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従業員等の産休後(育休取得、職場復帰)

初回出稿日:2025年1月18日

最新更新日:2025年1月27日

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育児休業給付金 出生後休業支援給付金 産前産後休業終了時改定 養育期間標準報酬月額の特例 育児時短就業給付金 育児休業等終了時改定

本記事では、(女性)従業員等(※1)の産前産後休業(以下、「産休」といいます)後に係る手続をカバーします(※2)。 産休後の従業員等の選択肢として以下の3つを想定し、それぞれ各章で解説していきます。

  1. 育児休業に入る場合
  2. 職場復帰する場合
  3. 育児休業を経て職場復帰する場合

(※1)以下、会社役員も含む場合は「従業員等」、含まない場合は「従業員」と表記します。本記事の手続のうち、労働基準法、雇用保険法、育児・介護休業法に基づくものは(会社役員を除く)労働者を対象とし、健康保険法、厚生年金保険法に基づくものは会社役員も対象とするため、意図的に使い分けます。

(※2)本記事でカバーする手続には産休後の女性従業員等以外にも適用できるものもありますが、本記事では産休後の女性従業員等を対象に想定して解説していきます。配偶者の出産に係る男性従業員等の手続は別記事「従業員等の配偶者の出産、及び出産後」をご参照ください。

1. 育児休業に入る場合

(1) 育児休業とは

子を養育するための休業で、育児・介護休業法(※3)に基づく申出が該当する従業員(労働者)からあった場合には、事業主は、原則、これを認める義務があります。育児・介護休業法に基づく育児休業の期間は、原則、子が1歳に達するまで(※4)ですが、保育所に入れないなど一定の理由のある場合は、子が1歳6ヵ月になるまで延長可能です。さらに1歳6ヶ月以後も保育所等に入れないなどの場合には、最長、子が2歳になるまで延長が可能です。育児休業は、特別な事情のない限り、1人の子につき1歳までに2回、1歳6ヶ月及び2歳までに各1回取得することができます(※5)

パパ・ママ育休プラス(通称)

パパ・ママ育休プラスとは、両親が共に育児休業を取得する場合であって以下の要件を全て満たすときに、後から育児休業を取得する親(育休プラスの対象者)の育児休業の上限が、子の年齢が1歳2ヶ月まで延長される特例制度です。

(以下の要件では、育休プラスの対象者を「本人」、その配偶者を単に「配偶者」と呼びます。)

  • 配偶者が、子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
  • 本人の育児休業開始予定日(※6)が、子の1歳の誕生日以前であること
  • 本人の育児休業開始予定日(※6)は、配偶者の育児休業の初日以降であること

パパ・ママ育休プラスを適用する場合においても、各親が育児休業を取得できる期間は、原則(産後休業、出生時育児休業(※7)を含め)合計1年間です。また、パパ・ママ育休プラスにおいても、保育所に入れないなど一定の理由のある場合は、子が1歳6ヵ月(さらに2歳)になるまで育児休業を延長可能です。

(※3)正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。

(※4)夫婦が共に育児休業を取得する場合で、条件が合えば、子が1歳2ヶ月に達するまで父母それぞれが上限1年休業できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。

(※5)さらに詳しくは厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」の育児休業制度に関する解説を参考ください。

(※6)育児休業は子が1歳までに2回まで取得できますが、2回目の育児休業の場合は2回目の育児休業開始予定日で判断します。

(※7)令和4年10月施行の改正で創設された制度で、子の出生後8週間以内に、産後休業していない労働者が4週間まで取得できる休業です。夫の育休取得促進を目的としていますが、養子の場合などは女性も休業の対象となります。通帳産後パパ育休呼ばれています

(2) 社会保険料の免除申請

3歳未満の子を養育するために、育児休業(以下、「育休」といいます)又は育休に準ずる措置による休業(※8)(以下、合わせて「育休等」といいます)を取得中の被保険者(※9)については、事業主の申出によって社会保険料(健康保険料(介護保険料を含む)及び厚生年金保険料)が、被保険者負担分、事業主負担分とも免除されます。尚、産休中の社会保険料免除は会社役員も対象ですが、育休等の場合は会社役員は対象外になります(※10)

  • 社会保険料が免除される期間は、育休等を開始した日の属する月から、育休等を終了する日の翌日の属する月の前月までで(※11)、この間、有給、無給であるかは問いません。また、賞与(支給される場合)にかかる保険料も免除されます(※12)。免除期間中も健康保険の被保険者資格に変更はなく、厚生年金保険も保険料を納めた期間として扱われます。
  • 免除を受けるには、協会けんぽの場合、事業主が「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を所轄の年金事務所へ提出します。申出書の提出は、対象者の育休等取得中又は育休等終了後1ヶ月以内に行わなければなりません。申出書の書式及び記入例は日本年金機構「育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」から入手可能です。e-Gov による電子申請も可能です。健康保険組合の場合は、各健康保険組合へご確認ください。
  • 申出書を提出した後、育休等の終了予定日を延長する場合、或いは予定より早く育休等を終了した場合は、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を再度提出しなければなりません。従って、二度手間を避けるには、育休等終了後に申出書を提出するのが良いでしょう。
  • また、申出書は以下の期間ごとにそれぞれ分けて提出する必要があります。
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1歳未満の子を養育するための育休(出生時育児休業(産後パパ育休)を含む)
保育所待機等の特別な事情がある場合の1歳から1歳6ヶ月に達するまでの育休
保育所待機等の特別な事情がある場合の1歳6ヶ月から2歳に達するまでの育休
1歳から3歳に達するまでの子を養育するための育休に準ずる措置による休業(※6)
  • 申出書を提出すると、毎月事業主へ届く保険料納入告知書に免除内容が反映されます。申出書提出のタイミングによって保険料納付額集計の締めに合わない場合は、以降の告知書にて差引額として反映されます(※11)

(※8)育児・介護休業法に基づく「育児休業に準ずる措置による休業」を就業規則等で規定した場合も社会保険料の免除対象となります。

(※9)健康保険の一般被保険者が対象です(健康保険の被保険者の区分は「社会保険の適用基準」をご参照)。

(※10)育休等の場合は、育児・介護休業法に規定する育休等を取得中の労働者が対象であり、同法は会社役員は対象外のため。一方、産休の場合は、産休の定義が(労働基準法に加えて)健康保険法、厚生年金保険法でも規定されており、(会社役員も含めた)被保険者に適用されます。

(※11)育休等開始日と終了日の翌日が同じ月の場合は、育休等日数が14日以上のときに限り免除されます。この場合、賞与に係る社会保険料は免除対象外です((※12)ご参照)。

(※12)賞与に係る社会保険料は、賞与支給月の末日を含む連続した1ヶ月を超える育休等を取得した場合に限り免除されます。

(※13)社会保険料の納付手続については「健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料の納付手続」をご参照。

(3) 雇用保険の育児休業給付金の申請

雇用保険の被保険者(※14)が育休を取得した場合には、一定の要件のもと雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

(※14)雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者が対象です(雇用保険の被保険者の区分は「労働保険の適用基準」をご参照)。雇用保険の被保険者でない会社役員は対象外です。因みに、育児休業給付金は夫や親も支給要件に該当すれば対象になりますが、本記事では出産を経た女性従業員を前提に解説しています。

育児休業給付金の支給要件

以下の要件を全て満たした場合に支給単位期間(※15)ごとに支給されます。

  • 雇用保険の被保険者であること(一般被保険者、又は高年齢被保険者)
  • 1歳未満の子を養育するために育休を取得したこと(2回まで取得可)
    • パパ・ママ育休プラスを利用する場合は「1歳未満」を「1歳2ヶ月未満」とします。
    • 保育所待機等の特別な事情がある場合は「1歳6ヶ月未満」まで、さらに同様な事情が続く場合は「2歳未満」までの育休を可とします。
  • 育休を開始した日(※16)前2年間に、「みなし被保険者期間」が通算して12ヶ月以上あること
    • 「みなし被保険者期間」とは、育休を開始した日(※16)を被保険者資格喪失日とみなして計算した(失業保険の受給要件である)被保険者期間に相当する期間をいいます。「被保険者期間」は、「離職日から1ヶ月ごとに区切った期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月、又は、賃金支払の基礎となる労働時間数が80時間以上ある月」を1ヶ月として計算します。
  • 1支給単位期間中の就業日数が10日以下、又は、就業時間数が80時間以下であること(※17)

(※15)「支給単位期間」とは、育休を開始した日から1ヶ月ごとに区分した各期間(その1ヶ月の間に育休終了日を含む場合は育休終了日までの期間)をいいます。

(※16)産休を取得した被保険者であって、育休を開始した日から起算して計算したみなし被保険者期間が12ヶ月に満たないものについては、産休を開始した日を起算日として計算します。

(※17)育休を終了した日の属する支給単位期間の場合は、就業日数10日以下、又は、就業時間数80時間以下であるとともに、全日休業している日が1日以上あることが必要です。

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の額は、1支給単位期間につき以下の式で計算されます。

  • 育休開始から180日目まで
1支給単位期間の支給金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(※18)
  • 181日目以降
1支給単位期間の支給金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

「休業開始時賃金日額」とは、育休を開始した日を被保険者資格喪失日とみなして算出される(失業保険の計算の基礎となる)賃金日額に相当する額をいいます。「賃金日額」は、(前述の)被保険者期間として計算された最後の6ヶ月間に支払われた賃金(※19)の総額を180で割った額をいいます。(上限額、下限額について後述。)

「支給日数」は原則30日、最後の支給単位期間についてはその支給単位期間の日数です。

上限額と下限額

休業開始時賃金日額には上限、下限があり、2025年7月31日までは以下の通りです(※20)

休業開始時賃金日額の上限額15,690円
同、下限額 2,869円
賃金との調整

支給単位期間に事業主から賃金が支払われた場合は、以下の通り減額調整が行われます。

・ 育休開始から180日目まで
支払われた賃金の額給付金の減額(支給される給付金の額)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の13%以下減額なし(全額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の13%超、80%未満賃金と給付金の合計が「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%を超える額が減額となる(「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%と賃金の差額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%以上給付金の全額が減額となる(給付金は支給されない)
・ 181日目以降
支払われた賃金の額給付金の減額(支給される給付金の額)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の30%以下減額なし(全額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の30%超、80%未満賃金と給付金の合計が「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%を超える額が減額となる(「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%と賃金の差額が支給される)
「休業開始時賃金日額 × 支給日数」の80%以上給付金の全額が減額となる(給付金は支給されない)

(※18)2025年4月施行の改正により、配偶者(夫)の14日以上の出生時育児休業の取得など一定の要件を満たす場合、28日を上限に+13%の「出生後休業支援給付金」が支給されるようになります。

(※19)臨時に支払われる賃金及び3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。

(※20)勤労統計をもとに毎年8月1日に見直しがあります。

育児休業給付金の申請方法

初回の給付金の支給を受けようとする際に、事業主が以下の手続を行います。

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何をどこへいつまでに
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書所轄の公共職業安定所育休開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書

①、②とも書式は公共職業安定所で入手できるほか、②はハローワークインターネットサービス(育児休業給付金申請)からダウンロードすることもできます。

給付金の申請は、2支給単位期間(2ヶ月分)ごとに行いますが、初回申請時に受給資格が確認されると2回目以降の申請用紙である「育児休業給付金支給申請書」が公共職業安定所から交付されるので、2回目以降はその申請書を利用して支給手続を行います。

書式の記載方法、添付書類など申請方法の詳細や、育児休業給付金制度全般については厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」の「2 育児休業給付金」などが参考になります。また、初回、2回目以降とも、e-Gov による電子申請も可能です。

2. 職場復帰する場合

産休後、職場復帰する従業員等(※21)に関しては、以下の点に注意が必要です。

(※21)労働基準法、育児・介護休業法に基づく規定は会社役員は対象外ですが、それ以外は会社役員も対象となります(具体的には「産前産後休業終了時改定」、「養育期間標準報酬月額の特例」、「随時改定」及び、住民税に関する解説)。

(1) 労働基準法等による規定

労働基準法66条による規定

妊産婦(妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性)から請求あった場合には、

  • 変形労働時間制を採用していても、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない。
  • 36協定を締結しても、時間外労働、深夜労働及び休日労働をさせてはならない。
労働基準法67条による規定

生後満1年に満たない子を育てる女性は、通常の休憩時間のほかに1日2回、それぞれ少なくとも30分、子を育てるための時間(育児時間)を請求することができます。育児時間を有給とするか無給とするかは任意です。

育児・介護休業法の「子の看護休暇」(※22)

小学校就学前の子を養育する者は、子供が病気やけがの際にその世話をするために休暇を取得できます。予防接種や健康診断など疾病の予防を図るための世話も含まれます。1年に5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)を限度として取得でき、休暇の単位は1日又は1時間です。子の看護休暇を有給とするか無給とするかは任意です。

(※22)2025年4月施行の改正により、対象の子が「小学校就学前」から「小学校3年生終了まで」に拡大され、休暇取得の目的に「感染症に伴う学級閉鎖等」「入園(入学)式」「卒園式」が追加されるなどし、呼び名も「子の看護等休暇」へ変更になります。

(2) 社会保険料の改定

産休後、短時間勤務などで給与月額が下がった場合には、随時改定の要件に該当しなくても、標準報酬月額を改定することができ、これを「産前産後休業終了時改定」といいます(※23)

  • 産休修了日の翌日が属する月から3ヶ月間の報酬の平均を基に、標準報酬月額に1等級でも差が出た場合に、4ヶ月目の給与(例:「産休修了日の翌日が属する月」が4月の場合、7月の給与)から改定を適用します。
  • 3ヶ月のうち、報酬支払基礎日数が17日未満(※24)の月がある場合は、その月を除外して算出します(※25)
  • 改定による標準報酬月額は、1月から6月までのいずれかの月に改定されたものは原則としてその年の8月分の給与(例:月末締め翌月払いの場合は9月支払の8月分の給与)まで、7月から12月までのいずれかの月に改定されたものは原則として翌年の8月分の給与まで適用されます。
  • 産前産後休業終了時改定を実施するには、協会けんぽ加入の場合、事業主が以下の届出を行います。
何をどこへいつまでに
産前産後休業終了時報酬月額変更届事業所を所轄する年金事務所速やかに

(※23)標準報酬月額については「社会保険の標準報酬月額とその決め方」をご参照。

(※24)所謂「特定4分の3未満短時間労働者」(その意味は「社会保険の適用基準」ご参照)については「17日」を「11日」に読替えます。

(※25)所謂「短時間就労者」(その意味は「社会保険の適用基準」ご参照)については、①1ヶ月でも基礎日数が17日以上ある場合はそれらの月の平均値、②3ヶ月とも基礎日数が17日未満ながら15日以上の月がある場合はそれらの月の平均値とします。

(3) 厚生年金保険の養育期間標準報酬月額の特例

厚生年金保険に関しては、例えば、産前産後休業終了時改定や(後述する)育児休業等終了時改定などにより標準報酬月額が下がった場合でも、3歳未満の子を養育している間は将来受給する年金額の計算上、養育期間前の高い標準報酬月額を適用する特例があり、これを一般に「養育期間標準報酬月額の特例」といいます(※26)

(※26)養育期間標準報酬月額の特例は、後述する要件を満たす限り適用されるもので、産前産後休業終了時改定や育児休業等終了時改定、あるいは育休等の取得や勤務時間短縮などと関係なく報酬が低下した場合も適用になります(例:業績や能力査定等による降給等)。

特例の対象者

3歳未満の子を養育する厚生年金保険の被保険者

  • 養育期間に入る前に退職し、その後養育期間中に再就職して被保険者になった場合、養育開始月の前月以前1年以内に被保険者であった人に限り対象者となります。
特例措置の内容

養育期間中の標準報酬月額が、養育期間前の従前標準報酬月額を下回る場合、その従前標準報酬月額を養育期間中の標準報酬月額とみなして将来の年金額を計算します。

  • 従前標準報酬月額とは、養育開始月の前月の標準報酬月額(養育開始月の前月に被保険者でなかった場合は、その前月から1年以内に被保険者であった月のうち直近の月の標準報酬月額)をいいます。
  • 対象期間は、当該子を養育することになった日の属する月(※27)から、次のいずれかに該当するに至った日の翌日の属する月の前月までです。
特例の終了事由
当該子が3歳に達したとき(誕生日の前日)
被保険者の資格を喪失したとき(退職日など)
当該子以外の子を養育することとなったとき(第2子に特例を適用する場合、第1子の特例は終了します)(※28)
当該子が死亡したとき、その他当該子を養育しないこととなったとき
当該被保険者が保険料免除の対象となる育休等を開始したとき(第1子の養育期間中に第2子の育休等に入り保険料免除となった場合、第1子の特例は終了します)(※28)
当該被保険者が保険料免除の対象となる産休を開始したとき(第1子の養育期間中に第2子の産休に入り保険料免除となった場合、第1子の特例は終了します)(※28)

(※27)養育期間中に被保険者資格を取得した場合は、被保険者資格を取得した日の属する月から対象期間になります。

(※28)この場合、特例は第2子へ引継がれます(後述、3.(3) ご参照)。

特例の申請方法

養育期間標準報酬月額の特例を受けるには、事業主が以下の届出を行います(※29)

何をどこへいつまでに
厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書事業所を所轄する年金事務所特例を受け始める月から2年以内(※30)

(※29)申出の際にすでに退職している場合は、事業主を経由せず直接本人(被保険者であった人)が(被保険者であった期間分につき)年金事務所へ提出することもできます。

(※30)申出日より前の期間については、申出日の前月までの2年間に限り遡って特例が認められます。

(4) その他のチェックポイント

  • 家族手当などが支払われる場合、標準報酬月額の随時改定に該当しないか注意が必要です(※31)
  • 住民税を普通徴収へ切替済みの場合、復職後、再度特別徴収へ切替えるための届出である「特別徴収切替届出(依頼)書」を従業員等の住所地の自治体へ提出します(書類の名称、書式は自治体によって異なりますので、「特別徴収切替、自治体名」でネット検索するなどして各自治体の書類をご確認ください)。普通徴収の場合、個人宛に送られてくる納付書によって年4回程度に分けて納付しますが、年の途中で特別徴収に切替える場合は、そのタイミングによって未納付分を特別徴収に切り替えて毎月の給与から徴収することになります(切替のタイミングについては、届出書の注書きなどに従います)。6月から(新たな年度分の)特別徴収を開始する場合も、指定の期日(通常4月上旬頃)までに届出書を提出します。
  • 2025年4月施行の改正により、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業している労働者に対し、時短勤務中に支払われた賃金の最大10%を雇用保険から支払う「育児時短就業給付金」制度が創設されます。

(※31)随時改定については、「社会保険の標準報酬月額とその決め方」をご参照。

3. 育児休業を経て職場復帰する場合

基本的に第2章で述べた「産休後職場復帰する場合」と同様ですので、違いにフォーカスして解説します。

(1) 労働基準法等による規定

産後1年を経過した場合は、第2章で述べた労働基準法上の規定は適用外ですが、「子の看護休暇」は適用になります。

育児・介護休業法の「子の看護休暇」(※32)

小学校就学前の子を養育する者は、子供が病気やけがの際にその世話をするために休暇を取得できます。予防接種や健康診断など疾病の予防を図るための世話も含まれます。1年に5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)を限度として取得でき、休暇の単位は1日又は1時間です。子の看護休暇を有給とするか無給とするかは任意です。

(※32)2025年4月施行の改正により、対象の子が「小学校就学前」から「小学校3年生終了まで」に拡大され、休暇取得の目的に「感染症に伴う学級閉鎖等」「入園(入学)式」「卒園式」が追加されるなどし、呼び名も「子の看護等休暇」へ変更になります。

(2) 社会保険料の改定

3歳未満の子を養育する被保険者が、育休等を終了し職場復帰したときの給与月額が下がった場合には、随時改定の要件に該当しなくても、標準報酬月額を改定することができ、これを「育児休業等終了時改定」といいます(※33)。内容は「産前産後休業終了時改定」とほぼ同様(※34)ですので、上述 2.(2) をご参照ください。

  • 育児休業等終了時改定を実施するには、協会けんぽ加入の場合、事業主が以下の届出を行います。
何をどこへいつまでに
育児休業等終了時報酬月額変更届事業所を所轄する年金事務所速やかに

(※33)標準報酬月額については「社会保険の標準報酬月額とその決め方」をご参照。

(※34)「産前産後休業終了時改定」が会社役員も含めて適用になるのに対し、「育児休業等終了時改定」は会社役員は対象外となる点は違いがあります。

(3) 厚生年金保険の養育期間標準報酬月額の特例

育休等明けに職場復帰した場合も(※26ご参照)、3歳未満の子を養育している間は「養育期間標準報酬月額の特例」が適用になります。特例の内容は、産休後と同様ですので上述 2.(3) をご参照ください。

産休明け、育休等明け共通のトピックとして、特例の第2子への引継につき以下のコラムをご参照ください。

「養育期間標準報酬月額の特例」の第2子への引継

下図は、第1子の産休、育休等を経て復職し、第1子について「養育期間標準報酬月額の特例」を受けている間に第2子の産休に入った場合の標準報酬月額の推移をイメージしたものです。

第1子の育休等の後、「育児休業等終了時改定」によって保険料計算のもとになる標準報酬月額が下がった場合でも、第1子の養育期間中は厚生年金計算上の報酬月額は従前の高い水準が適用されます(通常の「養育期間標準報酬月額の特例」)。

次に、第2子の産休に入った場合、第1子に関する特例は終了しますが、第2子の産休、育休等の間は保険料が免除され、その後復職し第2子の養育期間においては、厚生年金計算上の報酬月額は第1子の特例時の従前標準報酬月額を引継ぐことになります。

第2子について特例を受ける場合は改めて申出書を提出する必要があります。また、第2子の産休前に第1子の養育期間が終了している場合は、第1子の従前標準報酬月額を引継ぐことはできません。

(4) その他のチェックポイント

上述 2.(4) をご参照ください。

以上