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勤怠の確認

初稿出稿日:2024年7月15日

給与計算の最初のステップである「勤怠の確認」では、出勤簿から給与計算期間(※1)の勤務時間、特に時間外労働時間や休日労働時間など給与支給額に影響する時間を集計します。

出勤簿は、法定三帳簿の1つなので労働者を1人でも雇ったら必ず整備しなければなりません(※2)。またその書式は任意ですが、日毎の労働時間や、時間外労働、深夜労働、休日労働の時間数が管理できるものでなければなりません。実務的には、時間外労働などの手当が生じる時間数を簡単に集計できる書式が、事務負担軽減、計算ミス防止の観点から理想的と言えます。一方、時間外手当などの労働条件は、法定基準以上であれば任意に決めることができるので、独自の労働条件を採用する事業者は理想的な出勤簿の書式も独自なものになりがちです。本記事では、下表1の通り、法定の労働条件を前提として、具体的に解説します。

(※1)「給与計算期間」及び、給与の「締め日」「支払日」については、別記事「給与に関する基礎知識」をご参照。

(※2)法定三帳簿及び出勤簿については、別記事「法政三帳簿の作成」をご参照。

【表1】本記事で前提とする労働条件

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始業時間 8:30
就業時間17:15
(昼食)休憩時間45分(法定限度通り)
1日の労働時間8時間(法定労働時間通り)
休日土曜日、日曜日、祝日 (法定休日は日曜日)
1週間の所定労働時間40時間(法定労働時間通り)
その他・法定要件通り
・時間外労働、休日労働に関する36協定あり

出勤簿作成に必要な労働時間、休日・休暇等の基礎知識

これから表1を前提とした出勤簿について具体的に見ていきますが、表1にも「法定休日」や「法定労働時間」という言葉が見られるように、労働時間や休日などについては最低限守らなければならない法定要件があり、出勤簿によって勤怠の確認を行うには、こうした法定要件に関する知識が前提となります。下表2に、これら基礎知識の概要と、さらに詳しい内容をカバーした記事のリンクをまとめますので、必要に応じてご参照ください。

【表2】出勤簿作成の前提となる基礎知識

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労働時間の原則労働基準法により、原則、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間を超えて労働させることは禁止されています。但し、36協定を締結し、法定基準以上の割増賃金を払えば一定限度までの時間外労働は許容されます。詳しくは、別記事「労働時間のルール」をご参照。
休日の原則同じく、原則、1週間に1日は休日を与えること、1日6時間超8時間以下の労働には間に45分以上の休憩を与えることなどが義務付けられています。詳しくは、別記事「休日と休憩のルール」をご参照。
休憩の原則
年次有給休暇(年休)の原則一定の勤務条件を満たした労働者は年休を取得する権利があり、また、年休を年10日以上付与される労働者には、5日以上の消化を使用者に義務付けています。詳しくは、別記事「法定休暇のルール」をご参照。

出勤簿から勤務時間の集計

それでは、表1の労働条件を前提に、時間外労働などの特別手当が生じる労働時間を集計する方法を、下図1の出勤簿例を使って具体的に見ていきます。

表1の労働条件は1日8時間労働など法定要件通りであり、1日8時間を超える労働には時間外労働手当、夜22時以降の労働には深夜労働手当、また法定休日労働には休日労働手当を支払う必要があり、下図1はそうした労働時間を集計しやすい例になっています。

本記事の目標は、下図1の合計欄にある時間外労働時間等の合計時間の集計方法を理解することにあります(※3)。その為に、ポイントとなる項目7点(下図1の①〜⑦)について、下表3で解説します。(下表3の番号は、下図1の赤色で記した番号に該当します。)

下表3の各ポイントについて理解できれば、本記事の目標は達成といえます。(ここでもその背景を解説した記事のリンクをつけておきますので、必要に応じてご参照ください。)

(※3)これらの合計時間を使って、給与計算の次のステップである「支給項目の計算」へ進みます。

【図1】出勤簿例

【表3】図1の出勤簿に関する説明(各項目の番号は図1の番号を指す)

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本来は法定休日ですが、(予め)振替休日(3月8日)を設定しているので、法定休日労働には当たりません。詳しくは、別記事「休日と休憩のルール」をご参照。
1日8時間の労働では、間に45分以上の休憩が必要で、表1の労働条件はその要件を満たしています。但し、1日8時間超の労働では、間に1時間以上の休憩が必要となるので注意が必要です。詳しくは、別記事「休日と休憩のルール」をご参照。
このように、1日8時間労働、休憩45分という労働条件の場合、1日の労働時間が8時間を1分でも超えると1時間の休憩をとる必要が生じます。(つまり8時間超の労働を行う日には、45分ではなく1時間の休憩を予めとっておく必要がある。)このような問題を避けるため、休憩時間を一律1時間と定めておく事業者も多くあります。
早朝勤務により、時間外労働が発生することもあります(当然ですが念のため)。
(法定休日でない)所定休日の労働であり、本例では休日労働手当は発生しない前提(法定要件通り)なので、時間外労働時間のみのカウントになります。詳しくは、別記事「休日と休憩のルール」をご参照。
3月23日は8時間以下の労働時間ですが、1週合計で51時間25分と40時間を超えています。超えた 11時間25分 から、既に時間外カウントされいる5時間25分を除く 6時間が時間外扱いとなります。詳しくは、別記事「労働時間のルール」をご参照。
3月24日の法定休日労働10時間(内1時間は深夜労働にも該当)から、後日(3月28日)取得した代休日の所定労働時間8時間を引いた2時間が正味法定休日労働時間としてカウントされます。尚、代休で相殺された8時間についても、法定休日労働の割増手当の対象となるので、別途、代休時間としてカウントします(※4)。詳しくは、別記事「休日と休憩のルール」をご参照。
⑤と同様、3月29日は8時間以下の労働時間ですが、1週合計で47時間と40時間を超えています。超えた 7時間から、既に時間外カウントされいる5時間を除く 2時間が時間外扱いとなります。

(※4)「代休時間」まで出勤簿に記載するのは稀ですが、ここでは敢えて考え方を説明するために記載しています。実際には、出勤簿上は代休取得の事実だけ記載し、休日労働時間の相殺と代休時間のカウントは、出勤簿外で行うことが多いと思われます。

労働時間の端数処理

最後に、労働時間の端数処理について補足しておきます。

時間外労働、深夜労働、休日労働の毎日の時間は、1分単位で管理しなければなりません。但し、1ヶ月合計でそれぞれに1時間未満の端数がある場合は、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる端数処理のみが認められています。1日毎に端数処理を行なったり、15分単位で端数処理を行うことは認められません。(古い通達によるガイドラインですが違法にならないよう注意が必要です。)

端数処理をしない方法や、一律切り上げとする方法は問題ありません。

これで給与計算の「ステップ1:勤怠の確認」は終了です。

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ステップ2:支給項目の計算へ進む

以上