初回投稿日:2025年3月23日
療養(補償)等給付 休業(補償)等給付 休業特別支給金 傷病(補償)等年金 傷病特別支給金 傷病特別年金 労働者死傷病報告
本記事では、労災保険のうち、傷病に伴う保険給付について解説し、最後に、第三者行為災害届、及び、労働者死傷病報告について補足します。
傷病に伴う労災保険給付
労災事故により傷病を負った場合に支給される保険給付は、大きく分けて、療養費をカバーする給付、休業した場合の生活費をカバーする給付、及び、傷病が継続する場合の年金給付の3つがあります(下表1の左列「給付対象」ご参照)。さらに、それぞれが災害区分によって3つに分かれますが、給付の内容は給付対象ごとにほぼ同様となっています。そこで、以下の説明では、一般的な呼び方に倣い、給付対象ごとにまとめて「○○(補償)等給付」のように呼び(表1の右列ご参照)、それぞれについて順に解説していきます。
【表1】傷病に伴う労災保険給付一覧
給付対象 | 災害区分 | 左3つをまとめた呼称 | ||
業務災害 | 複数業務要因災害 | 通勤災害 | ||
療養費 | 療養補償給付 | 複数事業労働者療養給付 | 療養給付 | 療養(補償)等給付 |
休業した場合の生活費 | 休業補償給付 | 複数事業労働者休業給付 | 休業給付 | 休業(補償)等給付 |
傷病が継続する場合の年金 | 傷病補償年金 | 複数事業労働者傷病年金 | 傷病年金 | 傷病(補償)等年金 |
尚、傷病(補償)等年金の受給権者のうち、一定の傷病等級であって介護を受けている者が受給できる介護(補償)等給付については、別記事「障害に伴う労災保険給付」にて解説しますのでそちらをご覧ください(※1)。
(※1)介護(補償)等給付は、障害(補償)等年金又は傷病(補償)等年金の受給権者のうち要件を満たす者が受給できますが、障害(補償)等年金と併用されることが多いため、「障害に伴う労災保険給付」にて解説しています。
1. 療養(補償)等給付について
(1)給付の種類
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療養(補償)等給付は、原則として現物支給となる「療養の給付」によって行い、例外的に現金支給となる「療養の費用の支給」によることができます。
- 療養の給付
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療養の給付は、労災保険指定の医療機関、薬局又は訪問看護事業者(以下、「指定病院等」といいます)において(費用を負担することなく)現物給付されます(※2)。療養の給付の範囲は、下表2の「①から⑥で政府が必要と認めるものに限る」とされますが、通常療養に必要なものは認められます(※3)。
【表2】療養(補償)等給付の範囲
① 診察 ② 薬剤又は治療材料の支給 ③ 処置、手術その他の治療 ④ 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 ⑤ 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 ⑥ 移送 (※2)労災指定医療機関については、厚生労働省「労災保険指定医療機関検索」をご参照ください。
(※3)一般に治療効果の認められていない特殊な治療や、傷病の程度から必要ないと認められる付添看護師を雇った場合などは認められません。
- 療養の費用の支給
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指定病院等において療養の給付をすることが困難な場合(※4)又は療養の給付を受けないことについて労働者に相当の理由がある場合(※5)には、療養の給付に代えて療養の費用の支給(現金給付)を受けることも認められています。
(※4)その地区に指定病院等がない場合や、特殊な医療技術又は診療施設を要する傷病であって最寄りの指定病院等にこれらの技術又は施設がない場合など。
(※5)傷病が指定病院等以外の病院等で緊急な療養を要する場合や、最寄りの病院等が指定病院等でないなどの事情がある場合。
(2)支給期間
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療養の必要が生じたときから、傷病が治ゆ(※6)するか、又は死亡により療養を必要としなくなるまで支給されます。
(※6)労災保険における「治ゆ」とは、健康時の状態に回復した状態だけをいうのではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行なっても、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいいます。
(3)請求手続
- ・療養の給付に係る請求手続
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療養の給付を受けようとする者は、所定の事項を記載した療養の給付請求書を、指定病院等へ提出します(指定病院等はそれを労働基準監督署へ提出して療養費を請求します)。給付請求書は「業務災害用・複数業務要因災害用」と「通勤災害用」に分かれています。
療養の給付請求書様式 業務災害用・複数業務要因災害用 様式第5号 通勤災害用 様式第16号の3 給付請求書は、給付を受けようとする者が提出するものですが、事業主の証明欄もあり、事業主の協力が不可欠です(※7)。そのため、証明を求められた事業主は「すみやかに証明をしなければならない」と定められています(※8)。さらに、給付を受けようとする者が、事故のため自ら保険給付の請求等の手続を行うことが困難である場合には、事業主は「その手続を行うことできるように助力しなければならない」と定められています(※9)。
因みに、業務災害用と複数業務要因災害用の請求書は兼用になっていますが、労災認定される場合はいずれか一方が認定されます。療養の給付の場合は現物支給なので、受給者にとってはどちらでも違いはありませんが、事業主にとっては、複数業務要因災害の場合はメリット制(※10)に影響ないという点で違いがあります。
療養の給付請求書の書式、記入方法など詳細は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。
- ・療養の費用の支給に係る請求手続
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療養の費用の支給を受けようとする者は、所定の事項を記載した療養の費用請求書を、事業場を所轄する労働基準監督署へ提出します。費用請求書は「業務災害用・複数業務要因災害用」と「通勤災害用」の別に加えて、診療を受けた先(医師、薬局、柔道整復師等)別によっても分かれています。
療養の費用請求書様式
業務災害用・複数業務要因災害用(医師又は歯科医師等) 様式第7号(1) 業務災害用・複数業務要因災害用(薬局) 様式第7号(2) 業務災害用・複数業務要因災害用(柔道整復師) 様式第7号(3) 業務災害用・複数業務要因災害用(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師) 様式第7号(4) 業務災害用・複数業務要因災害用(訪問看護) 様式第7号(5) 通勤災害用(医師又は歯科医師等) 様式第16号の5(1) 通勤災害用(薬局) 様式第16号の5(2) 通勤災害用(柔道整復師) 様式第16号の5(3) 通勤災害用(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師) 様式第16号の5(4) 通勤災害用(訪問看護) 様式第16号の5(5) 給付請求書は、費用の支給を受けようとする者が提出するものですが、事業主の証明欄もあり、事業主の協力が不可欠です(※7)。そのため、証明を求められた事業主は「すみやかに証明をしなければならない」と定められています(※8)。さらに、給付を受けようとする者が、事故のため自ら保険給付の請求等の手続を行うことが困難である場合には、事業主は「その手続を行うことできるように助力しなければならない」と定められています(※9)。
また、費用請求書には、療養の内容や療養に要した費用などにつき、診療先の証明欄があります。
因みに、業務災害用と複数業務要因災害用の請求書は兼用になっていますが、労災認定される場合はいずれか一方が認定されます。療養費用の支給は実費なので、受給者にとってはどちらでも違いはありませんが、事業主にとっては、複数業務要因災害の場合はメリット制(※10)に影響ないという点で違いがあります。
療養の費用請求書の書式、記入方法など詳細は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。
最後に、派遣労働者の場合は、一般に、派遣元事業主が(労働基準法上の)労災補償責任を負うこと、及び、(労災保険法上)労災保険の適用事業であることから、労災保険の給付請求にあたっては派遣元事業主が「事業主の証明」を行いますが、(実際に事故が起こったのが派遣先の事業所であることから、)療養(補償)等給付の請求書には事故の状況等について派遣先事業主の証明欄もあり、両事業主の助力が必要となります。
(※7)複数事業労働者の場合の「非災害発生事業場」の事業主や、通勤災害の場合の「通勤災害に係る事業主」以外の事業主からは証明を受ける必要はありません。
(※8)労災保険法施行規則23条2項。仮に、労災の扱い等について事業主側に異議がある場合、事業主は、別途、所轄の労働準監督署へ意見申出を行うことができます(同規則23条の2)。万一、事業主がその証明を拒否した場合でも、労働者側は「事業主の証明」なしに労災に関する請求書を提出すれば労働基準監督署は受理することになっています。
(※9)労災害保険法施行規則23条1項。
(※10)一定規模等の事業において、給付実績によって労災保険率が変わる仕組み。給付実績には業務災害のみがカウントされます。
- ・労災による怪我などを健康保険で受診してしまったとき
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労災による負傷等の治療のために健康保険を使って受診することは禁止されています(健康保険法55条1項)。万一、健康保険で受診してしまった場合には、可能であれば診療先の病院等に労災保険への切替えを依頼する(様式第5号又は16号の3を提出し負担金の返還を求める)か、健康保険へ医療費返還手続を行った上で労働基準監督署へ様式第7号等を提出して費用請求する、などの手続を踏むことになります。結果、手間と時間がかかるだけでなく、放置すれば「労災隠し」として事業所が責を負う可能性もありますので、最初から間違いなく労災扱いとすることが必要です。
- ・労災指定病院等を変更するとき
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例えば、出張先で怪我をして出張先近くの指定病院等で治療を受け、後に会社又は自宅近くの指定病院等へ変更する場合は、指定病院等(変更)届(様式第6号又は第16号の4)(※11)を変更後の指定病院等を通じて労働基準監督署へ提出します。尚、非指定病院等で治療を受けた後に指定病院等へ変更する場合は、変更届ではなく、前者へは「療養の費用の支給」手続、後者へは「療養の給付」手続を行うことになります。
(※11)変更届の書式、記入方法などは、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照。
2. 休業(補償)等給付について
(1)支給要件
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休業(補償)等給付は、労働者が業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害によって、以下の支給要件を満たす場合に支給されます。
休業(補償)給付の支給要件
① 療養中であること ② 労働することができないこと(労働不能) ③ 賃金を受けない日であること ④ 3日の待機期間を満たしていること 以下、順に補足します。
- ① 療養中であること
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「療養」のために休業している場合でないと支給対象ではありません。従って、「治ゆ」後の休業は支給対象になりません。(治ゆ後に障害等級に該当する障害が残った場合は、障害(補償)等給付の対象になります。)
- ② 労働することができないこと(労働不能)
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「労働することができない」とは、必ずしも負傷直前と同一の労働ができないという意味ではなく、一般的に働けないことをいいます。したがって、軽作業に就くことによって症状の悪化が認められない場合、あるいはその作業に実際に就労した場合には、支給対象とはなりません。但し、通院等のため、所定労働時間の一部について労働する場合(「以下、「一部労働不能」といいます)には、労働不能と認められることがあります(下記「③ 賃金を受けない日であること」ご参照)。
複数事業労働者の場合は、全ての事業場における就労状況等を踏まえて支給の可否が判断されます。例えば、1つの事業場において就労した場合は、原則、労働不能とは認められず支給対象とはなりません。但し、1つの事業場で就労しているものの、他の事業場において通院等のため所定労働時間の全部又は一部について労働することができない場合には、労働不能(一部労働不能)と認められることがあります。
- ③ 賃金を受けない日であること
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「賃金を受けない日」とは、賃金を全く受けない日だけではなく、平均賃金(※11)の60%未満の金額しか受けない日も該当します。また、一部労働不能の場合には、平均賃金と労働時間に対して支払われる賃金との差額の60%未満の金額しか受けない日(※12)のことをいいます。
(※11)平均賃金とは、休業手当などの算出に使われる基準で、労働基準法12条に「算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう」と規定されています。詳細は「給与に関する基礎知識」をご参照ください。
(※12)例えば、「事業主から休業補償手当が支給される場合の金額や、住宅手当等が減額されず休業中も支給される場合の休業日相当分の金額などの合計額」が、「平均賃金と労働時間に対して支払われる賃金との差額」の60%未満の場合のことをいいます。
- ④ 3日の待機期間を満たしていること
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休業の最初の3日間は待機期間とされ、休業(補償)等給付は支給されません。3日間の待機期間は連続している必要はなく(※13)、休日や祝祭日が含まれていても、また待機期間中に報酬を受けていたり、待機期間が有給休暇として処理されていても成立します。
尚、業務災害の場合、待機の3日間について原則として労働基準法の規定(※14)により事業主が休業補償(1日につき平均賃金の60%)を支払う義務があります。(通勤災害、複数業務要因災害に関しては、事業主に法令上の補償義務はありません。)
(※13)健康保険の傷病手当金の待機期間が、連続する3日間であるのと違いがあります。(「従業員等の(業務外での)傷病による休業」ご参照。)
(※14)労働基準法76条。
(2)支給額
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休業(補償)等給付については、本則による給付に加えて社会復帰促進等事業(※15)により休業特別支給金が上積みで支給されることになっており、1日当たりの支給額はそれぞれ以下の通りです。
- ① 原則(以下の②以外)
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1日当たりの休業(補償)等給付の額 = 給付基礎日額 × 60%
1日当たりの休業特別支給金の額 = 給付基礎日額 × 20% - ② 部分算定日の場合
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1日当たりの休業(補償)等給付の額 =(給付基礎日額 − 部分算定日に支払われる賃金の額)× 60%
1日当たりの休業特別支給金の額 = (給付基礎日額 − 部分算定日に支払われる賃金の額)× 20%
部分算定日とは、一部労働不能の日若しくは賃金の支払われる休業日をいいます。また、給付基礎日額とは、基本的には労働基準法の平均賃金に相当する額であり、これに労災保険法の規定による調整等を行なった額となります(※16)。
(※15)労災保険法29条1項に「政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。」とあり、特別支給金はその第2号に規定される被災労働者等の援護事業として支給されています。
(※16)給付基礎日額の詳細は、「従業員の労災事故」をご参照ください。やや細かい点にはなりますが、「② 部分算定日の場合」における給付基礎日額の最高限度額の適用は、「最高限度額の適用がないとした給付基礎日額から部分算定日に支払われる賃金の額を控除した額」に対して適用し、その額に60%又は20%を掛けて給付の額又は特別支給金の額を算定します。
併給調整
以上の支給額は支給要件を満たす限り、原則、全額が支給され、賃金との支給調整は行われません(※17)。従って、例えば休業中に給付基礎日額の59%の賃金を受け取っている場合、上記「② 部分算定日の場合」の計算により、休業(補償)等給付及び特別支給金として給付基礎日額の32.8%(=(100% − 59%)× (60% + 20%))を受け取り、賃金分の59%と合わせると合計で給付基礎日額の91.8%を受け取ることになります。
(※17)賃金や他の給付金などと支給調整が行われる(健康保険の)傷病手当金は違いがあります。傷病手当金については「従業員等の(業務外での)傷病による休業」をご参照。
- 休業(補償)等給付の障害年金との併給調整
-
但し、休業(補償)等給付を受ける労働者が、同一の事由により厚生年金保険法の障害厚生年金又は国民年金法の障害基礎年金を受給する場合、休業(補償)等給付の額が以下の調整率を掛けた金額に減額されて支給されます。(この場合、障害厚生年金、障害基礎年金は全額支給されます。)
尚、併給調整の対象は休業(補償)等給付のみで、休業特別支給金は調整(減額)されません。
併給対象 休業(補償)等給付の調整率 障害厚生年金 0.88 障害基礎年金 0.88 障害厚生年金及び障害基礎年金 0.73
(3)支給期間
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休業の4日目から、休業日が継続しているか断続しているかを問わず、実際の休業日について休業の続く間支給されます。但し、傷病(補償)等年金(後述)を受給することになった場合は打ち切られます。
(4)請求手続
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休業(補償)等給付を請求するときは、所定の事項を記載した支給請求書を事業場を所轄する労働基準監督署へ提出します。支給請求書は「業務災害用・複数業務要因災害用」と「通勤災害用」に分かれています。尚、休業特別支給金の支給申請も、同じ支給請求書によって同時に行うことができます。
休業(補償)等給付の支給請求書様式 業務災害用・複数業務要因災害用 様式第8号 通勤災害用 様式第16号の6 - 支給請求書には、事業主の証明欄と医師(診療担当者)の証明欄があり、事前にそれぞれ取得する必要があります。
- 休業が長期にわたる場合は、1か月ごとに請求するのが一般的です。
- 2回目以降の請求が離職後である場合には、事業主による請求書への証明は必要ありません。但し、離職後であっても当該請求における労働不能の期間の全部又は一部が離職前に係るものであるときは証明が必要です。
支給請求書は、支給を受けようとする者が提出するものですが、事業主の証明欄もあり、事業主の協力が不可欠です。そのため、証明を求められた事業主は「すみやかに証明をしなければならない」と定められています(※18)。さらに、給付を受けようとする者が、事故のため自ら保険給付の請求等の手続を行うことが困難である場合には、事業主は「その手続を行うことできるように助力しなければならない」と定められています(※19)。
支給請求書の書式、記入方法など詳細は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。
(※18)労災保険法施行規則23条2項。仮に、労災の扱い等について事業主側に異議がある場合、事業主は、別途、所轄の労働準監督署へ意見申出を行うことができます(同規則23条の2)。万一、事業主がその証明を拒否した場合でも、労働者側は「事業主の証明」なしに労災に関する請求書を提出すれば労働基準監督署は受理することになっています。
(※19)労災保険法施行規則23条1項。
3. 傷病(補償)等年金について
(1)支給要件
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傷病(補償)等年金は、労働者が業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害によって、負傷又は疾病にかかり、その療養開始後1年6ヶ月を経過した日又はそれ以降において、次の①、②のいずれにも該当する場合に、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給されます。
① 当該負傷又は疾病が治っていないこと ② 当該負傷又は疾病による障害の程度が傷病等級(※20)に該当すること (※20)第1級から第3級まであり、労災保険法施行規則別表第二に規定されています。
(2)支給決定手続
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傷病(補償)等年金は、労働基準監督署長の職権により支給が決定されるもので、労働者の請求によって支給が決定される訳ではありません。労働基準監督署長の支給決定手続は、以下の通りです。
- 労働基準監督署長は、療養開始後1年6ヶ月を経過した日において治っていない者から、その1ヶ月以内に「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を提出させます。
- 「傷病の状態等に関する届」には、傷病の状態に関して医師等の診断書等を添付しなければなりません。
- 労働基準監督署長は、職権により、傷病(補償)等年金を支給するか否かを決定します。
- 傷病(補償)等年金は、休業(補償)等給付から切り替えて支給される給付なので、傷病(補償)等年金が支給される場合は休業(補償)等給付は打ち切られます。
「傷病の状態等に関する届」の書式、記入方法など詳細は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」をご参照ください。
(3)支給期間
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傷病(補償)等年金は、「(1) 支給要件」に該当することになった月の翌月分から、「(1) 支給要件」を満たす状態が継続している間、当該労働者に対して支給されます。支給は毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれその前月分までが支払われます。
(4)支給額
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傷病(補償)等年金は、傷病等級に応じて以下の通り支給されます。加えて社会復帰促進等事業(※21)により傷病特別支給金(一時金)と傷病特別年金が上積みで以下の通り支給されることになっています。
傷病等級 傷病(補償)等年金 傷病特別支給金(一時金) 傷病特別年金 第1級 1年につき、給付基礎日額の313日分 114万円 1年につき、算定基礎日額の313日分 第2級 1年につき、給付基礎日額の277日分 107万円 1年につき、算定基礎日額の277日分 第3級 1年につき、給付基礎日額の245日分 100万円 1年につき、算定基礎日額の245日分 ここで傷病特別年金の基準となる「算定基礎日額」とは、基本的には負傷又は発病の日以前1年間に当該労働者に対して支払われた特別給与(賞与など3ヶ月ごとに支払われる賃金)の総額を365で割った額のことをいいます(※22)。従って、傷病特別年金については、過去1年間の特別給与(賞与など3ヶ月ごとに支払われる賃金)がない場合には支給されません。
(※21)労災保険法29条1項に「政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族について、社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる。」とあり、特別支給金はその第2号に規定される被災労働者等の援護事業として支給されています。
(※22)算定基礎日額の正確な解説は、「従業員の労災事故」をご参照ください。
併給調整
傷病(補償)等年金も休業(補償)等給付と同様、障害年金との併給調整があります。
- 傷病(補償)等年金の障害年金との併給調整
-
傷病(補償)等年金を受ける労働者が、同一の事由により厚生年金保険法の障害厚生年金又は国民年金法の障害基礎年金を受給する場合、傷病(補償)等年金の額が以下の調整率を掛けた金額に減額されて支給されます。(この場合、障害厚生年金、障害基礎年金は全額支給されます。)
尚、併給調整の対象は傷病(補償)等年金のみで、傷病特別支給金と傷病特別年金は調整(減額)されません。
併給対象 傷病(補償)等年金の調整率 障害厚生年金 0.88 障害基礎年金 0.88 障害厚生年金及び障害基礎年金 0.73
第三者行為災害届
傷病が、交通事故や喧嘩、他人の管理する動物による場合など第三者行為による場合であって、被災者が労災保険給付を受けようとするときは、「第三者行為災害届」を労災保険給付の請求書とともに(若しくは請求書提出に先立って)事業場を所轄する労働基準監督署へ提出する必要があります。詳しい説明、「第三者行為災害届」の書式・記入例などは、厚生労働省「第三者行為災害のしおり」をご参照ください。
労働者死傷病報告
以下の事由が生じた場合、事業者は労働安全衛生法(※23)に基づき、所轄の労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出しなければなりません。
(1)労働者が労働災害により死亡し、又は休業(※24)したとき
(2)労働者が就業中に負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業(※24)したとき
(3)労働者が事業場内又はその附属建設物内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業(※24)したとき
労働者死傷病報告は労働安全衛生法に基づくものであり、労災による死亡、休業(上記の(1))に限らず、就業中(上記の(2))又は事業場内等(上記の(3))における負傷、窒息又は急性中毒による死亡、休業があれば届出を行う必要があります。
労働者死傷病報告は、死亡又は休業4日以上の場合と、休業3日以内の場合で異なる提出期限及びフォーマットになります。死亡又は休業4日以上の場合は事故後遅滞なく提出する必要がありますが、休業3日以内の場合は四半期(例:1月〜3月)ごとにまとめて翌月末(例:4月末まで)に提出します。
また、派遣労働者が被災した場合には、派遣元、派遣先それぞれから、それぞれを所管する労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出する必要があります。派遣先事業者は、自らを所管する労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出し、その後遅滞なく、その写しを派遣元事業者へ送付しなければなりません。そして派遣元事業者は、派遣先から受領した写しをもとに自身の所管労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出しなければなりません。
尚、労働者死傷病報告の提出は、令和7年1月1日以降、電子申請が原則となっています。報告書の作成、提出は、厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用すると便利です。
(※23)労働安全衛生規則97条。
(※24)休業が1日〜3日でも報告対象となります。
以上