初回出稿日:2024年11月21日
本記事では、年末調整手続の締めとして、年末調整後に行うべき手続について解説します。
「年末調整の概要」では、年末調整は大きく分けて次の4つのステップで進めると説明し、続く「年調年税額の計算」までに、このうちのステップ3. まで(つまり従業員ごとの過不足の精算まで)をカバーしました。残る手続はステップ4. の税務署との過不足の精算、及び、法定調書の提出ということにになります。
- 対象者全員から、年末調整に必要な各種申告書を提出してもらいます。
- 12月迄に支払が確定している給与や賞与など給与総額と、徴収税額を集計します。
- 源泉徴収簿等を使って年調年税額を計算し、従業員ごとの過不足を精算します。
- 税務署と過不足の精算を行い、法定調書の提出など事後の手続を行います。
このうち法定調書の提出については、年末調整の結果1月末までに作成、提出する「給与所得の源泉徴収票」以外に、他の支払調書なども合わせて作成、提出する必要があります。つまり、年末調整に限った手続ではないため、別記事「法定調書の作成、提出」としてまとめましたので、そちらをご覧ください。
以下、税務署との過不足の精算ついて説明します。
年末調整後の税務署との過不足の精算
税務署との過不足の精算は、年末調整を行なった給与(又は賞与)に係る源泉税の納付手続を行う「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)」(下図1)により行います。つまり、毎月使用する所得税徴収高計算書(納付書)の中にある年末調整の精算額を記入する欄(下図1の赤枠部分)によって精算を行うわけです(※1)。
赤枠部分の記入方法は以下の通りです。
- 「年末調整による不足税額」欄(図1の赤枠内上段)には、年末調整の結果、不足額となったものの合計額を記入し、同月(通常1月)に納付する本税に含めて納付します。
- 「年末調整による超過税額」欄(図1の赤枠内下段)には、年末調整の結果、超過額となったものの合計額を記入し、同月に納付する本税から控除します。つまり、超過税額は税金を返してもらうのではなく、未納の源泉徴収税額に充てて回収します。(これを「充当」といいます。) 従って、「年末調整による超過税額」欄には、充当可能な額(つまり本税が0円になる金額)までを記入し、未回収額があれば翌月以降に充当します。充当の結果、納付する税金が0円となる場合も、所得税徴収高計算書(納付書)を所轄税務署へ提出する必要があります(※2)。
下図2は、上記 2. の「従って、」以下に述べた、当月納付分の源泉徴収税額に充当後、尚未回収額がある場合の記入例です(※3)。この例では、年末調整の結果生じた超過額172,174円が1月に納付する源泉徴収税額134,282円を超えるため、当月の納付書では134,282円を充当し、残り37,892円は翌月以降の充当へ回すことが示されています。
【図1】給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)(一般用(※4))
【図2】繰越し充当の例
(※1)納付(精算)の期日も通常月と同様です。つまり12月支給の給与等で年末調整を行なった場合は、1月10日(納期の特例を受けている場合は1月20日、またそれらが土曜、日曜、祝日の場合は翌平日)が期日です。
(※2)この場合、納付税額のない所得税徴収高計算書(納付書)は金融機関では扱えないので、所轄税務署へは e-Tax、郵送又は窓口にて提出する必要があります。
(※3)出典は、国税庁「年末調整のしかた」の中にある「5 税額の納付と所得税徴収高計算書(納付書)の記載」です。所得税徴収高計算書(納付書)の記入方法全般については、国税庁「所得税徴収高計算書(納付書)の記載のしかた」もご参照ください。
(※4)納期の特例を受けている場合の書式は、支払年月日の記入欄に違いがあります。
以上