初回出稿日:2024年4月14日
最新更新日:2024年11月8日
納期の特例(源泉所得税の) 納期の特例(住民税の)
事業者が源泉徴収する従業員の所得税などや、特別徴収(※1)する従業員の住民税は、原則、それぞれ毎月納付しなければなりません。但し、従業員が常時10人未満の事業所は特例により年2回にまとめて納付することができます。(当面)少人数で事業を行う場合には事務負担の軽減になるので、本記事ではその特例について解説します。また、従業員の住民税については、例外的に普通徴収(※1)が許される場合もあるので、その点についても解説します。
尚、給与等からの徴収手続は給与計算や賞与計算に関する記事を、また納付手続についても別記事をご参照ください(※2)。
(※1)住民税の特別徴収、普通徴収については、別記事「個人住民税の普通徴収と特別徴収」をご参照ください。
(※2)給与等からの徴収手続:給与計算に関する「控除項目の計算」、賞与からの徴収手続:「賞与計算」、源泉所得税の納付手続:「所得税の納付手続」、住民税の納付手続:「住民税の納付手続」
源泉所得税の納期の特例
従業員へ払う給与等から源泉徴収(※3)した所得税は、原則、支払った月の翌月10日までに税務署に納付します(納付期限が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その次の平日が納付期限)。但し、従業員が常時10人未満の事業所は特例により年2回(7月から12月に源泉徴収した所得税を1月20日まで、1月から6月分を7月10日まで)にまとめて納付することができます。
この特例を適用するには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署へ提出します。具体的な手続きは国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」をご参照ください。なお、この申請書を提出した日の属する月の翌月末までに税務署長から承認または却下の通知がない場合、申請月の翌月末付けで承認があったものとされ、申請日の翌々月分の納付からこの特例が適用になります。また、この特例の申請は e-Tax によるオンライン申請も可能です(※4)。
(※3)源泉徴収義務のある事業者は、原則、給与等の支払いのある個人事業主及び法人です。従業員を雇っていない個人や、常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに報酬を支払っている個人は、源泉徴収義務はありません。法人の場合は、従業員がいなくても代表者本人の報酬に対して源泉徴収義務があるので、全て源泉徴収義務があることになります。
(※4)但し、利用には Web版 e-Tax ではなく e-Taxソフトのインストールが必要で、OSは Windows にしか対応していません(Mac OS では利用できません)。(2024年4月現在)
住民税の納期の特例
従業員へ払う給与等から特別徴収した住民税は、原則、支払った月の翌月10日までに従業員の住所地の市区町村に納付します(納付期限が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その次の平日が納付期限)。但し、従業員が常時10人未満の事業所は特例により年2回(6月から11月に特別徴収した住民税を12月10日まで、12月から5月分を6月10日まで)にまとめて納付することができます。
この特例を適用するには、「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を各市区町村へ提出し承認を受ける必要があります。具体的な手続は、申請書の書式や eLTAX(地方税のオンラインサービス)への対応など、自治体によって違いがありますので、各自治体のホームページ等をご参照ください。
住民税の普通徴収が可能な場合
事業主は、原則として、給与所得者の個人住民税を特別徴収しなければなりませんが、例外として、地方税法の趣旨に則って各自治体は一定の場合に普通徴収とすることが認められており、典型的な例外として以下に示す項目があります。尚、例外項目(下表の例でのA.〜F.)は、自治体ごとに多少違いがある場合がありますので、具体的には各自治体のホームページ等でご確認ください。
A. | 従業員数が2人以下 |
B. | 他の事業者から特別徴収されている |
C. | 給与が少額(自治体の条例で定める均等割非課税基準所得以下など) |
D. | 給与の支払いが毎月でない |
E. | 専従者給与(個人事業主の家族で事業に従事する者への給与) |
F. | 退職者または5月末までの退職予定者 |
本例外を適用するには特別な申請などは不要ですが、毎年1月末までに提出する法定調書に、「普通徴収切替理由書兼仕切書」を追加で提出する必要があります。詳しくは定例手続である法定調書に関する別記事でカバーする予定です。
以上