務関係の手続、年金事務所への社会保険手続、労働基準監督署や公共職業安定所への手続まで、法人設立に係る手続を一箇所でカバーできるサービスです。(これを使わなければ、それぞれ別の役所窓口にいくか、それぞれ別のオンラインシステムを使わなければなりません。)

但し、これらの手続のうち、会社設立の最初の段階である定款作成から法務局への法人設立登記申請までは、オンラインでなく、窓口、書面での手続を基本とすることをお勧めします(株式会社の場合は、定款の認証手続も含め)。理由は、この段階のオンライン手続は、利用要件やシステムの利用に慣れるのにややハードルが高く、また、必要書類の作成にも注意が必要で、窓口で相談しながらアナログで進める方がスムーズだと思われるからです(※14)。なお、この設立登記申請手続までを、freee や マネーフォワードといったクラウド業者が廉価でカバーしており、こうしたサービスを利用することも選択肢となるでしょう。

法人設立登記が完了した段階で、以降の手続を法人設立ワンストップサービスで行うのは良いと思います。

(※14)書面による会社設立手続については、別記事「株式会社の設立手続」「合同会社の設立手続」をご参照ください。

会社設立後は、経常的な手続を各オンラインサービスの利用でカバー

国税関係は e-Tax、地方税関係は eLTAX、社会保険、労働関係の手続は e-Gov、法務局関係は「登記・供託オンライン申請システム」を利用すると便利です。但し、以下の注意が必要です。

  • 法人税、法人住民税、法人事業税、(課税事業者の場合は消費税も)の申告は、e-Tax、eLTAX を直接利用するのではなく、窓口での手続か、法人税申告ソフトを利用して行うべきです。理由は、これら法人税等の税務申告は、決算から申告に至るまで一定の知識と経験が必要で、特に、申告書の作成はハードルが高く専門外の事業者が e-Tax を直接利用して作成するのは不可能なためです。(申告ソフトの中には、そこで作成したファイルを e-Tax へ取り込んで提出するものがあり、このような間接的な e-Tax 利用は結構です。)
  • 従って、e-Tax、eLTAXの利用は、税務申告以外の手続(従業員の源泉徴収所得税や特別徴収住民税の納付、法定調書や給与支払報告書などの提出など)に利用します。
  • 登記・供託オンライン申請システムには、様々なサービスレベルがあり、利用するサービスのレベルによって事前要件に違いがあります。利用に当たっては、自身の満たせる事前要件に応じて、利用するサービスを選択するのが良いでしょう。(詳しくは、別記事「商業登記関係のオンラインサービス」をご参照ください。)

⑥ GビズIDについて(補足説明)

GビズID(”gBizID”と表記されることもあります)とは、デジタル庁が所管する、法人、個人事業主向けのオンライン行政手続のための共通認証システムです。かつては、オンラインサービスごとにID・パスワードの登録が必要でしたが、徐々に GビズID で利用できる行政手続が増えてきました。

GビズIDには、以下の3種類があります。

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gBizIDプライム会社代表又は個人事業主用のアカウント。申請書と印鑑証明書を提出し、審査を経て取得できる。
gBizIDメンバーgBizIDプライムを有する事業者の従業員用のアカウント。審査は不要だが利用制限あり。
gBizIDエントリー事業を行っている者であれば誰でも取得できるアカウント。審査は不要だが利用制限あり。

GビズID を取得する場合、まずは、gBizIDプライムを取得し、必要あればその後 gBizIDメンバーも作成する順番になります。費用はいずれもかかりません。

GビズIDの取得は、デジタル庁:gBizID から手続できます。

⑦ 電子認証局について(補足説明)

インターネット上でやり取りする情報の質を保証するためには、①本人確認(なりすまし防止)と、②改ざん防止が必要です。そのためには、それぞれ①電子証明書と、②電子署名というテクニックを利用しますが、それを管理するのが、電子認証局です。

電子認証局には、第三者機関として公的に認証を行うパブリック認証局と、社内など特定組織内で認証を行うプライベート認証局があり、パブリック認証局には現在以下のようなものがあります。

【表8】主なパブリック認証局

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認証局 電子認証サービス名 対象者
地方公共団体情報システム機構公的個人認証サービス
(マイナンバーカード用電子証明書)
個人
法務省商業登記認証局商業登記電子証明書法人


日本電子認証株式会社(日本電気系)
AOSign サービス法人、個人事業主
法人認証カードサービス(※15)法人
株式会社トインクス(東北電力系)TOiNX電子証明書法人、個人事業主
株式会社帝国データバンクTDB電子認証サービスTypeA法人、個人事業主
セコムトラストシステムズ株式会社セコムパスポートfor G-ID法人、個人事業主
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社DIACERTサービス法人、個人事業主
NTTビジネスソリューションズ株式会社e-Probatio PS2法人、個人事業主

(※15)これは独自の電子証明書ではなく、法務省の商業登記電子証明書の利用者データをセキュリティの高いICカードに格納して提供するサービスです。この利用者データ(暗号技術でいう秘密鍵)は会社の実印のように重要なものですが、法務局が提供するCD等による「ファイル形式」に代わり、ICカード形式で保有することができます。(個人のマイナンバーカードと同じ仕組み。)

①は、全国民が無料で作成できる(お馴染みの)マイナンバーカードに紐づく電子証明書(※16)です。その他は、必要に応じて事業者が利用できる電子証明書で、いずれも有料のサービスです。

(※16)この電子証明書のことを、本文ではマイナンバーカードと呼んでいます。正確にいうと電子証明書はマイナンバーカードのICチップに機密に記録されたデータですが、イメージしやすいのでそのように呼んでいます。

ちなみに、各電子認証サービスの利用料をまとめると以下のようになります。

【表9】電子認証サービスの概要

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電子認証サービス名対象者 利用料(※17)
公的個人認証サービス
(マイナンバーカード用電子証明書)
個人無料
商業登記電子証明書法人8,300円/2年(非課税)
AOSign サービス法人、個人事業主30,800円/2年+30日(税込)
法人認証カードサービス法人66,000円/2年(税込)
TOiNX電子証明書法人、個人事業主25,300円/2年1ヶ月(税込)
TDB電子認証サービスTypeA法人、個人事業主30,800円/2年1ヶ月(税込)
セコムパスポートfor G-ID法人、個人事業主15,400円/2年(税込)
DIACERTサービス法人、個人事業主15,400円/2年(税込)
e-Probatio PS2法人、個人事業主20,680円/2年1ヶ月(税込)

(※17)認証期間に応じてさまざまな利用料が選択できますが、ここでは1アカウント、2年程度の利用料を例として掲載しています。

利用料(コスト)の観点から見ると、個人は無料で利用できる①マイナンバーカードが、法人は法務省の発行する②商業登記電子証明書が最も安く利用できます。認証サービスには、利用料のほか、対応するICカードリーダが必要となる場合があります。認証サービスを選択する場合、個人事業主はまずは①マイナンバーカードを、会社は②商業登記電子証明書の利用を検討し、何らかの理由で特定の認証サービスを利用する必要がある場合(※18)はそれに従うのが良いのではないでしょうか。

(※18)企業間電子商取引や電子入札などで、特定の認証サービスの利用が必要となる場合があります。また、マイナンバーカードに抵抗ある場合は、事業用に特化して民間の認証機関のサービスを利用(有料ですが)する選択肢もあります。

以上