MENU

扶養控除等(異動)申告書について

初回出稿日:2024年 4月15日

最新更新日:2024年10月22日

この記事のキーワード

扶養控除等(異動)申告書

扶養控除(給与所得者の) 障害者控除(給与所得者の) 

寡婦控除(給与所得者の) ひとり親控除(給与所得者の) 勤労学生控除(給与所得者の)

本記事では、給与所得者が扶養控除などの所得控除を受けるために必要な、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について解説します(※1)

【図1】申告書の雛形

(※1)正式なフォーマットは、国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」から入手できます。

申告書の概要

本申告書は、毎年(暦年ベースで)最初の給与支払を受ける日の前日までに、給与所得者から給与支払者に提出します。扶養親族がいない人も提出する必要があります。中途採用の場合は採用後最初の給与支払を受ける日の前日までに提出します。また、内容に異動があった場合は、異動後最初の給与支払を受ける日の前日までに再提出します。

対象者が、2ヶ所以上から給与を受ける場合には、主たる給与の支払者に対してのみ提出します(※2)

本申告書は、事業者(給与支払者)において、主に以下2つの手続に利用します。

  • 給与計算や賞与計算の際には、本申告書をもとに源泉控除する所得税を計算するのに必要な「扶養親族等の数」を求めます(※3)
  • 年末調整においては、最新の現況を反映した本申告書に基づいて扶養控除等の確定を行います。

以上2点については、次章でより詳しく説明します。

また、本申告書は、個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」を兼ねています(申告書の1番下の部分)。

本申告書は、本来、税務署長及び市区町村長へ提出するものですが、提出を求められる場合以外、給与の支払者が保管しておきます。(申告書の内容は、年末調整後の法定調書として税務署や市区町村へ報告しますが、申告書自体を直接提出する必要はありません。)

(※2)1ヶ所から受ける給与だけでは全額が控除しきれない場合には、源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族を分けて他の給与の支払者に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出することができます。

(※3従って、本申告書は、ルール上は給与支払日の前日までに給与支払者へ提出すればよいものですが、実務上は、給与計算等のために余裕を持って回収すべきです。

申告書の活用方法

次に、本申告書の主な活用例として、①給与計算、賞与計算における源泉所得税の算出に必要な「扶養親族等の数」の求め方、及び、②年末調整における扶養控除等の求め方について、概要を説明します。

ここでは、本申告書がどのように活用されるのかを例示し、本申告書の意義を理解することを第一の目的としています。従って、計算の詳細には捉われず、まずは本申告書の利用目的をご理解いただければと思います。(具体的な計算は、給与計算や年末調整に関する記事をご参照ください。)

一方で、給与計算や年末調整の際には、本申告書で使われている控除対象者等に関する定義を理解しておく必要があります。本申告書の裏面にあるこれらの定義は一見複雑で理解が難しいかもしれませんが、以下に述べる2つの利用方法を意識しておけば理解の助けになると思います。

「扶養親族等の数」の求め方

毎月の給与や賞与支払時に源泉控除する所得税を計算するために、本申告書の内容から「扶養親族等の数」を求めますが、それは以下の方法によります(※4)

「扶養親族等の数」のカウント方法

基本的には、本申告書にある「源泉控除対象配偶者」(申告書のA欄)と「控除対象扶養親族」(申告書のB欄)の合計数を「扶養親族等の数」とします。但し、以下の加算が適用されます(申告書のC欄による加算)。

  • 所得者本人が、①「障害者」(「特別障害者」を含む)、②「寡婦」又は「ひとり親」、③「勤労学生」に該当する場合、その該当する数を加算。(例)3つとも該当する場合は+3人
  • 所得者の「同一生計配偶者」や「扶養親族」(年齢16歳未満の人を含む)のうちに「障害者」(「特別障害者」を含む)又は「同居特別障害者」に該当する者がいる場合には、その該当する人数を加算。

(※4)以下、控除対象者等に関する多くの”専門用語”が出てきますが、その定義は本申告書の裏面をご参照ください。また、具体的な計算例は、給与計算に関する「控除項目の計算」、及び「賞与計算」の各記事で解説します。

扶養控除等の求め方

年末調整においては、本申告書の内容から以下の通り控除対象者ごとに所得控除額を計算します(※5)

スクロールできます
控除の種類控除対象者控除額
扶養控除(※6)一般の控除対象扶養親族(※7)1人につき、380,000円
特定扶養親族1人につき、630,000円
老人扶養親族同居老親等以外の者1人につき、480,000円
同居老親等1人につき、580,000円
障害者控除(※8)一般の障害者(※9)1人につき、270,000円
特別障害者1人につき、400,000円
同居特別障害者1人につき、750,000円
寡婦控除寡婦(※10)270,000円
ひとり親控除ひとり親(※10)350,000円
勤労学生控除勤労学生(※10)270,000円

(※5)ここでも各控除対象者の定義は、本申告書の裏面をご参照ください。また、具体的な計算例は、年末調整に関する記事「年調年税額の計算」にて解説します。

(※6)この扶養控除の対象となる扶養親族には、配偶者が含まれない点にご注意ください。源泉所得税を計算する際の「扶養親族等の数」に源泉控除対象配偶者が含まれるのと違いがあります。配偶者に関する控除は別の申告書にて判定します(「基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除申告書について」ご参照)。

(※7)申告書裏面の定義で言えば、「控除対象扶養親族」であって、「特定扶養親族」又は「老人扶養親族」に該当しない人。

(※8)所得者本人、同一生計配偶者、扶養親族(16歳未満も含む)が障害者に該当する場合の控除。

(※9)申告書裏面の定義で言えば、「特別障害者」に該当しない「障害者」

(※10)所得者本人が該当する場合に適用されます。寡婦控除とひとり親控除は併用不可ですが、それ以外は(他の控除も含めて)併用可能です。例えば、所得者本人が「障害者、寡婦、勤労学生」あるいは「障害者、ひとり親、勤労学生」の場合は、それぞれ併用して適用することができます。また、老人扶養親族が障害者の場合、扶養控除と障害者控除を併用して適用することができます。

以上