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従業員等の配偶者の出産、及び出産後

初回出稿日:2025年1月27日

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家族出産育児一時金 出生時育児休業給付金

本記事では、(男性)従業員等(※1)の配偶者の出産、及び出産後の育児休業などに関連して、事業主として必要な手続について解説します(※2)

(※1)以下、会社役員も含む場合は「従業員等」、含まない場合は「従業員」と表記します。本記事の手続のうち、雇用保険法、育児・介護休業法に基づくものは(会社役員を除く)労働者を対象とし、健康保険法、厚生年金保険法に基づくものは会社役員も対象とするため、意図的に使い分けます。

(※2)本記事でカバーする手続には男性従業員等以外にも適用できるものもありますが、本記事では男性従業員等を対象に想定して解説していきます。女性従業員等に関しては、別記事「従業員等の妊娠、出産」「従業員等の産休後(育休取得、職場復帰)」をご参照ください。

【図1】本記事でカバーする主な休業、手続のタイムライン

家族出産育児一時金の申請

従業員等(健康保険の被保険者)の被扶養者が出産するときは、出産の費用負担軽減のため、家族出産育児一時金が支給されます(※3)。支給を受けるための手続自体は基本的に被保険者自身が行うもの(事業主が記入、署名する所などはない)ですが、制度利用の周知や、協会けんぽ等へ提出する書類がある場合(後述する受取代理や差額請求などのとき)は、書類の取次などでサポートすることもあるでしょう(※4)

(※3)配偶者が、出産6ヶ月前以降まで1年以上自ら被保険者であった場合、自身の加入していた健康保険から出産育児一時金の支給を受けることもできます(資格喪失後の給付)。この場合は家族出産育児一時金とどちらかを選択することになります。配偶者自身が健康保険、国民健康保険の被保険者である場合は、そちらの出産育児一時金一択となり家族出産育児一時金を請求することはできません。

(※4)以下の手続は、家族出産育児一時金も出産育児一時金も同様ですので、両方まとめて出産育児一時金と呼んでいます。

  • ここでいう出産とは「妊娠85日(4ヶ月)以降の分娩(流産、死産、人工妊娠中絶の場合も対象)」です。
  • 出産育児一時金の額は、1児につき48万8千円です(※5)。健康保険組合の場合は独自に付加給付を行うケースもあるので、各健康保険組合へご照会ください。
  • 出産育児一時金の支給は、以下に述べる「直接支払制度」、「受取代理制度」、又は制度によらない方法、の何かの方法によって行われます。医療機関等の対応状況等によって選択することになります。

(※5)在胎週数が22週以上で、産科医療補償制度に加入する医療機関等における出産の場合は1児につき50万円です(共に2024年12月時点の金額)。双子以上の出産では人数分支給されます。

直接支払制度
  • 医療機関等が直接支払制度に対応している場合には、それに従うのが簡単です。
  • 出産費用が出産育児一時金を上回る場合(下図2の(1)の場合)、被保険者は医療機関等に直接支払制度を利用する旨の申出をして必要書類を交わすと、その後の健康保険への出産育児一時金の請求、受領手続は医療機関等が代行して実施します。結果、被保険者は出産費用全額を立替えることなく差額を支払うだけで精算を完了します。またこの場合、被保険者は健康保険へは何ら手続を行わずに完了します。
  • 出産費用が出産育児一時金を下回る場合(下図2の(2)の場合)も、被保険者が医療機関等に直接支払制度の利用申出をして必要書類を交わし、出産費用相当分の出産育児一時金の請求、受領手続を医療機関等に委託して支払を済ませます。その後、健康保険から被保険者宛に「出産育児一時金差額申請書」が送付されるので、それを利用して差額分の請求、受領を行います。この場合、差額を受領するまでに一定の時間を要しますが、差額受領を急ぐ場合には被保険者から健康保険宛に「出産育児一時金内払金支払依頼書」に必要な添付書類をつけて提出することで、医療機関等と健康保険の間の手続を待たずに差額請求を行うことも可能です。

【図2】直接支払制度の概略図

受取代理制度
  • 医療機関等によっては、事務手続や資金繰りに負担のある直接支払制度を採用していない所もあります。そのうち、厚生労働省へ「受取代理」の届出を行なっている医療機関等においては、ここで述べる受取代理制度を利用することができます。
  • 受取代理制度を利用する場合、まず、受取代理の申請書を被保険者、医療機関等がそれぞれの記入欄を完成して健康保険へ提出します。申請書は医療機関等の窓口、若しくは健康保険のホームページ等で入手できます。健康保険への申請は、出産予定日の2ヶ月前以降に行うことができます。
  • その後、医療機関等は健康保険から受取代理申請の受付通知を受け、出産日以降に出産育児一時金を請求し受領します。
  • 出産費用が出産育児一時金を上回る場合(下図3の(1)の場合)、被保険者は医療機関等に差額を支払い、出産費用が出産育児一時金を下回る場合(下図3の(2)の場合)は、被保険者は健康保険から差額を受領して精算を完了します。

【図3】受取代理制度の概略図

制度によらない方法

医療機関等が直接支払制度、受取代理制度の何にも対応していない場合、海外で出産した場合などは、一旦、被保険者が出産費用全額を医療機関等へ支払った後、別途、健康保険へ出産育児一時金を請求することになります。この場合の支給申請書は、各健康保険のホームページ等から入手することになります(協会けんぽの場合は、協会けんぽ「健康保険出産育児一時金支給申請書」をご参照)。

新生児の健康保険加入手続

新生児も健康保険の被扶養者となるための手続が必要ですが、ここでいくつか考慮すべき点があります。

(1)新生児を夫婦どちらの健康保険の被扶養者とするか

夫婦それぞれが健康保険の被保険者である場合、新生児をどちらの被扶養者とするかについて、厚生労働省の通達によって概略以下の通りとされています(※6)

  • 夫婦ともに被用者保険の被保険者である場合は、年間収入(※7)が多い方の被扶養者とする。但し、その差が年間収入の多い方の1割以下の場合、届出により主として生計を維持する者の被扶養者とすることができる。
  • 夫婦の一方が国民健康保険の被保険者である場合は、被用者保険の被保険者については年間収入(※7)を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする(※8)
(2)新生児を被扶養者として届出るタイミング

新生児を健康保険の被扶養者とするには、事業主が「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します(※9)が、その提出期限は、原則、事実発生日(つまり出生日)から5日以内です。一方、出生届(全ての手続は出生届が前提となります)は(父又は母が)出生日から14日以内に市区町村へ届出ることになっています。そのため、出生時の健康保険被扶養者(異動)届は、例外的に5日過ぎに提出しても出生日を被扶養者の認定日とする扱いがなされています。従って、事業主としては、従業員等の配偶者の出産時においては(必要であれば健康保険にも確認の上)柔軟に対応することが適切だと思われます。

(※6)詳細は、厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」をご参照。

(※7)この場合の年間収入は、(単に直近の実績だけでなく)「過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする」とされています。

(※8)国民健康保険には「被扶養者」という概念がないため、新生児を国民健康保険に加入させると保険料が増加します。従って、収入に差がない場合は被用者保険の被扶養者とする方が保険料が少なく済みます。

(※9)健康保健被扶養者(異動)届については、「健康保険の被扶養者」ご参照。

育児・介護休業法に基づく休業

ここでは、配偶者の出産以降、育児関連について従業員が取得できる休業等につき、概要を以下にまとめます。これらは育児・介護休業法(※10)に基づくもので、該当する従業員から申出があった場合には、事業主は、原則、これを認める義務があります。尚、さらに詳細が必要な場合は厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」などをご参照ください。

(※10)正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。

出生時育児休業(通称「産後パパ育休」)

産後パパ育休は、男性の育児休業取得促進のため、2022年10月1日に創設された制度で、制度を利用できるのは、原則、出生後8週間以内の子を養育する産後休業していない男女労働者です(※11)。子の出生後8週間以内の期間内で最大4週間(28日)で、2回まで分割して(後述の育児休業とは別に)休業を取得することができます。

(※11)従って、例えば、出生後間もない養子を養育する女性従業員もこの制度を利用することができます。

育児休業

子を養育するための休業で、育児・介護休業法に基づく育児休業の期間は、原則、子が1歳に達するまでですが、保育所に入れないなど一定の理由のある場合は、子が1歳6ヵ月になるまで延長可能です。さらに1歳6ヶ月以後も保育所に入れないなどの場合には、最長、子が2歳になるまで延長が可能です。育児休業は、特別な事情のない限り、1人の子につき1歳までに2回、1歳6ヶ月及び2歳までに各1回取得することができます。

パパ・ママ育休プラス(通称)

パパ・ママ育休プラスとは、両親が共に育児休業を取得する場合であって以下の要件を全て満たすときに、後から育児休業を取得する親(育休プラスの対象者)の育児休業の上限が、子の年齢が1歳2ヶ月まで延長される特例制度です。

(以下の要件では、育休プラスの対象者を「本人」、その配偶者を「配偶者」と呼びます。)

  • 配偶者が、子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
  • 本人の育児休業開始予定日(※12)が、子の1歳の誕生日以前であること
  • 本人の育児休業開始予定日(※12)は、配偶者の育児休業の初日以降であること

(※12)育児休業は子が1歳までに2回まで取得できますが、2回目の育児休業の場合は2回目の育児休業開始予定日で判断します。

パパ・ママ育休プラスを適用する場合においても、各親が育児休業を取得できる期間は、原則(産後パパ育休、産後休業を含め)合計1年間です。また、パパ・ママ育休プラスにおいても、保育所に入れないなど一定の理由のある場合は、子が1歳6ヵ月(さらに2歳)になるまで育児休業を延長可能です。

子の看護休暇(※13)

小学校就学前の子を養育する者は、子供が病気やけがの際にその世話をするために休暇を取得できます。予防接種や健康診断など疾病の予防を図るための世話も含まれます。1年に5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)を限度として取得でき、休暇の単位は1日又は1時間です。子の看護休暇を有給とするか無給とするかは任意です。

(※13)2025年4月施行の改正により、対象の子が「小学校就学前」から「小学校3年生終了まで」に拡大され、休暇取得の目的に「感染症に伴う学級閉鎖等」「入園(入学)式」「卒園式」が追加されるなどし、呼び名も「子の看護等休暇」へ変更になります。

休業中の各種特例

社会保険料の免除申請

3歳未満の子を養育するために、育児休業(産後パパ育休を含む)又は育児休業に準ずる措置による休業(※14)(以下、合わせて「育児休業等」といいます)を取得中の被保険者(※15)については、事業主の申出によって社会保険料(健康保険料(介護保険料を含む)及び厚生年金保険料)が、被保険者負担分、事業主負担分とも免除されます。尚、保険料免除は、育児・介護休業法に規定する育児休業等を取得中の労働者が対象であり、会社役員は対象外です。

  • 社会保険料が免除される期間は、育児休業等を開始した日の属する月から、育児休業等を終了する日の翌日の属する月の前月までで(※16)、この間、有給、無給であるかは問いません。また、賞与(支給される場合)にかかる保険料も免除されます(※17)。免除期間中も健康保険の被保険者資格に変更はなく、厚生年金保険も保険料を納めた期間として扱われます。
  • 免除を受けるには、協会けんぽの場合、事業主が「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を所轄の年金事務所へ提出します。申出書の提出は、対象者の育児休業等取得中又は終了後1ヶ月以内に行わなければなりません。申出書の書式及び記入例は日本年金機構「育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」から入手可能です。e-Gov による電子申請も可能です。健康保険組合の場合は、各健康保険組合へご確認ください。
  • 申出書を提出した後、育児休業等の終了予定日を延長する場合、或いは予定より早く育児休業等を終了した場合は、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を再度提出しなければなりません。従って、二度手間を避けるには、育児休業等終了後に申出書を提出するのが良いでしょう。
  • また、申出書は以下の期間ごとにそれぞれ分けて提出する必要があります。
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1歳未満の子を養育するための育児休業(産後パパ育休を含む)
保育所待機等の特別な事情がある場合の1歳から1歳6ヶ月に達するまでの育児休業
保育所待機等の特別な事情がある場合の1歳6ヶ月から2歳に達するまでの育児休業
1歳から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業に準ずる措置による休業(※14)
  • 申出書を提出すると、毎月事業主へ届く保険料納入告知書に免除内容が反映されます。申出書提出のタイミングによって保険料納付額集計の締めに合わない場合は、以降の告知書にて差引額として反映されます(※18)

(※14)育児・介護休業法に基づく「育児休業に準ずる措置による休業」を就業規則等で規定した場合も社会保険料の免除対象となります。

(※15)健康保険の一般被保険者が対象です(健康保険の被保険者の区分は「社会保険の適用基準」をご参照)。

(※16)育児休業等開始日と終了日の翌日が同じ月の場合は、育児休業等日数が14日以上のときに限り免除されます。この場合、賞与に係る社会保険料は免除対象外です((※17)ご参照)。

(※17)賞与に係る社会保険料は、賞与支給月の末日を含む連続した1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除されます。

(※18)社会保険料の納付手続については「健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料の納付手続」をご参照。

ご参考:配偶者が国民年金の第1号被保険者、国民健康保険の被保険者である場合の免除手続

事業主の手続ではありませんが、従業員等の配偶者が独立して生計を維持していて国民年金、国民健康保険の保険料を払っている場合も産前産後期間の保険料免除制度があるので、該当者には周知しておくと親切でしょう。手続は、市区町村の国民年金、国民健康保険の窓口などで行います。

雇用保険の休業給付金の申請

雇用保険の被保険者(※19)が出生時育児休業、育児休業を取得した場合には、一定の要件のもとそれぞれ雇用保険から給付金が支給されます。

(※19)雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者が対象です(雇用保険の被保険者の区分は「労働保険の適用基準」をご参照)。雇用保険の被保険者でない会社役員は対象外です。

出生時育児休業給付金

出生時育児休業給付金の支給要件

以下の要件を全て満たした場合に支給されます。

  • 雇用保険の被保険者であること(一般被保険者、又は高年齢被保険者)
  • 出生時育児休業(産後パパ育休)を取得したこと(2回まで分割取得可)
  • 休業を開始した日前2年間に、「みなし被保険者期間」が通算して12ヶ月以上あること
    • 「みなし被保険者期間」とは、休業を開始した日を被保険者資格喪失日とみなして計算した(失業保険の受給要件である)被保険者期間に相当する期間をいいます。「被保険者期間」は、「離職日から1ヶ月ごとに区切った期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月、又は、賃金支払の基礎となる労働時間数が80時間以上ある月」を1ヶ月として計算します。
  • 休業期間中の就業日数が10日以下、又は、就業時間数が80時間以下であること
出生時育児休業給付金の支給額

出生時育児休業給付金の額は、以下の式で計算されます。

出生時育児休業給付金の支給額 = 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(最大28日) × 67%(※20)

「休業開始時賃金日額」とは、休業を開始した日を被保険者資格喪失日とみなして算出される(失業保険の計算の基礎となる)賃金日額に相当する額をいいます。「賃金日額」は、(前述の)被保険者期間として計算された最後の6ヶ月間に支払われた賃金(※21)の総額を180で割った額をいいます。(上限額、下限額について後述。)

上限額と下限額

休業開始時賃金日額には上限、下限があり、2025年7月31日までは以下の通りです(※22)

休業開始時賃金日額の上限額15,690円
同、下限額 2,869円
賃金との調整

休業期間中に事業主から賃金が支払われた場合は、以下の通り減額調整が行われます。

支払われた賃金の額給付金の減額(支給される給付金の額)
「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数」の13%以下減額なし(全額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数」の13%超、80%未満賃金と給付金の合計が「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数」の80%を超える額が減額となる(「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数」の80%と賃金の差額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数」の80%以上給付金の全額が減額となる(給付金は支給されない)

(※20)2025年4月施行の改正により、14日以上の出生時育児休業を取得した場合に+13%の「出生後休業支援金」が支払われるようになります。

(※21)臨時に支払われる賃金及び3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。

(※22)勤労統計をもとに毎年8月1日に見直しがあります。

出生時育児休業給付金の申請方法

給付金の支給を受けるには事業主が以下の手続を行います。

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何をどこへ提出時期
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書所轄の公共職業安定所開始出産予定日又は出産日のいずれか遅い日から8週間を経過する日の翌日
育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書期日開始日から2ヶ月を経過する日の属する月の末日

①、②とも書式は公共職業安定所で入手できるほか、②はハローワークインターネットサービス(出生時育児休業給付金申請)からダウンロードすることもできます。

書式の記載方法、添付書類など申請方法の詳細や、育児休業給付金制度全般については厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」の「1 出生時育児休業給付金」などが参考になります。また、e-Gov による電子申請も可能です。

育児休業給付金

育児休業給付金の支給要件

以下の要件を全て満たした場合に支給単位期間(※23)ごとに支給されます。

  • 雇用保険の被保険者であること(一般被保険者、又は高年齢被保険者)
  • 1歳未満の子を養育するために育児休業を取得したこと(2回まで取得可)
    • パパ・ママ育休プラスを利用する場合は「1歳未満」を「1歳2ヶ月未満」とします。
    • 保育所待機等の特別な事情がある場合は「1歳6ヶ月未満」まで、さらに同様な事情が続く場合は「2歳未満」まで各1回の育児休業も対象(※24)
  • 育児休業を開始した日の前2年間に、「みなし被保険者期間」が通算して12ヶ月以上あること
    • 「みなし被保険者期間」については出生時育児休業給付金の解説をご参照ください。
  • 1支給単位期間中の就業日数が10日以下、又は、就業時間数が80時間以下であること(※25)

(※23)「支給単位期間」とは、育児休業を開始した日から1ヶ月ごとに区分した各期間(その1ヶ月の間に育児休業終了日を含む場合は育児休業終了日までの期間)をいいます。

(※24)但し、1歳(又は1歳6ヶ月)到達日に被保険者又は配偶者が育児休業中であること、新たな延長期間の育児休業開始日が被保険者又は配偶者の育児休業と連続(又は重複)していること、など一定の要件あり。

(※25)育児休業を終了した日の属する支給単位期間の場合は、就業日数10日以下、又は、就業時間数80時間以下であるとともに、全日休業している日が1日以上あることが必要です。

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の額は、1支給単位期間につき以下の式で計算されます。

  • 育児休業開始から180日目まで
1支給単位期間の支給金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
  • 181日目以降
1支給単位期間の支給金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

「休業開始時賃金日額」の説明及び上限、下限については、出生時育児休業給付金の解説をご参照ください。

「支給日数」は原則30日、最後の支給単位期間についてはその支給単位期間の日数です。

賃金との調整

支給単位期間に事業主から賃金が支払われた場合は、以下の通り減額調整が行われます。

・ 育児休業開始から180日目まで
支払われた賃金の額給付金の減額(支給される給付金の額)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の13%以下減額なし(全額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の13%超、80%未満賃金と給付金の合計が「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%を超える額が減額となる(「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%と賃金の差額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%以上給付金の全額が減額となる(給付金は支給されない)
・ 181日目以降
支払われた賃金の額給付金の減額(支給される給付金の額)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の30%以下減額なし(全額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の30%超、80%未満賃金と給付金の合計が「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%を超える額が減額となる(「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%と賃金の差額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%以上給付金の全額が減額となる(給付金は支給されない)
育児休業給付金の申請方法

初回の給付金の支給を受けようとする際に、事業主が以下の手続を行います。

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何をどこへいつまでに
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書所轄の公共職業安定所育児休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書

①、②とも書式は公共職業安定所で入手できるほか、②はハローワークインターネットサービス(育児休業給付金申請)からダウンロードすることもできます。

給付金の申請は、2支給単位期間(2ヶ月分)ごとに行いますが、初回申請時に受給資格が確認されると2回目以降の申請用紙である「育児休業給付金支給申請書」が公共職業安定所から交付されるので、2回目以降はその申請書を利用して支給手続を行います。

書式の記載方法、添付書類など申請方法の詳細や、育児休業給付金制度全般については厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」の「2 育児休業給付金」などが参考になります。また、初回、2回目以降とも、e-Gov による電子申請も可能です。

厚生年金保険の養育期間標準報酬月額の特例

厚生年金保険に関しては、例えば、(後述する)育児休業等終了時改定などにより標準報酬月額が下がった場合でも、3歳未満の子を養育している間は将来受給する年金額の計算上、養育期間前の高い標準報酬月額を適用する特例があり、これを一般に「養育期間標準報酬月額の特例」といいます(※26)

(※26)養育期間標準報酬月額の特例は、後述する要件を満たす限り適用されるもので、育児休業等終了時改定、あるいは育児休業等の取得や勤務時間短縮などと関係なく報酬が低下した場合も適用になります(例:業績や能力査定等による降給等)。

特例の対象者

3歳未満の子を養育する厚生年金保険の被保険者

  • 養育期間に入る前に退職し、その後養育期間中に再就職して被保険者になった場合、養育開始月の前月以前1年以内に被保険者であった人に限り対象者となります。
特例措置の内容

養育期間中の標準報酬月額が、養育期間前の従前標準報酬月額を下回る場合、その従前標準報酬月額を養育期間中の標準報酬月額とみなして将来の年金額を計算します。

  • 従前標準報酬月額とは、養育開始月の前月の標準報酬月額(養育開始月の前月に被保険者でなかった場合は、その前月から1年以内に被保険者であった月のうち直近の月の標準報酬月額)をいいます。
  • 対象期間は、当該子を養育することになった日の属する月(※27)から、次のいずれかに該当するに至った日の翌日の属する月の前月までです。
特例の終了事由
当該子が3歳に達したとき(誕生日の前日)
被保険者の資格を喪失したとき(退職日など)
当該子以外の子を養育することとなったとき(第2子に特例を適用する場合、第1子の特例は終了します)(※28)
当該子が死亡したとき、その他当該子を養育しないこととなったとき
当該被保険者が保険料免除の対象となる育児休業等を開始したとき(第1子の養育期間中に第2子の育児休業等に入り保険料免除となった場合、第1子の特例は終了します)(※28)

(※27)養育期間中に被保険者資格を取得した場合は、被保険者資格を取得した日の属する月から対象期間になります。

(※28)この場合、特例は第2子へ引継がれます。すなわち第2子の養育期間標準報酬月額の特例においては第1子の特例と同額の従前標準報酬月額が適用されます。

特例の申請方法

養育期間標準報酬月額の特例を受けるには、事業主が以下の届出を行います(※29)

何をどこへいつまでに
厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書事業所を所轄する年金事務所特例を受け始める月から2年以内(※30)

(※29)申出の際にすでに退職している場合は、事業主を経由せず直接本人(被保険者であった人)が(被保険者であった期間分につき)年金事務所へ提出することもできます。

(※30)申出日より前の期間については、申出日の前月までの2年間に限り遡って特例が認められます。

その他のチェックポイント

社会保険料の育児休業等終了時改定

3歳未満の子を養育する被保険者が、育児休業等を終了し職場復帰したときの給与月額が下がった場合には、随時改定の要件に該当しなくても、標準報酬月額を改定することができ、これを育児休業等終了時改定といいます(※31)

  • 育児休業等修了日の翌日が属する月から3ヶ月間の報酬の平均を基に、標準報酬月額に1等級でも差が出た場合に、4ヶ月目の給与(例:「育児休業修了日の翌日が属する月」が4月の場合、7月の給与)から改定を適用します。
  • 3ヶ月のうち、報酬支払基礎日数が17日未満(※32)の月がある場合は、その月を除外して算出します(※33)
  • 改定による標準報酬月額は、1月から6月までのいずれかの月に改定されたものは原則としてその年の8月分の給与(例:月末締め翌月払いの場合は9月支払の8月分の給与)まで、7月から12月までのいずれかの月に改定されたものは原則として翌年の8月分の給与まで適用されます。
  • 育児休業等終了時改定を実施するには、協会けんぽ加入の場合、事業主が以下の届出を行います。
何をどこへいつまでに
育児休業等終了時報酬月額変更届事業所を所轄する年金事務所速やかに

(※31)標準報酬月額については「社会保険の標準報酬月額とその決め方」をご参照。

(※32)所謂「特定4分の3未満短時間労働者」(その意味は「社会保険の適用基準」ご参照)については「17日」を「11日」に読替えます。

(※33)所謂「短時間就労者」(その意味は「社会保険の適用基準」ご参照)については、①1ヶ月でも基礎日数が17日以上ある場合はそれらの月の平均値、②3ヶ月とも基礎日数が17日未満ながら15日以上の月がある場合はそれらの月の平均値とします。

その他

  • 家族手当などが支払われる場合、標準報酬月額の随時改定に該当しないか注意が必要です(※34)
  • 2025年4月施行の改正により、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業している労働者に対し、時短勤務中に支払われた賃金の最大10%を雇用保険から支払う「育児時短就業給付金」制度が創設されます。

(※35)随時改定については、「社会保険の標準報酬月額とその決め方」をご参照。

以上