初回出稿日:2024年 2月5日
最新更新日:2024年12月6日
強制適用事業所(社会保険の) 任意適用事業所(社会保険の) 個人事業の適用業種(社会保険の)
社会保険の適用除外
一般被保険者(健康保険の) 日雇特例被保険者(健康保険の) 任意継続被保険者(健康保険の) 特例退職被保険者(健康保険の)
当然被保険者(厚生年金保険の) 任意単独被保険者(厚生年金保険の) 高齢任意加入被保険者(厚生年金保険の)
通常の労働者(社会保険の) 短時間就労者(社会保険の) 短時間労働者(社会保険の) 特定4分の3未満短時間労働者(社会保険の) その他4分の3未満短時間労働者(社会保険の)
特定労働者(社会保険の) 特定適用事業所(社会保険の)
人を雇用し始めたら、社会保険の適用の有無について確認し、必要な手続を行わなければなりません(※1)。本記事では、社会保険への加入が義務となる基準について解説していきます。
社会保険の適用基準には、事業所(※2)としての基準と労働者ごとの基準があり、以下、順に解説していきます。
また、昨今、健康保険・厚生年金保険に関しては、パート等の所謂、短期労働者への適用を拡大する改革が進行中で、小規模事業者にも大きな影響が予想されています。本記事ではこうした影響についても、専門家でなくとも理解できるよう、フローチャートや用語の解説に工夫を凝らしたつもりです。
尚、適用基準を満たした場合の加入手続については、別記事「社会保険の加入手続」にてカバーします。
(※1)社会保険の概要については「労働保険・社会保険の基礎知識」をご参照。
(※2)社会保険は、支店や営業所など個々の事業所ごとに適用されるのが原則で、例外的に(手続を経て)本店などで一括して管理することができるようになっています。
1.事業所としての基準
下図1は、健康保険、厚生年金保険への加入義務が生じる適用事業かどうかの判断を示したフローチャートです(※3)。つまり、図1のフローチャート及びその下に続く各項目の説明に従い、自身の事業所が強制適用事業所、又は任意適用事業所に該当する場合に加入義務が生じます。図1のフローチャート自体は健康保険と厚生年金保険で共通ですが、強制適用事業所となる基準は以下に述べるように若干の違いがあるので、ご留意下さい。
(※3)因みに、介護保険は、健康保険に加入する40歳以上65歳未満の労働者に(第2号被保険者として)自動的に適用されるので、事業者として適用基準の判断が必要なのは、健康保険、厚生年金保険の2つになります。
【図1】社会保険の適用基準
図1の各項目について、以下説明していきます。
- (1) 強制適用事業所に該当
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健康保険の強制適用事業所
次のいずれかに該当する事業所は健康保険の強制適用事業所になります。
スクロールできます法人(株式会社、合同会社など)の事業所で、常時1人でも従業員を使用するもの 個人事業主の事業所の場合、適用業種(※4)であって、常時5人以上の従業員を使用するもの (※4)個人事業主の適用業種は、健康保険、厚生年金保険共通です。後述の表1をご参照ください。
厚生年金保険の強制適用事業所
次のいずれかに該当する事業所(又は船舶)は厚生年金保険の強制適用事業所になります。
スクロールできます法人(株式会社、合同会社など)の事業所で、常時1人でも従業員を使用するもの 個人事業主の事業所の場合、適用業種であって、常時5人以上の従業員を使用するもの 船員法1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶 厚生年金保険のの強制適用事業所は、健康保険の強制適用事業所に船舶を加えたものになります。
健康保険、厚生年金保険に共通して言えることですが、ここで言う従業員の数には、正社員、契約社員、パート、アルバイトなどの名称を問わず、また被保険者となるべき者に限らず、当該事業所に常時使用されている者であればカウントします。但し、派遣社員は派遣元事業所のカウントになります。また、法人の場合、ここでの従業員には法人の代表者も含まれます。従って、社長1人だけの法人の事業所も強制適用事業所となります。個人事業主自身はここでの従業員にカウントしません。また、個人事業主の適用業種とは、下表1に掲げる17業種(※5)になります。
【表1】個人事業の適用業種
スクロールできます1. 物の製造、加工、選別、包装、修理または解体の事業 2. 土木建築業 3. 鉱物採掘、採取事業 4. 電気または動力の発生、伝導または供給の事業 5. 貨物または旅客の運送事業 6. 貨物積卸しの事業(荷役業) 7. 焼却、清掃または屠殺事業 8. 物品販売業 9. 金融保険業 10. 保管、賃貸事業 11. 媒介周旋(斡旋)事業 12. 集金、案内、広告事業 13. 教育、研究、調査事業 14. 医療、治療、助産事業 15. 通信、報道事業 16. 社会福祉事業、厚生保護事業 17. 法律、会計に係る士業(弁護士、会計士、税理士、公証人、司法書士、行政書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士) (※5)健康保険法3条3項1号、及び厚生年金保険法6条1項1号に規定する17業種。
個人事業主の場合、表1の適用業種に該当しなければ従業員の数に関わらず強制適用事業所にならない訳ですが、ご参考まで以下のような業種が適用業種外となります(あくまで主な業種の例示です)。
農林水産業、畜産業、飲食業、宿泊業、娯楽業、接客業、理容美容業(理髪店、エステサロン等)、興行事業(映画制作、映写、演劇等)、清掃業、洗濯業、浴場業、職業紹介・労働者派遣業、デザイン業、経営コンサルタント業、情報サービス業(ITエンジニア)、写真業、警備業、政治・経済・文化団体、宗教業
- (2) 任意適用事業所に該当
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強制適用事業所以外あっても従業員(被保険者となるべき者に限定)の2分の1以上の同意を得て事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受けると適用事業所になることができます。健康保険、厚生年金保険のどちらか一つの制度のみ加入することも可能です。尚、労働保険(労災保険、雇用保険)と違い、従業員の2分の1以上の希望があっても、社会保険に加入する義務はありません。
2.労働者ごとの基準
従業員が被保険者となる基準については、健康保険と厚生年金保険で多少の違いがあります。まず、被保険者はその就業条件や年齢によって、健康保険と厚生年金保険それぞれ幾つかの種類に分かれます。以下の解説では、それぞれの被保険者の種類について概略を押さえた上で、事業者が初めて制度加入する場合に主な対象となる健康保険の「一般被保険者」と厚生年金保険の「当然被保険者」について、その適用基準を詳しく見ていきます。
- 健康保険の被保険者
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健康保険の被保険者には、適用事業所に使用される従業員である一般被保険者、日雇特例被保険者のほか、適用事業所に使用されなくなった後も任意で加入できる任意継続被保険者、特例退職被保険者の4種類があります。
【表2】健康保険の被保険者の種類
スクロールできます被保険者の種類 就業状況 概要 一般被保険者(※6) (適用事業所に)
就業中適用事業所に使用される日雇以外の者で、後述する適用除外に該当しない者。 日雇特例被保険者 適用事業所に臨時に使用される者で、日々雇い入れられる者など(※7)。 任意継続被保険者 (適用事業所を)
退職後退職等により一般被保険者の資格を喪失した者が、一定要件を満たす場合に保険者(協会けんぽ又は健康保険組合)に申し出て一定期間引き続き被保険者となるもの。 特例退職被保険者 認可を受けた特定の健康保険組合の一般被保険者が退職後に選択できるもの。(従って本サイトの対象となる小規模事業の従業員には関係ないと考えられる。) (※6)一般被保険者とは、正確にいうと「日雇特例被保険者、任意継続被保険者、特例退職被保険者以外の被保険者」という表現になりますが、本記事では単純に「一般被保険者」と呼んでいます。
(※7)健康保険法3条8項に規定する日雇労働者であって、同3条2項に該当する者。因みに、雇用保険では使用する労働者に日雇労働者を含めて”適用事業かどうか”の判断を行うのに対し、健康保険では適用事業所が日雇労働者を使用する場合に”被保険者となるかどうか”の判断となります。言い換えると、健康保険では適用事業所以外の事業所が日雇労働者を使用しても適用事業所にはなりません。
- 厚生年金保険の被保険者
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厚生年金保険の被保険者には、適用事業所に使用される70歳未満の従業員(後述の適用除外を除く)である当然被保険者に加え、任意で加入できる任意単独被保険者、高齢任意加入被保険者の3種類があります。
【表3】厚生年金保険の被保険者の種類
スクロールできます被保険者の種類 年齢 概要 当然被保険者 70歳未満 適用事業所に使用される70歳未満の者で、後述する適用除外に該当しない者 任意単独被保険者 70歳未満 適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者(後述する適用除外に該当する者を除く)で、事業主の同意を得て厚生労働大臣の認可を受けた者 高齢任意加入被保険者 70歳以上 適用事業所又は適用事業所以外の事業所に使用される70歳以上の者で、老齢年金の受給権を有しないものが、一定の手続を経て被保険者となるもの。
適用事業所以外の事業所の従業員の場合、事業主の同意を得た上で、厚生労働大臣の認可を受ける必要がある。 - 健康保険の「一般被保険者」、厚生年金保険の「当然被保険者」の適用基準
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ここから、健康保険の一般被保険者、及び厚生年金保険の当然被保険者の適用基準について説明します。既に述べた通り、健康保険、厚生年金保険にはそれぞれいくつか被保険者の種類がありますが、事業者として制度加入が必要となるのは採用する従業員が主にこれらに該当する場合なので、特に押さえておく必要がある適用基準です。
下図2、及びその下に続く各項目の説明をご覧ください。尚、図2のフローチャート自体は健康保険と厚生年金保険で共通ですが、各項目の内容には違いある場合がありますので、ご留意下さい。
【図2】健康保険「一般被保険者」、厚生年金保険「当然被保険者」の適用基準
- ① 対象者は適用事業所に使用される者
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厚生年金保険の場合は70歳未満限定、健康保険の場合はここでは年齢制限なしで判断します。法人の場合は、その代表者又は業務執行者もその法人から報酬を受ける限り「使用される者」に含みます(従って、社長1人の会社でも、その社長は「使用される者」になります)。一方、個人事業主は「使用される者」にはなりません(※8)。
(※8)個人事業主は、国民健康保険、国民年金の被保険者となります。家族従業員も一般的には同様ですが、他の従業員と同様に管理(雇用契約、出勤簿、賃金台帳など)され、個人事業主の税優遇措置である青色事業専従者給与、事業専従者控除の対象外であれば被保険者となることができます。
- ② 対象者は適用除外に該当
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次表4のいずれかに該当する者は、健康保険の一般被保険者、又は厚生年金保険の被保険者になることができません。この適用除外の規定も健康保険と厚生年金保険でほぼ同様ですが、一部の規定は健康保険のみに関わるものになります(表4の項目1. 7. 8. 9.)。尚、表4.の項目10. については、図2の③以降の判断にも関わる労働者の区分を理解する必要があり、以下の囲み記事をご覧ください。
【表4】社会保険の適用除外
スクロールできます項目 健康保険の適用除外 厚生年金保険の適用除外 1. 船員保険の強制被保険者(※9) 2. 臨時に使用される者で、日々雇い入れられる者(※10) 3. 臨時に使用される者で、2月以内の期間を定めて使用される者であって、当該期間を超えて使用されることが見込まれないもの(※11) 4. 所在地が一定しない事業所に使用される者(※12) 5. 4月以内の季節的業務に使用される者(※13) 6. 臨時的事業の事業所に使用される者(※14) 7. 国民健康保険組合の事業所に使用される者 8. 後期高齢者医療の被保険者(※15) 9. 厚生労働大臣、健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者(※16) 10. その他4分の3未満短時間労働者 (※9)船員は船員保険法に基づく船員保険の適用を受けるため、健康保険の適用除外となります。
(※10)但し、その者が1月を超えて引き続き使用されるに至ったときは、その超えた日から一般被保険者(健康保険)、当然被保険者(厚生年金保険)になります。尚、この適用除外に該当するものは、原則、健康保険の日雇特例被保険者になります。また、船員についてはこの適用除外に該当しても厚生年金保険の当然被保険者になります。
(※11)但し、その者が当該定めた期間を超えて引き続き使用されるに至ったときは、その超えた日から一般被保険者(健康保険)、当然被保険者(厚生年金保険)になります。尚、この適用除外に該当するものは、原則、健康保険の日雇特例被保険者になります。また、船員についてはこの適用除外に該当しても厚生年金保険の当然被保険者になります。
(※12)巡回興行のような事業です。この場合、その者がその事業所に長期にわたって使用されたとしても、一般被保険者(健康保険)、当然被保険者(厚生年金保険)になりません。
(※13)季節的業務であっても、当初から継続して4月を超えて使用される予定である場合は、その当初から一般被保険者(健康保険)、当然被保険者(厚生年金保険)になります。逆に、当初4月未満使用される予定であったのが、業務の都合等によりたまたま継続して4月を超えて使用されるに至ったとしても、一般被保険者、当然被保険者にはなりません。尚、この適用除外に該当するものは、原則、健康保険の日雇特例被保険者になります。また、船員についてはこの適用除外に該当しても厚生年金保険の当然被保険者になります。
(※14)博覧会のように臨時的に開催される事業の事業所です。但し、その者が当初から継続して6月を超えて使用される予定である場合は、その当初から一般被保険者(健康保険)、当然被保険者(厚生年金保険)になります。逆に、当初6月未満使用される予定であったのが、業務の都合等によりたまたま継続して6月を超えて使用されるに至ったとしても、一般被保険者、当然被保険者にはなりません。尚、この適用除外に該当するものは、原則、健康保険の日雇特例被保険者になります。
(※15)75歳以上の者(65歳以上で所定の障害の状態にある旨の認定を受けた者を含む)は、後期高齢者医療制度の適用を受けるため、健康保険の適用除外となります。
(※16)本記事の対象者ではない、ごく例外的な扱いですので説明は省略します。
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上にも述べた通り、表4の項目10.の「その他4分の3未満短時間労働者」や、図2の③の「特定適用事業所」及び④、⑤の判断には、労働者に関する区分を理解する必要があります。やや細かい区分であり、個人的にはここが社会保険の適用判断において最も難しい部分だと思うところですので、敢えて囲み記事にまとめました。尚、以下の分類は、必ずしも正式な呼び方ではありませんが同様な呼称が使われることが多く、本記事でもルールを理解しやすくするために以下の呼び方を使用しています。
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労働者の区分
- ・通常の労働者
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所謂、フルタイムの正社員
- ・短時間就労者
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1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上である労働者(所謂、パート、アルバイト等)
- ・短時間労働者
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1週間の所定労働時間又は1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3未満である労働者(所謂、パート、アルバイト等)
- ・特定4分の3未満短時間労働者
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短時間労働者であって、次の要件を全て満たす者
スクロールできます① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること ② 雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること ③ 月額賃金(最低賃金法において賃金に算入しないもの(※17)を除く)が8.8万円以上であること ④ 学生(※18)でないこと (※17)最低賃金については、別記事「給与に関する基礎知識」をご参照。
(※18)休学中や夜間学生は除く。
- ・その他4分の3未満短時間労働者
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特定4分の3未満短時間労働者以外の短時間労働者
- ③事業所が特定適用事業所に該当、及び図2の④、⑤の判定について
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特定適用事業所とは、社会保険の適用事業所であって、「特定労働者」の総数が常時50人を超えるものをいいます。ここで、特定労働者とは、70歳未満の者のうち表4で示した厚生年金保険の適用除外に該当せず、「特定4分の3未満短時間労働者」以外の者をいいます。言い換えると、厚生年金保険の当然被保険者であって短時間労働者以外の者を常時50人超使用する適用事業所ということになります。
そして、図2の③以下の判定により、特定適用事業所かどうかによって、被保険者の範囲が変わってくる(「特定4分の3未満短時間労働者」が被保険者になるかどうかが別れる)訳ですが、その特定適用事業所かどうかの判定(50人超かどうか)は「特定4分の3未満短時間労働者」を除いて判断するのです。つまり特定労働者の数が多い(つまり規模の大きい)特定適用事業所に該当する場合、短時間労働者のうち特定4分の3短時間労働者も被保険者となる(図2の④、⑤の違い)という訳です。
特定適用事業所については以下の点にもご留意ください。
- 事業主が法人の場合、同一の法人番号を有する全ての適用事業所の合計で特定労働者の数が常時50人を超える場合、その全ての適用事業所が特定適用事業所となります。
- 個人事業主の場合、適用事業所ごと(一括適用事業所(※19)の場合はその全体)に特定労働者の数が常時50人を超える場合、その適用事業所が特定適用事業所となります。
(※19)2つ以上の適用事業所の事業主が同一である場合、当該事業主は厚生労働大臣の承認により、当該2つ以上の事業所を1つの適用事業所とすることができます。これにより社会保険手続きを一括適用事業所で集中処理できるようになります。
- 「常時50人を超える」とは、直近12ヶ月のうち6ヶ月で基準の50人を越えることが目安とされます。
- 特定適用事業所に該当すると、労働時間の短い労働者(つまり特定4分の3未満短時間労働者)も社会保険の被保険者となる訳ですが、現在、政府は社会保険の適用拡大を進めており、基準となる特定労働者の人数の引き下げが進行中です。
- 2022年10月1日 特定労働者の基準を、500人超→100人超へ引き下げ実施
- 2024年10月1日 特定労働者の基準を、100人超→50人超へ引き下げ実施
- 特定適用事業所の基準に満たない場合でも、労使の合意に基づき申出を行うことで特定適用事業所となることが認められており、これを任意特定適用事業所といいます。
「労働保険・社会保険の適用」に関する解説は以上で終了です。
ところで、最後に述べた社会保険の適用拡大に関しては、これまで「特定適用事業所」といった一定規模以上の事業所に関して一定の短時間労働者(「特定4分の3未満短時間労働者」)も健康保険・厚生年金保険の被保険者とし、その規模要件を徐々に引き下げる方向で適用拡大が進んできました。そして、2024年10月からは、特定適用事業所の基準となる特定労働者の数が「51人以上」まで引下げられています。
さらに、今後の「適用拡大」の方向性として、以下のような検討が俎上に上がっています(※20)。
- 「特定適用事業所」といった規模要件を撤廃
- 個人事業の適用業種の拡大
- 週労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大
- 特定4分の3未満短時間労働者の賃金要件(月8.8万円以上:いわゆる106万円の壁)撤廃
1.が実施されると、全ての適用事業所において「特定4分の3未満短時間労働者」が被保険者となり、また、2.ではこれまで加入が義務でなかった個人事業の業種(例えば表1の下の囲み内の業種)の事業主も、5人以上を常時雇用すると社会保険の加入が必要になります。
このように、小規模事業者にとって大きな影響を与えうる「適用拡大」であり、新聞等(※21)でも取り上られているものの、もともとのルールが複雑すぎるためかその影響に対する理解は進んでいないと思われます。本記事では、フローチャートや「労働者の区分」を整理することによって、わかりやすく解説したつもりです。ご参考になれば嬉しく思います。
(※20)厚生労働省「第4回社会保険審議会年金部会」2023年5月30日付資料3 が参考になります。
(※21)2023年5月30日付日経新聞「パートの厚生年金、対象拡大 企業の規模要件撤廃へ議論」など。
以上