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株式会社の設立手続(設立登記まで)

初回出稿日:2023年9月12日

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発起設立 募集設立

原始定款 現行定款 

絶対的記載事項(株式会社の定款の) 相対的記載事項(株式会社の定款の) 任意的記載事項(株式会社の定款の)

電子定款

定款の認証

設立時取締役 設立時監査役 設立時代表取締役

本記事では、株式会社の設立手続について解説します。手続を司法書士などに依頼するのではなく、事業者(発起人)が自ら手続を行うケースを想定しています。

この記事の内容

会社設立手続と言えば、狭義では設立登記までを指しますが、一般にはその後の税務署や役所等の手続、銀行口座の開設なども含めることもあるでしょう。但し、本記事では株式会社に関して狭義の設立手続をカバーし、その後の手続は別記事(※1)で扱うことにします。理由は、その後の手続までカバーすると記述が非常に長くなってしまうことに加え、設立登記まは株式会社と合同会社で違いがある一方、その後の手続は両者共通なため、設立登記の前後で分けて解説する方が解りやすいと考えるからです。

株式会社の設立方法には、発起設立(※2)と募集設立(※3)の2種類がありますが、募集設立は設立時から多数の株主が関係するなどの例外的なケースであり、また手続も複雑になるため、本記事では発起設立を前提として解説していきます。

(※1)「会社設立登記後の必要手続」ご参照。

(※2)株式会社の設立に際して、発行する株式の全てを発起人が引き受けて設立すること。

(※3)株式会社の設立に際して、発起人が株式の一部を引き受け、残りの株式については新たに株主となるものを募集して設立すること。

以上を前提に、株式会社の発起設立の手順として、以下の項目を章ごとに解説していきます。以下の項目は、ほぼ手続の順番通りですが、(4)の「発起人(会)の同意、決議」は必要に応じて随時行うものです。

実際の進め方としては、まず以下の(1)から(8)を通して定款、登記申請書、添付書類など全てのドラフトを作成し、公証役場や登記所での確認を行なった後に、押印等により書類を完成させ、改めて提出するのが良いでしょう。

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(1) 事前準備
(2) 定款の作成
(3) 定款の認証
(4) 発起人(会)の同意、決議
(5) 出資の履行
(6) 機関の設置
(7) 調査報告書の作成
(8) 設立の登記

(1)事前準備

会社設立の第一歩は、会社や事業の基本事項の検討から始めます。手続的には、定款の作成や登記申請に必要な項目を事前に決めておくことです。具体的には、以下のような項目です。

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・商号 ・事業目的 ・本店の所在地
・発起人メンバー ・代表者 ・機関設計 ・役員メンバー  
・決算期 ・資本金の額 ・株主毎の出資金の割当て

これら項目の検討に関して、注意点などについては、別記事「会社設立の事前準備」をご参照ください。

(2)定款の作成

事前準備が済んだら定款の作成に着手します。定款は会社の最も根本的な事柄を定めたもので、会社設立時の定款を「原始定款」といいます(※4)。原始定款は発起人が作成し、発起人全員が署名(※5)、又は記名(※5)押印します。(ドラフト段階では、署名又は押印せずに次章「(3) 定款の認証」、「公証人への事前確認」へ進みます。)

(※4)対して、今現在有効な定款を「現行定款」という。

(※5)署名は自筆で氏名を手書きすること、記名は署名以外の方法で氏名を記載(パソコン印刷、ゴム印の使用など)することをいう。

定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があります。

【表1】定款の記載事項

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絶対的記載事項:記載しなければ定款全体が無効となる事項
 ・商号 ・目的 ・本店の所在地 ・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 
 ・発起人の氏名又は名称(※6)及び住所 ・発行可能株式総数(※7)
相対的記載事項:記載しなくても定款自体の効力に関係ないが、記載しないとその効力が認められない事項
 ・株式譲渡制限 ・機関の設置 ・役員の任期延長 ・公告の方法(定めなければ官報への掲載による) ・変態設立事項(※8) など
任意的記載事項:会社法に違反しないものであれば定款に記載できる事項
 ・株主総会の議長 ・取締役、監査役の員数 ・事業年度、決算期 など

(※6)個人の場合を「氏名」、法人の場合を「名称」という。

(※7)他の絶対的記載事項は公証人の認証次章にて解説を受けなければならないが、発行可能株式総数はその必要はなく、設立登記までに定めれば良い(会社法37条)。

(※8)会社法28条に規定する(1)現物出資、(2)財産引受、(3)発起人が受ける報酬・特別利益など、(4)設立費用に関する事項の4つ。これらの事項ががあれば、定款に記載しないとその効力が生じない。

定款の記載例については、以下のリンクが参考になります。

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法務局「商業・法人登記申請手続」(※9)
日本公証人連合会「定款等記載例」(※10)
法務省「一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!」(※11)

(※9)リンクを開き、「その他の会社・法人の登記をしたい方は以下の法人種別の中から選択」という表記の下の「株式会社」を選択。その後「設立」→「取締役会を設置する会社」、「取締役会を設置しない会社」のいずれかを選択し、「株式会社設立登記申請書」→「記載例」をクリックすると設立登記申請書の記載例が表示されます。その添付書類の中に「定款の記載例」があります。

(※10)同HPの「定款認証」にある「株式会社 定款認証」は、定款の記載に関して有用なQ&Aをカバーしています。

(※11)発起人が1人の「一人会社」の場合の定款等の記載例が参考になります。オンライン申請の説明サイトですが、「3 添付書面情報の添付」以下で、WORD、一太郎それぞれで定款等の作成例が公開されています。

ところで、定款の作成方法には、書面による方法(紙ベース)の他に、PDFファイルにして「登記・供託オンライン申請システム」の提供する「PDF署名プラグイン」などを利用して電子署名を付与する方法(この方法による定款を「電子定款」と呼びます)があります。電子定款にすれば、(後述の)紙の定款に貼る4万円の収入印紙が不要でその分安く作成できる一方、電子定款の作成にはシステムの準備や操作、さらに公証人との認証手順に慣れが必要で、会社設立を専門としない事業者にとっては若干ハードルが高いと言えます。(電子定款作成のための要件については、別記事「商業登記関係のオンラインサービス」をご参照。) 本記事では、書面(紙ベース)での定款を前提に解説していきます。

定款の書面の大きさ等に決まりはありませんが、A4サイズの用紙に片面印刷するのが一般的となっています。

定款のドラフトが完成したところで、次の「(3)定款の認証」へ進みます。

(3)定款の認証

定款の認証とは、定款への署名又は記名押印が発起人のものであることを公証人の面前で認め、公証人がその旨を記載し、発起人による定款作成行為が正しく成立したことを証明するものです。手続は、発起人全員で管轄の公証役場へ訪問して行いますが、同行できない発起人がいる場合は、委任状を作成します。以下、順を追って説明します。

尚、定款の認証は原始定款の作成時のみに必要な手続で、会社設立後に定款を変更しても、公証人の認証は不要です。

公証人への事前確認

定款のドラフトが完成したら、管轄の公証役場(※ 12)へ電話等で手続の確認を行います(※13)。その際、まず最初に定款案等をFAX、メール又は持参により提出して、内容確認を行うよう勧められると思います。これ以降、認証手続完了まで、手順については認証を行う公証役場の指示に従ってください。以下は、一般的な手続の流れになります。

公証人による事前確認のため、通常、次表2のような書類をFAX、メール又は持参により提出することになります。(実際には、公証役場の指示に従い、必要な事前確認書類を提出してください。以下同様です。)

【表2】定款認証の事前確認書類(例)

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1. 定款のドラフト(押印前のもの)
2. 発起人全員の印鑑証明書(発起人が法人の場合は、印鑑証明書及び登記事項証明書)
3. 認証手続に欠席する発起人の委任状(※14 )
4. 実質的支配者となるべき者の申告書(※15))

表2の項目4. について補足すると、これは平成30年11月30日以降、定款認証の際に提出することになったもので、これに伴い暴力団等が実質的支配者である場合、公証人は定款の認証を行わないことになりました。実質的支配者が暴力団等に該当しないと認められれば、定款の認証文に「設立される法人の実質的支配者となるべき者が◯◯である旨及び同人が暴力団員等でない旨申告した」との文言が付記され、公証人は無料で「実質的支配者に関する申告受理及び認証証明書」(※16 )を発行してくれます。

公証人から、内容確認の連絡があったら(修正等があれば対応するとともに)、認証手続のための来訪日時、来訪予定者、必要謄本の数などの確認を行います。

(※12)定款の認証は、会社の本店所在地を管轄する法務局・地方法務局の公証人が行うことになっています。例えば東京都内に本店を置く場合、東京法務局所属の公証人(つまり東京都内の公証役場の公証人)しか認証できません(逆に、都内であれば、霞ヶ関公証役場でも渋谷公証役場でもその他でも認証可能です)。法務局・地方法務局の管轄区域は、法務省「法務局・地方法務局所在地一覧」をご参照ください。

(※13)公証役場の一覧及び連絡先等は、日本公証人連合会「公証役場一覧」をご参照ください。

(※14 )委任状の書式等については、認証を依頼する公証役場の指示に従うことになりますが、例としては、渋谷公証役場「委任状サンプル集」の「紙定款の認証を受ける場合の委任状の記載例」や、神田公証役場「委任状・役職証明・Declarationサンプル」の「定款認証の委任状」などをご参考ください。

(※15)申告書の書式及び関連するQ&Aは、日本公証人連合会「定款認証」をご参照ください。

(※16)金融機関で口座開設する際に、この証明書の提出を求められることがあるので必ず発行してもらいましょう。

認証用の定款等の準備

公証人による認証を予約した日時までに、次表3の書類を準備します。尚、印鑑証明書、登記事項証明書は、全て発行後3ヶ月以内のものである必要があります。

【表3】定款認証の際に持参する書類

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1. 定款3通(※17 )(発起人全員の押印済のもの)
2. 発起人全員の印鑑証明書(※18)(法人の場合は、代表者印の印鑑証明書及び登記事項証明書)
3. 欠席する発起人の委任状(※19)
4. 出席する発起人及び代理人の本人確認書類(※20)
5. 実質的支配者の申告書及び実質的支配者の本人確認資料(※21)

(※17)公証役場用原本1通、会社保管用原本1通、設立登記の申請用謄本1通の計3通。もし、追加の謄本が必要ならその分も準備する。また、各通とも訂正が必要な場合に備えて、末尾欄外などに発起人全員の訂正印(捨印)を押印するのが通例です。

(※18)発起人が個人の場合で印鑑登録を行なっていない場合(又は印鑑証明書を使用しない場合)は、定款への押印に実印の代わりに認印を使用すること、あるいは記名押印の代わりに署名することも可能です。その場合は、印鑑証明書の代わりに運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど顔写真付きの身分証明書を用意します。但し、欠席する発起人の委任状には実印の押印が必要なので、実印を使わない発起人は認証手続への出席が必要になります。

(※19)委任状の書式等については、認証を依頼する公証役場の指示に従うことになりますが、例としては、渋谷公証役場「委任状サンプル集」の「紙定款の認証を受ける場合の委任状の記載例」や、神田公証役場「委任状・役職証明・Declarationサンプル」の「定款認証の委任状」などをご参考ください。

(※20)運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど顔写真付きの身分証明書(又は、印鑑証明書+実印)

(※21)住民票の写し、運転免許証の写し(表裏ともコピーし、本人が「原本と相違ない。」と記載し、記名する)など

定款は、3通とも各ページの間に割印(契印)するか、袋とじにして綴じ目に割印(契印)します。割印(契印)の仕方については、以下のリンクが参考になります。

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京橋公証役場 「各ページに割印(契印)するサンプル例」
京橋公証役場 「袋綴じの方法」

公証役場での手続

認証には、以上の書類に加え、次表4の収入印紙、手数料を用意し、出席する発起人全員で公証役場を訪問します。

【表4】定款認証に必要な手数料等

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4万円の収入印紙(※22)
認定料資本金の額等(※23)認定料
100万円未満3万円
100万円以上、300万円未満4万円
300万円以上5万円
謄本用紙代謄本1通あたり250円 × (謄本1通の用紙枚数+1枚(奥書分))

(※22)最終的に公証役場用原本に貼って提出ます。収入印紙は公証役場では売ってない場合が多いので、事前に郵便局などで購入しておきましょう。また、収入印紙は定款へ貼らずに持っていき、公証人の確認を受けてから貼るのが良いでしょう。

(※23)株式会社の場合、定款に記載された「資本金の額」。定款に記載がない場合は、「設立に際して出資される財産の価額」。定款に「設立に際して出資される財産の最低額」が記載されている場合は、認定料は5万円になります。

公証人による認証手続ののち、定款2通(会社保管用原本と申請用謄本)及び「実質的支配者に関する申告受理及び認証証明書」を受領します。

(4)発起人(会)の同意、決議

発起人会の開催は任意ですが、会社法等の規定により会社設立にあたって発起人全員の同意又は過半数の決議が必要となる項目があります。これらの項目について定款で定めなかった場合は、別途、同意書又は決議書(※24)を作成し、会社設立の登記申請の際に添付書類として提出する必要があります。具体的には、次表5の項目について随時(「同意、決議の時期」のタイミングで)合意、書面作成しておきます。

(※24)発起人全員による合意を「同意書」、過半数による決議を「決議書」、発起人が単独の場合はともに「決定書」などと呼ぶのが一般的です。発起人の決議書を発起人会議事録などとする場合もあります。

【表5】発起人の同意書等

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項目決議要件登記申請時の添付書類同意、決議の時期根拠規定
発行可能株式総数発起人全員の同意発起人の同意書
(発起人が単独の場合は決定書)
登記申請までに会社法37条
設立時発行株式に関する事項(※25)出資の履行までに会社法32条
設立時取締役等の選任(※26)発起人の議決権の過半数による決議発起人の決議書
(発起人が単独の場合は決定書)
出資の履行後、登記申請までに会社法38条、同40条
本店の所在場所(※27)設立登記申請までに民商通達(※29)
支店の所在場所(※28)
支配人の選任(※28)
株主名簿管理人の決定(※28)

(※25)次の3項目:(1)発起人が割当てを受ける株式数、(2)発起人が(1)と引換えに払い込む金額、(3)資本金の額(資本準備金を定める場合はその額も)

(※26)後述「(6) 機関の設置」ご参照。

(※27)所在場所とは地番まで含めた所在地のこと。定款で本店の所在地を最小行政区画までしか定めてなかった場合に決議が必要。

(※28)支店、支配人、株主名簿代理人を置く場合

(※29)平成18.3.31 民商782号通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」第2部第1.1.(9)

同意書等の記載例は法務局 「商業・法人登記申請手続」(※30)を、一人会社の場合は法務省「一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!」(※31)もご参照ください。これらの書面には基本的に押印不要です(詳細は、後述「(8) 設立の登記」、「申請書、添付書類の押印の要否について」ご参照)が、登記所によっては記名だけでなく押印も求めるところもあるようです。従って、手続にあたっては、管轄の法務局に確認しておくことをお勧めします。

(※30)リンクを開き、「その他の会社・法人の登記をしたい方は以下の法人種別の中から選択」という表記の下の「株式会社」を選択。その後「設立」→「取締役会を設置する会社」、「取締役会を設置しない会社」のいずれかを選択し、「株式会社設立登記申請書」→「記載例」をクリックすると設立登記申請書の記載例が表示されます。その添付書類の中に「設立時発行株式に関する発起人の同意書」等の記載例があります。

(※31)オンライン申請の説明サイトですが、「3 添付書面情報の添付」以下で、WORD、一太郎それぞれで同意書等の作成例が公開されています。

(5)出資の履行

定款の認証が終わったら、速やかに資本金の払込みを行います。一般に、払込みは、発起人のうち1人の(個人名義の)預金口座へ、出資者全員がそれぞれの出資分全額を振り込みます(※32)。払込みを行う発起人の口座は、新規に作成しなくても構いませんが、私的な資金と区別するために専用の口座を開設できればベターでしょう。(会社名義の口座は、会社設立後に別途開設します。)

金銭以外の財産出資(現物出資)がある場合は、別途同時にその給付を行います(※33)

(※32)厳密に言えば、払込先の口座は1つに限らないなどいろいろ手法はありますが、ここでは一般的な手続きを説明します。

(※33)現物出資には裁判所が選任する検査役による調査が必要です(現物出資財産の総額が500万円以下など、一定の場合を除く)。検査役の調査手続は、手間がかかるため一般には回避すべきであり、本サイトでもカバーしません。

払込みを証する書面の作成

払い込みが完了したのち、振込がなされた口座の通帳の写し又は取引明細書に、会社代表者による「払込みを証する書面」を付して会社設立の登記申請の際に添付書類とします。通帳の写し又は取引明細書は、金融機関名、店名、口座番号及び口座名義人と、全出資者が振り込んだ取引明細の記載があるページのコピーが必要です。「払込みを証する書面」の記載例は法務局 「商業・法人登記申請手続」(※34)をご参照ください。 尚、令和2年以降の政府全体の規制改革に伴い「払込みを証する書面」への押印(及び通帳の写し等を綴じる際の契印)は原則不要となりました(※35)ので、「払込みを証する書面」に通帳の写し等をホッチキス留め(定款作成と同様、左側二箇所)するだけで結構です。

(※34)リンクを開き、「その他の会社・法人の登記をしたい方は以下の法人種別の中から選択」という表記の下の「株式会社」を選択。その後「設立」→「取締役会を設置する会社」、「取締役会を設置しない会社」のいずれかを選択し、「株式会社設立登記申請書」→「記載例」をクリックすると設立登記申請書の記載例が表示されます。その添付書類の中に「払込みがあったことを証する書面の例」があります。

(※35)これに限らず、登記申請の添付書類の多くが押印不要となりましたが、中には引き続き押印が必要又は要請されるものもあります。詳細は、後述「(8) 設立の登記」、「申請書、添付書類の押印の要否について」ご参照。

現物出資がある場合に必要な書類

現物出資を伴う場合は、次表6の書類も設立登記申請の添付書類として必要になります。記載例は法務局 「商業・法人登記申請手続」をご参照ください(※36)。これらの書面にも原則押印は不要です。

(※36)リンクを開き、「その他の会社・法人の登記をしたい方は以下の法人種別の中から選択」という表記の下の「株式会社」を選択。その後「設立」→「取締役会を設置する会社」、「取締役会を設置しない会社」のいずれかを選択し、「株式会社設立登記申請書」→「記載例」をクリックすると設立登記申請書の記載例が表示されます。その添付書類の中に「財産引継書」及び「資本金の額の計上に関する証明書」の例があります。

【表6】現物出資の際の追加書類

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財産引継書財産を現物出資する出資者が、その給付を証する書面。
現物出資のある場合に、後述 (7)調査報告書 の別紙として作成します。
資本金の額の計上に関する証明書資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを、設立時代表取締役が証する書面。

(6)機関の設置

株式会社は、株主総会と取締役1名が最低限の機関として必要です(※37)。ここではその最低限のケースから、取締役会と監査役を設置するケースまでを想定して解説します。

(※37)株式会社の必須機関については、別記事「会社設立の事前準備」の「機関設計」の章をご参照ください。

設立時取締役等の選任

発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者)を選任しなければなりません(会社法38条1項)。また、設立する株式会社が監査役設置会社である場合には、設立時監査役(株式会社の設立に際して監査役となる者)を選任しなければなりません(同38条3項2号)。さらに、設立する株式会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は、3人以上でなければなりません(同39条1項)。
設立時取締役等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定しますが(同40条1項)、定款で設立時取締役等を定めた場合は、出資が完了した時にそれぞれ選任されたものとみなされます(同38条4項)。

設立時代表取締役の選定

設立時代表取締役の選定方法は、取締役会の有無によって異なります。

取締役会設置会社の場合

設立時取締役は、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定(互選)します(会社法47条1項)。この場合、設立時取締役の過半数をもって決定することとなりますが(同47条3項)、次の方法による選定も許容されると解されています。尚、互選とは、メンバーの中から選び出すことをいいます。

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・定款に設立時代表取締役の氏名を直接記載する方法
・定款に発起人の互選による旨の規定を置き、発起人が互選(議決権の過半数による決議)する方法
取締役会非設置会社の場合

この場合、設立時代表取締役の選定方法について条文上の規定はありませんが、次の方法によって選定できると解されています。尚、特段の選定がされない場合は、設立時取締役全員が設立時代表取締役となります(会社法349条の解釈)。

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・発起人の互選(議決権の過半数による決議)による方法
・定款に設立時代表取締役の氏名を直接記載する方法
・定款に設立時取締役の互選による旨の規定を置き、設立時取締役が互選する方法

設立時取締役等、及び設立時代表取締役の選任(選定)決議書の記載例は、法務局 「商業・法人登記申請手続」(※38)を、一人会社の場合は法務省「一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!」(※39)もご参照ください。これらの書面も原則的には押印不要ですが、実務上は押印を要請されるケースが多くあります。詳細は、後述「(8) 設立の登記」、「申請書、添付書類の押印の要否について」ご参照。

(※38)リンクを開き、「その他の会社・法人の登記をしたい方は以下の法人種別の中から選択」という表記の下の「株式会社」を選択。その後「設立」→「取締役会を設置する会社」、「取締役会を設置しない会社」のいずれかを選択し、「株式会社設立登記申請書」→「記載例」をクリックすると設立登記申請書の記載例が表示されます。その添付書類の中に「設立時取締役選任の決議書」等の記載例があります。

(※39)オンライン申請の説明サイトですが、「3 添付書面情報の添付」以下で、WORD、一太郎それぞれで決議書の作成例が公開されています。

就任承諾書の作成

会社と役員の関係は委任契約に基づくため、原則、被選任者から就任承諾書を得る必要があります。就任承諾書の記述例は、法務局 「商業・法人登記申請手続」を(一人会社の場合は法務省「一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!」も)ご参照ください。尚、設立時取締役等について定款への記載により選任する場合や、選任決議書に就任承諾の記載を行うことによって、就任承諾書を省略できる場合もあります。就任承諾書の要否ついては、後述「(8) 設立の登記」、表13及び表14をご参照ください。

(7)調査報告書の作成

設立時取締役(設立する株式会社が監査役設置会社である場合には、設立時取締役及び設立時監査役)は、その選任後遅滞なく,下表7に掲げる事項を調査しなければなりません(会社法46条1項)。調査報告書は、現物出資がある場合のみ、設立登記申請の添付書類として提出が必要になります。現物出資がない場合には、社内保存用に作成するだけで完了です。設立登記申請に添付する調査報告書の記載例は、法務局 「商業・法人登記申請手続」をご参照ください。

【表7】設立時取締役等の調査報告事項

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1500万円以下の現物出資又は市場価格のある有価証券による現物出資において、定款の記載及び記録された価額が相当であること(※40)
2現物出資において、定款の記載及び記録された価額が相当であることについて弁護士等専門家の証明を受けた場合、その証明が相当であること(※40)
3出資の履行が完了していること
4株式会社の設立手続が法令又は定款に違反していないこと

(※40)これらの場合、現物出資であっても裁判所が選任する検査役による調査が不要になります。

現物出資があって設立登記申請に添付する場合、前述の表6にある「財産引継書」を調査報告書の別紙として一緒に添付します。これらの書面への押印も原則不要です。

(8)設立の登記

さて、いよいよ株式会社設立の最後の手続として、設立登記申請書を完成し添付書類を整えて申請を行います。そして、株式会社はこの設立の登記をすることによって成立することになります(会社法49条)(※41)

申請書類のドラフト段階では、この章までの記述をもとに申請書及び添付書類のドラフトを完成し、押印箇所には鉛筆でマーク(実印、認印の別も)した上で、登記所に確認することをお勧めします。

(※41)申請日が会社設立日になるので、日にこだわる場合はご注意ください。但し、土日祝日など法務局が閉まっている日は選択できません。

申請期限

株式会社の設立登記は、一定の日から2週間以内に行う必要があります。一定の日とは、発起設立の場合、①設立時取締役等による調査完了の日(上記「(7)調査報告書の作成」の作成日)、又は②発起人が定めた日、のいずれか遅い日となっています(会社法911条1項)。実務上は、①の日から2週間以内に申請するのが通常です。(②を基準とする場合、「発起人が定めた日」がわかる書面を登記申請書に添付する必要があります。)

登記すべき期限を過ぎた場合、申請自体は受理されますが100万円以下の過料が課される可能性があるので注意が必要です(同976条1項)。

申請先・申請方法

・申請先は、本店所在地の管轄法務局(※42)です。

(※42)法務局の管轄は、法務局「管轄のご案内」をご参照。管轄は、取扱い業務や地域により(定款認証の公証役場の選択の際に参照する法務局の管轄より細かく)分かれているのでご注意ください。例えば、東京都港区の場合、東京法務局港出張所になります。

・申請は、すべて書面(窓口又は郵送)にて行う方法と、オンラインを利用する方法があります。

・窓口にて申請する場合には、申請人の代表者又は代理人が登記申請書に必要な書面を添付し提出します。(オンラインの利用については、以下のコラムをご参考ください。)

ご参考:オンラインの利用について

オンラインの利用には、「登記・供託オンライン申請システム」により、以下3通りの方法があります。

【表8】「登記・供託オンライン申請システム」を利用した登記申請方法

① 書面による登記申請の一部をオンラインで実施する(登記すべき事項のオンライン提出)
② 書面による登記申請の一部をオンラインで実施する(QRコード付き書面申請)
③ オンラインによる登記申請

表8の①、②は、基本的には窓口での書面申請ですが、一部をオンラインによって提出することで、その後の処理状況もオンラインでフォローすることができるサービスです。③に比べて利用要件も軽い割に、オンラインで状況フォローができる点がメリットですが、申請書の提出は窓口で行うことになります。

③は全てオンラインで手続するものですが、利用要件やシステム操作のハードルが若干高くなっています。このオンラインによる登記申請は、先に述べた電子定款の作成(「(2) 定款の作成」ご参照)から、同じ「登記・供託オンライン申請システム」によって一連の手続で行えるようになっていますが、電子定款の作成と登記申請の提出のどちらか一方だけオンラインで行うことも可能です。但し、どちらも同じシステム要件を満たす必要があるので、電子定款を作成した場合は続けてオンラインによる申請を行うのが普通です(敢えて定款の謄本等を取得して書面申請に添付することは可能ですが)。逆に、書面で定款を作成した場合も、登記申請だけオンラインで行うことも可能です(この場合、他の添付書類と同様、書面の定款をPDF化して電子署名を添付する必要があります)。

これらオンラインの利用要件等については、別記事「商業登記関係のオンラインサービス」をご参照ください。

 

以下では、全て書面にて申請を行う場合を前提に解説を続けます。

設立登記申請書

設立登記申請書には、法定記載事項(※43)を含め次表9の項目を記載します。書面について決まったフォームはありませんが、必要事項を横書きで書いて作成します。記載例は、法務局 「商業・法人登記申請手続」をご参照ください。

(※43)商業登記法17条2項。

【表9】設立登記申請書の記載事項

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(1) 商号(片仮名でフリガナをつける。)
(2) 本店の所在場所(住居表示上の地番まで記載。)
(3) 登記の事由(通常は、「令和○年○月○日発起設立の手続終了」のように記載。)
(4) 登記すべき事項(後述ご参照。)
(5) 課税標準金額(資本金の額)
(6) 登録免許税(資本金の額の1,000分の7の額。100円未満切捨て。但し、最低15万円。)
(7) 添付書類(添付する書類名と通数を記載。後述ご参照。)
(8) 申請の年月日
(9) 申請人の商号、住所、及び設立時代表取締役の氏名、住所(代理人により申請する場合はその氏名、住所を追記)
(10) 連絡先の電話番号(法定記載事項ではないが、記載するのが一般的です。)
(11) 登記所の表示(提出する登記所を記載。)

申請書には、設立時代表取締役又は代理人が記名押印します(詳細は、後述表15ご参照)。

登記すべき事項

表9、設立登記申請書の記載事項の一項目である「(4) 登記すべき事項」には、法定の項目を記載します。この法定記載事項は、機関設計等によって多岐に渡ります(※44)が、取締役会と監査役を置く株式会社の場合、最低限の項目は次表10のとおりです。また、書面での登記申請書における「登記すべき事項」の提出方法には、下表11にあるように4通りの方法があります。

(※44)全ての法定記載項目は、会社法911条3項をご参照。

【表10】「登記すべき事項」の記載項目

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(1) 目的
(2) 商号
(3) 本店及び支店の所在場所(住居表示上の地番まで記載。)
(4) 資本金の額
(5) 発行可能株式総数
(6) 発行する株式の内容
   ・定款に株式譲渡制限の規定があるときは、その内容
(7) 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
(8) 取締役の氏名
(9) 代表取締役の氏名及び住所
(10) 取締役会設置会社であるときは、その旨
(11) 監査役設置会社であるときは、その旨及び次に掲げる事項
   (イ) 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるときは、その旨
   (ロ) 監査役の氏名
(12) 支配人の氏名及び住所、支配人を置いた支店(支配人を置いた場合に記載。)
(13) 公告をする方法(定款で特段の定めのない場合は、官報で公告する旨。)
(14) 登記記録に関する事項(「設立」と記載。)

【表11】「登記すべき事項」の記載、提出方法

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① 別紙にて提出申請書の「登記すべき事項」欄には「別紙の通り」と記載し、別紙に登記すべき事項を記載して申請書に添付
② CD-R等にて提出(※45)申請書の「登記すべき事項」欄には「別添CD-Rの通り」などと記載し、CD-R等に登記すべき事項を記録して申請書と一緒に提出
③ オンラインにて提出(※46)「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、先述表8に示した「QRコード付き書面申請書」又は「登記すべき事項のオンライン提出」にて提出
④ 申請書に直接記載(※47)登記申請書の「登記すべき事項」欄に登記すべき事項を直接記載して提出

(※45)CD-R以外でもDVD-Rなど日本産業規格X0606形式又はX0610形式に適合する120mm光ディスクであれば良い。詳しくは法務省「登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」ご参照。

(※46)先述の表8に示した①、②方法により登記すべき事項事前にオンラインで送付するものです。詳細は別記事「商業登記関係のオンラインサービス」をご参照。

(※47)登記申請書が冗長になってしまうので、あまりお勧めできません。

添付書類

設立登記申請書の添付書類については、これまで各章で個別に触れてきましたが、一覧表にすると下表12のとおりです。これまで説明に従い必要なものを添付します。

【表12】設立登記申請書の添付書類一覧

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添付書類関連の章
1定款(公証人の認証済の謄本)(2) 定款の作成、(3) 定款の認証
2発起人の同意書、決議書(4) 発起人(会)の同意、決議
① 発行可能株式総数
② 設立時発行株式に関する事項(※48)
③ 設立時取締役等の選任(6) 機関の設置
④ 設立時代表取締役の選定(6) 機関の設置
⑤ 本店の所在場所
その他
3設立時取締役等の就任承諾書(6) 機関の設置
4設立時代表取締役の就任承諾書(6) 機関の設置
5印鑑証明書、本人確認証明書(設立時役員等のもの)後述ご参照
6設立時取締役等の調査報告書及びその附属書類(※49)、前述表6の「財産引継書」(7) 調査報告書の作成、(5) 出資の履行
7払込みを証する書面(5) 出資の履行
8資本金の額の計上に関する証明書(5) 出資の履行
9委任状(代理人に申請を委任する場合)

(※48)次の3項目:(1)発起人が割当てを受ける株式数、(2)発起人が(1)と引換えに払い込む金額、(3)資本金の額(資本準備金を定める場合はその額も)

(※49)表7の項目1で有価証券による現物出資がある場合は有価証券の市場価格を証する書面、同項目2で弁護士等の専門家の証明を受けた場合はその書面及び附属書類を添付する。

表12の各書面の説明、記載例については既に各章で述べた通りですが、設立時役員関係の書類について補足しておきます。設立時役員に関しては、その選任、選定に関する書類(表12の2, ③, ④)、役員の承諾書(同3, 4)、さらに役員の本人確認書類等(同5)などがありますが、どれが添付書類として必要となるかは、役員の選任・選定方法、対象者が発起人かどうか、及び取締役会の有無によって違いがあり、実務者にとってはわかりにくいポイントになっています。その違いを下表13、14にまとめましたので、ご参考ください。例えば、取締役会非設置会社が設立時取締役を発起人の互選(発起人の中から議決権の過半数で決議)により選任する場合は、選任決議書、被選任者の就任承諾書と被選任者の印鑑証明書を添付書類として用意します。同じケースでも取締役会設置会社の場合は、印鑑証明書の代わりに本人確認書類の添付でも構いません。(書面への押印については後述します。)

【表13】設立時取締役、設立時監査役の選任方法と添付書類

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取締役会非設置会社 取締役会設置会社
選任方法 添付書類 選任方法 添付書類
設立時取締役発起人の中から選任する場合
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書(※50)
印鑑証明書
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書(※51)
本人確認書類(※52)
定款に記載無し定款に記載無し
発起人以外から選任する場合
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書
印鑑証明書
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書
本人確認書類(※52)
定款に記載就任承諾書
印鑑証明書
定款に記載就任承諾書
本人確認書類(※52)
設立時監査役発起人の中から選任する場合
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書(※51)
本人確認書類(※52)
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書(※51)
本人確認書類(※52)
定款に記載無し定款に記載無し
発起人以外から選任する場合
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書
本人確認書類(※52)
発起人の議決権の過半数による決議選任決議書
就任承諾書
本人確認書類(※52)
定款に記載就任承諾書
本人確認書類
定款に記載就任承諾書
本人確認書類(※52)

(※50)選任決議書に被選任者が就任承諾した旨の記載があり、その者の住所の記載及び記名があり選任決議書にその者の実印が押印してある場合は、就任承諾書の作成は不要。その場合、申請書には、「就任承諾書は、設立時取締役選任決議書の記載を援用する。」などと記載する。

(※51)選任決議書に被選任者が就任承諾した旨の記載があり、その者の住所の記載及び記名がある場合は、就任承諾書の作成は不要。その場合、申請書には、「就任承諾書は、設立時取締役選任決議書の記載を援用する。」などと記載する。

(※52)本人確認証書類は、印鑑証明書のほか、住民票記載事項証明書、運転免許証のコピー(裏面もコピーし、本人が原本と相違ない旨を記載して記名したもの)等でも可。詳細は、法務省「添付書面としての本人確認証明書及び旧氏の併記について」ご参照。

【表14】設立時代表取締役の選定方法と添付書類

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取締役会非設置会社 取締役会設置会社
選定方法 添付書類 選定方法 添付書類
発起人の互選(議決権の過半数による決議)選定決議書
就任承諾書(※53)
設立時取締役が互選選定決議書
就任承諾書(※54)
印鑑証明書
定款に記載無し定款に記載無し
定款に設立時取締役の互選による旨の規定を置き、設立時取締役が互選選定決議書
就任承諾書(※53)
定款に発起人の互選による旨の規定を置き、発起人が互選(議決権の過半数による決議)選定決議書
就任承諾書(※54)
印鑑証明書

特に選定なし(取締役全員が代表権を持つ)
無し

(※53)選任決議書に被選任者が就任承諾した旨の記載及び記名がある場合は、就任承諾書の作成は不要。その場合、申請書には、「就任承諾書は、設立時代表取締役選定決議書の記載を援用する。」などと記載する。

(※54)選任決議書に被選任者が就任承諾した旨の記載があり、選任決議書にその者の実印が押印してある場合は、就任承諾書の作成は不要。その場合、申請書には、「就任承諾書は、設立時代表取締役選定決議書の記載を援用する。」などと記載する。

申請書、添付書類の押印の要否について

これまで、いろんな書類の記載例を紹介してきましたが、書類によって押印マークがあるものとないものがあることにお気づきの方もいらっしゃるかと思います。ここではその点について説明します。

従来は、商業登記申請に関する書面には基本的に全て実印等による押印を行なう必要がありましたが、最近になって、オンライン手続の進展に伴い会社の代表者印(会社の実印)の届出が任意となったり(令和3年2月15日施行、商業登記規則の改正)、さらに政府の“脱ハンコ”政策の推進により、商業登記関係の押印規定に関しても全面的な見直しがなされています。結果、書面による設立登記申請においても、法令に押印規定のある場合を除き、原則(法的には)、押印は不要ということになっています(※55)。この新たな基準に基づき、これまでに出てきた書類の押印の要否をまとめたのが下表15です。

(※55)詳細は、「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(通達)」(令和3年1月29日法務省民商第10号)などをご参照。

【表15】設立登記申請書類への押印の要否について

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書類押印の要否根拠法規
原始定款発起人全員の記名押印(実印又は認印、法人の場合は代表者印)、又は署名会社法26条1項
設立登記申請書設立時代表取締役の記名押印(登記所へ届け出る代表者印)、又は代理人の記名押印(認印)商業登記法17条2項 
商業登記規則35条の2、1項
委任状(表3の3の書類)発起人の押印(実印、法人の場合は代表者印)公証人法62条の3、同60条、同32条
委任状(表12の9の書類)設立時代表取締役の押印(登記所へ届け出る代表者印)商業登記規則35条の2、2項
就任承諾書
(取締役会非設置会社の場合)
設立時取締役のみ実印による押印(※56)商業登記規則61条4項
就任承諾書
(取締役会設置会社の場合)
設立時代表取締役のみ実印による押印(※57)商業登記規則61条4項、5項
その他、表12に掲げた書類押印不要
尚、契印、訂正印(捨印)については、書面自体に押印が必要なものに限り押印が必要です。
また、運転免許証の写しなどの本人確認証明書に「原本と相違ない」旨の記載及び記名(いわゆる原本証明)をする際にも押印は不要です。

(※56)取締役会非設置会社の設立時監査役、設立時代表取締役の就任承諾書には原則押印不要です。

(※57)取締役会設置会社の設立時取締役、設立時監査役の就任承諾書には原則押印不要です。

押印についてのルールは以上の通りですが、実際のところは「本人意思の確認」、「コンプライアンス上」などといった理由で、押印を求める運営(認印で可とする場合も含め)がなされているケースが多くあります。実際には、申請書類のドラフトができた段階で、管轄の登記所に確認しておく必要があるでしょう。

印鑑届書

先ほど、脱ハンコ政策に伴い会社の実印の届出が任意になったと述べましたが、書面にて設立登記申請を行う場合、申請書への押印は、登記所へ届出を行う印鑑によって押印しなければなりません(※58)。従って、登記申請書の提出と同時に印鑑届書を管轄法務局へ提出する必要があります。印鑑届書の記載例は、法務局 「商業・法人登記申請手続」をご参照ください。

(※58)設立登記申請書以外にも様々な書面に会社の代表者印(実印)が必要となる場面は多く、従って仮にオンライン申請で設立登記を行う場合でも印鑑届は必須と言えます。尚、オンラインによる設立登記申請では同時に印鑑届も行えるようになっています。

以上で、株式会社の設立手続は完了です。まずは、ここまでの内容を反映した各書類(申請書、登記すべき事項(別紙など)、添付書類、印鑑届書)をドラフトとして準備し、登記所へ相談、確認を行なった後に正式な書類として整えて提出すると良いでしょう。これまで、各所で述べてきたとおり、押印の有無など、登記所によって異なる運営がなされている場合がありますので注意が必要です。登記所での相談では、押印の有無(実印・認印の別、契印、捨印など)のほか、日付のチェック(漏れ、前後関係など)、及び書類の綴り方について確認することをお勧めします。登記所での相談は、通常、事前に予約が必要です。また、相談には時間制限もあるので、ドラフト書類は一式整理してから臨むようにしましょう。

設立登記申請後の手続

設立登記と印鑑登録が完了したら、次に印鑑カードを作成しましょう。印鑑カードとは、法務局の窓口で会社の印鑑証明書を取得する際に必要なもので、作成するには設立登記が完了した後、管轄の法務局へ印鑑カード交付申請書を提出します(10分程で受け取ることができます)。また、その際、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と(印鑑カード取得後に)印鑑証明書も4、5通ほど取得すると良いでしょう。これらは今後、銀行口座開設、都道府県税事務所への設立届や社会保険手続などに必要となります。登記事項証明書と印鑑証明書は、オンラインサービス「かんたん登記申請」等でも入手できますが、利用要件(別記事「商業登記関係のオンラインサービス」ご参照)を満たす必要があります。

以上