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法定休暇のルール

初稿出稿日:2024年7月10日

この記事のキーワード

年次有給休暇(年休) 年休の比例付与 年休の時季指定権 年休の時季変更権 年休の計画的付与 年休の時季指定義務

年次有給休暇管理簿

産前産後休業 生理休暇 育児時間 育児休業 出生時育児休業 介護休業 子の看護休暇 介護休暇

本記事では、年次有給休暇や産前産後休業など法律で義務付けられている休暇等について順次解説していきます。

年次有給休暇のルール

年次有給休暇(以下、年休)は、労働基準法39条の規定により、一定の条件を満たせば労働者(※1)の権利として当然に与えらるものです。以下で説明するのは法定の年休制度であり、これ以上の条件であれば任意に決めることができます。

  • まず、雇入れの日から6ヵ月以上継続して勤務(※2)し、その期間の全労働日(※3)の8割以上出勤(※4)した人には、10日の年休を取得する権利が生じます。
  • 6ヵ月以降は、以下の通り1年経過毎に勤続年月に応じて年休付与日数が増えて行きます。
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経過勤続年月6ヶ月1年6ヶ月2年6ヶ月3年6ヶ月4年6ヶ月5年6ヶ月6年6ヶ月以上
年休付与日数10日11日12日14日16日18日20日
  • ある期間の出勤率が8割未満の場合、翌年の年休付与は0日になります。例えば以下では0.5〜1.5年の出勤率が8割未満なので翌年の付与は0日ですが、翌年は8割以上出勤しており、翌々年の付与は(勤続2年6ヵ月により)12日になります(11日ではなく) 。
  • 前年に使わなかった年休は翌年に繰り越しになります。但し、使わなければ2年で権利は消滅します(※5)。つまり使わなかった年休は翌年には持ち越せますが、翌々年には(付与から2年が経過するので)持ち越せません。

(※1)労働基準法の休日や休憩の規定が適用除外となる「法41条該当者」や「高度プロフェッショナル制度の対象者」(詳細は別記事「労働時間のルール」ご参照)も、年休の規定は適用されます(適用除外にはなりません)。

(※2)継続勤務とは、実際に労働したかどうかに関係なく、雇用関係が継続していることをいいます。したがって、病気療養で欠勤している状態も継続勤務に該当します。

(※3)使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日、正当なストライキや争議行為により労務の提供が全くなされなかった日、代替休暇などは全労働日から除かれます。(代替休暇については、別記事「休日と休憩のルール」ご参照)

(※4)業務上の負傷・疾病の療養のための休業、労働基準法65条の産前産後の休業、育児・介護休業法による休業、年次有給休暇、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日は、出勤したとみなされます。

(※5)労働基準法115条による消滅時効

パート、アルバイトの年休

労働基準法には、正社員、パートタイマーやアルバイトといった区別はなく、年休に関しては年間労働日数に応じて付与日数が決まります(これを比例付与といいます)。6ヵ月以上の継続勤務と、8割以上の出勤率が同様に要件となります。

  • まず、週5日以上又は週30時間以上勤務している人の場合、(正社員と同様)上述のルールが適用されます。
  • 次に、週4日以下かつ週30時間未満の人、又は年間労働日数が216日以下の人の場合、以下の表の通り年休が付与されます。

【比例付与される年休日数】

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週所定労働日数1年間の所定労働日数雇入れ日から起算した継続勤務期間
6ヶ月1年6ヶ月2年6ヶ月3年6ヶ月4年6ヶ月5年6ヶ月6年6ヶ月
4日169〜216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121〜168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73〜120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48〜72日1日2日2日2日3日3日3日

年休の時季指定権など

年休をいつ取得するかについては、以下のルールがあります。

  1. 使用者は、年休を労働者の請求する時季に与えなければなりません。但し、請求された時季に年休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に変更させることができます。前者を(労働者の)時季指定権、後者を(使用者の)時季変更権と呼ぶことがあります。(労働基準法39条5項)
  2. 上記1.の例外として、使用者は、労使協定(※6)を締結することにより、年休のうち5日を超える部分につき、予め休みの日を指定することができます。これを年休の計画的付与と呼ぶことがあります。(労働基準法39条6項)
  3. また、年休を年10日以上付与される労働者に対しては、そのうち5日は使用者が指定して年休を取得させる必要があります(※7)。これを年休の時季指定義務と呼ぶことがあります。但し、労働者が自主的に取得した年休や、計画的付与による年休は、この5日の要件から控除されます(つまり、時季指定義務は免除されます)(※8)。(労働基準法39条7項及び8項)

上記2.の計画的付与の例としては、以下のようなものが挙げられます。

【計画的付与の例】

・事業又は事業場全体の一斉付与方式(工場などの稼働を止めて全従業員を休ませるなど)
・班、グループ毎の交代制付与方式(流通業など一斉に休みを取ることが難しい場合など)
・計画表による個人別付与方式(盆、暮、GWや各自の記念日など個別に割り当て)

(※6)この場合の労使協定は、労働基準監督署へ届出る必要はありません。尚、労使協定については別記事「労使協定について」ご参照。

(※7)「働き方改革」の一環として年休取得を促進するため、2019年4月施行の改正労働基準法により規定されました。

(※8)年休の基本は労働者が決める時季に与えるものなので、自主的な取得日数や計画的付与による日数は5日の指定義務日数から控除される訳です。また、時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取しその意見を尊重するよう努めることとされています。

年休中の賃金

年休中に支払う賃金の額については、労働基準法により次の3種類の方法が規定されていますが、②による賃金とする事業者がほとんどです。

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① 平均賃金(※9)
② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③ 健康保険法による標準報酬月額(※10)の30分の1

①または②を選択する場合は、就業規則(またはそれに準ずるもの(※11))により定める必要があり、③を選択する場合には労使協定(※12)を締結しておく必要があります。いずれにしても最初から決めておく必要があり、都度変更するような運用は認められません。

(※9)平均賃金については、別記事「給与に関する基礎知識」をご参照。

(※10)標準報酬月額については、別記事で解説します。

(※11)就業規則のない常時10人未満の労働者を使用する事業所の場合、書面にて労働者に周知させる必要があります。

(※12)この場合の労使協定は、労働基準監督署へ届出る必要はありません。尚、労使協定については別記事「労使協定について」ご参照。

年次有給休暇管理簿の作成と保存義務

上に述べた、2019年4月施行の改正労働基準法により、年休が10日以上付与された労働者に対し、うち5日以上を取得させるよう使用者の義務が規定された(時季指定義務)のにに合わせ、年次有給休暇管理簿を作成し、対象者毎の年休取得状況を管理することも規定されました。

  • 管理簿を作成する対象者は、年休が10日以上付与される労働者(※13)です。
  • 管理簿の必須記載事項は、取得した有給休暇の日数、時季(取得の日付)、基準日(有給休暇の付与日)です。
  • 記載事項をカバーしていれば、様式は自由です。Excelやシステム上の作成も可です(※14)。法定三帳簿(※15)である労働者名簿や賃金台帳と合わせて作成することも可能です。
  • 保存期間は、有給休暇を与えた期間の終了後5年間(経過措置として当分の間は3年間で可)です。

(※13)管理監督者など法41条該当者や、高度プロフェッショナル制度の対象者も含まれます。

(※14)インターネットでも、いくつか雛形が公開されています。例えば、厚生労働省 山口労働局「年次有給休暇管理簿について」などご参照。

(※15)法定三帳簿については、別記事「法定三帳簿の作成」をご参照。

その他の法定休暇等

妊産婦の産前産後休業

妊産婦とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性を指しますが、労働基準法により以下の規定があります。

労働基準法65条による規定
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妊婦妊婦の請求があれば、産前休暇6週間(多胎妊娠は14週間)を取得させなければならない。
妊婦の請求があれば、他の軽易な業務に転換させなければならない。
産婦産後6週間経過前強制休業させなければならない。
産後6週間経過後8週間経過までは産婦が請求した場合に限って、医師が支障がないと認めた業務に限り就業可能。

尚、産前産後休業を有給とするか無休とするかは任意です。有給とする場合は、被用者保険に加入している場合、健康保険から支給される出産手当金(※16)から給与分が控除されます。

労働基準法66条による規定

妊産婦から請求あった場合には、

  • 変形労働時間制を採用していても、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない。
  • 36協定を締結しても、時間外労働、深夜労働及び休日労働をさせてはならない。

(※16)健康保険の被保険者が出産のために休業し、給与のない一定期間に支給される補助金。出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以降56日までが対象です。出産費用をカバーする出産育児一時金とは別になります。金額は1日あたり、標準報酬月額の30分の1(つまり1日あたりの標準報酬に相当)の3分の2ですので、休暇中に支給される給与がそれ以上であれば妊産婦にとって有利になります。

生理休暇

労働基準法68条は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合は、就業させてはならないとしています。生理休暇を有給とするか無休とするかは任意です。

育児時間

労働基準法67条は、生後満1年に満たない子を育てる女性は、通常の休憩時間のほかに1日2回、それぞれ少なくとも30分、子を育てるための時間(育児時間)を請求することができます。育児時間を有給とするか無休とするかは任意です。

育児・介護休業法(※17)に基づく休業等

以下はいずれも労働者(男女を問いません)の権利として認められた休業・休暇で、対象となる労働者の申し出により取得できるものです。

① 育児休業

子を養育するための休業で、期間は原則、子が1歳に達するまで(※18)ですが、保育所に入れないなど一定の理由のある場合は、子が1歳6ヵ月になるまで延長可能です。また、1歳6ヶ月以後も保育所等に入れない等の場合には、保育所が決まるまでの期間で、子が最長2歳になるまで延長が可能です。

② 出生時育児休業(通称、産後パパ育休)

令和4年10月施行の改正で創設された制度で、子の出生後8週間以内に、産後休業していない労働者が4週間まで取得することができます。(養子の場合などは、女性も出生時育児休業の対象となります。)

③ 介護休業(※19)

要介護状態にある対象家族を介護し、仕事と介護を両立させる体制を整えるための休業です。期間は対象家族1人あたり最大93日で、3回まで分割して取得できます。

④ 子の看護休暇

小学校就学前の子を養育する者がその世話をするために取得できるもので、子供が病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てしながら働きやすくするためにあります。予防接種や健康診断など疾病の予防を図るための世話も含まれます。1年に5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)を限度として取得でき、休暇の単位は1日又は1時間です。

⑤ 介護休暇(※19)

要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために取得できるもので、介護をしながら働き続けられるようにするものです。1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として取得でき、休暇の単位は1日又は1時間です。

①から⑤の休業等は、要件に該当している労働者に対して事業者が与えなければならないものですが、与えた日や時間に対して有給にする義務はありません。

但し、育児休業(パパ・ママ育休プラスを含む)、出生時育児休業、介護休業の場合、条件を満たせば公共職業安定所(ハローワーク)に申請することで、休業開始時の給与の一定水準の休業給付金が支給されますが、休業中に給与の支給がある場合、給付金と合わせて休業開始時の給与の80%を超える分は支給額が減額されます。

(※17)正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。

(※18)夫婦が共に育児休業を取得する場合で、条件が合えば、子が1歳2ヶ月に達するまで父母それぞれが上限1年休業できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。

(※19)介護休業と介護休暇はどちらも要介護状態にある家族を介護するための休みですが、前者は介護をしながら仕事を続けられる体制を整えるための比較的長期の休みであるのに対し、後者は継続的な介護のための休みという位置付けの違いが背景にあります。

以上