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社会保険の標準報酬月額とその決め方

初回出稿日:2024年 9月 1日

最新更新日:2024年10月12日

この記事のキーワード

報酬月額 標準報酬月額 保険料額表 算定基礎届 基礎日数 

資格取得時決定 定時決定 随時改定 育児休業等を終了した際の改定 同日得喪

本記事では、(狭義の)社会保険(つまり健康保険、介護保険、厚生年金保険)の保険料を決める基準となる、標準報酬月額と、その決め方について解説します。

まず当然ではありますが、以下では、事業所が社会保険の適用事業(※1)であることを前提としています(社会保険の適用事業でない場合は、そもそも社会保険についての手続が不要なため)。

次に、社会保険の保険料は、これから解説する報酬月額によって決まりますが、その報酬月額と社会保険料の対応表を一般に保険料額表といいます。また、健康保険と介護保険の保険料率(つまり保険料額表の数値)は、加入する健康保険によって違いがあるので、以下では、個人事業の事業所や中小企業が主に加入する協会けんぽ(※2)を例に説明します。さらに協会けんぽの場合、健康保険の料率は都道府県ごとに異なるため、保険料額表は事業所が所在する都道府県のものを参照する必要があります。保険料額表は加入する健康保険によって違いがありますが、標準報酬月額の決め方自体は共通であり、本記事で説明する方法によります。

以下、協会けんぽに加入する東京都の事業所を例に、まず社会保険料の求め方を簡単に抑えた上で、標準報酬月額とその決定方法について見ていきます。

(※1)常時1人でも従業員を使用する法人の事業所、または常時5人以上の従業員を使用する個人事業の事業所など。詳しくは「労働保険・社会保険の適用基準」ご参照。

(※2)民間事業者の被用者が加入する健康保険には、大きく分けて健康保険組合と全国健康保険協会(所謂、協会けんぽ)があります。健康保険組合は、大企業が単独で設立するものや、複数の事業主が共同して設立するものがありますが、協会けんぽは、健康保険組合の組合員でない被保険者の保険を管掌しおり、小規模事業、中小企業の従業員の多くが加入しています。当サイトの対象である事業者は、ほぼ協会けんぽに加入することになります。尚、被用者以外が加入する国民健康保険などを含めた公的医療保険制度の全体像については、「公的医療保険の種類」をご参照。

社会保険料の求め方

下図1は、協会けんぽの保険料額表の抜粋です(東京都用)(※3)。この図にあるように、報酬月額を一定幅ごとに等級に分け、その各等級ごとに標準報酬月額を当てはめ、その標準報酬月額に健康保険料率(介護保険の該当年齢者は介護保険料率を含む)及び厚生年金保険料率を掛けてそれぞれの保険料が決まります(それを雇用主と被用者が折半で負担します)。

【図1】保険料額表抜粋(協会けんぽ、東京都)

(※3)都道府県ごとの保険料額表は、協会けんぽ:都道府県毎の保険料額表ご参照。

標準報酬月額の決め方

まず、報酬月額には、基本給のほか各種手当など、被保険者が労働の対価として受領するすべてのものを含み、また金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも含みます。但し、臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与(※4)などは含みません。

【表1】報酬月額の対象

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金銭(通貨)で支給されるもの 現物で支給されるもの
報酬となるもの基本給(月給・週給・日給など)、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年4回以上の賞与 など通勤定期券、回数券、食事、食券、社宅、寮、被服(勤務服でないもの)、自社製品 など
報酬とならないもの大入袋、見舞金、解雇予告手当、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下の賞与 など制服、作業着(業務に要するもの)、見舞品、食事(本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額により算定した額の2/3以上の場合) など

(※4)年3回以下で支給される賞与は、標準報酬月額ではなく、標準賞与額の対象になります。(別記事「賞与計算」ご参照。)

次に、標準報酬月額の決め方には、その算定のタイミングにより、「資格取得時決定」、「定時決定」、「随時改定」、「育児休業等を終了した際の改定」の4通りがあります。以下、順に説明します。

資格取得時決定

  • 従業員を採用したときなど、被保険者の資格を取得したときの標準報酬月額の決め方です。被保険者の資格を取得した場合、事業所は5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出しなければなりません(※5)が、その資格取得届に報酬月額を記入して届出ます。
  • 報酬月額は、給与の支給方法によって以下の通り計算します。
月給の場合月給として定められた支給額を報酬月額とする
週給、その他一定期間による支払の場合(※6)報酬の額 ÷ その期間の総日数 × 30
  • 資格取得届提出後は、日本年金機構等で処理を行なったのち、「健康保険・厚生年金保険資格取得確認及び標準報酬決定通知書」が返送されるので、内容を被保険者へ通知し、以降、記載された標準報酬月額を社会保険料控除額の計算に利用します。
  • 社会保険料は、月単位で徴収され(日割計算は行いません)、資格取得日(入社日など)の属する月から保険料の徴収対象となりますが、保険料を控除するのは翌月支払日の給与からです。例えば、月末締め翌月20日払いの会社に4月に入社した場合、4月から保険料が発生し、5月20日に支給される4月分の給与から保険料を控除します。月末締め当月25日払いの会社に4月に入社した場合は、4月分の保険料は5月25日に支給される5月分の給与から控除します(この場合、4月25日に支給される4月分の給与からは保険料は控除しません)(※7)
  • 資格取得時決定で決まった標準報酬月額は、資格取得日が1月1日〜5月31日である場合はその年の8月分の給与まで、6月1日〜12月31日である場合は翌年の8月分の給与まで適用されます。(例えば、給与が月末締め翌月払いの場合は、9月支払分までの適用になります。)

(※5)別記事「社会保険の加入手続」ご参照。

(※6)その他、日給制、時間給などの場合、日本年金機構:資格取得時の決定ご参照。

(※7)より詳しくは、別記事「社会保険の資格取得と喪失、保険料の徴収開始と終了のタイミングについて」ご参照。

定時決定

  • 資格取得時決定以降は、毎年一定時期に標準報酬月額の見直しを行います。これを定時決定といいます。
  • 定時決定の対象者は以下の通りです。
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対象者7月1日現在、被保険者である人
対象外6月1日から7月1日までに被保険者資格を取得した人(来年8月まで取得時決定が有効なため)
6月30日までに退職した人
随時改定(後述)又は育児休業等を終了した際の改定(後述)により、
7月〜9月に標準報酬月額の変更が予定されている人
  • 資格取得時決定を行なった事業者には、6月中旬以降、年金事務所等から定時決定の届出用紙(「算定基礎届」といいます)が送られてきます、これを作成、提出することで定時決定の手続を行います。
  • 新たな標準報酬月額は、被保険者ごとに4月、5月、6月の3ヶ月に支払われる報酬月額(※8)の平均値を計算し、標準報酬月額の等級に当てはめて決定します。以下、やや細かい説明になりますが、実務上必要なポイントですので、自身のケースに応じて(後述する事例も合わせて)ご参照ください。

(※8)支払月ベースです。例えば、月末締め翌月20日払いの場合、4月〜6月に支払われる3月〜5月分の報酬が対象です。

特殊ケースの定時決定の計算方法
給与の支払期間の途中で資格取得したことにより1ヶ月分の給与が支給されない場合、その月を除いた残りの月で計算します。

例えば、20日締め翌月10日払いの会社に4月1日に入社した場合、5月10日支払の4月分の給与は20日間分であり、1ヶ月分に満たないため、6月10日支払の給与のみで計算します。

賞与を年4回以上支払っている場合は、7月1日前の1年間に支払った賞与の総額の12分の1を4月、5月、6月の給与に加算します。
通勤手当として3ヶ月や6ヶ月ごとに通勤定期代を支給している場合は、月数で割って4月、5月、6月の給与に加算します。通勤定期券(現物)を従業員に支給している場合は、1ヶ月あたりの金額を算定基礎届の4月、5月、6月の現物給与欄に加算します。
3ヶ月のうち報酬月額の基礎日数(※9)が17日未満(※10)(※11)の月は平均値の計算から除きます。

例えば、基礎日数が(支払月ベースで)4月(31日)、5月(16日)、6月(31日)の場合、5月支払分を除いた2ヶ月の平均とします。

算定基礎届に記入する報酬月額の平均値に1円未満の端数が出たときは、円未満を切捨てます。
3ヶ月とも基礎日数が17日未満など、定時決定ができないような場合は、年金事務所等が標準報酬月額を決定します。(基本的には従前の標準報酬月額で決定。)
業務の性質上、毎年4月から6月支給の報酬額が多くなることもあります。(例えば3月決算の会社で決算作業で時間外労働が多くなるなど。)このような場合、4月から6月の報酬月額で算出した標準報酬月額では、本来の報酬に比べて社会保険料が高くなってしまいます。こうした状況に対処するため、4月から6月支給の平均報酬月額と、前年の7月から当年6月までの1年間に支給した平均報酬月額によって算出した標準報酬月額を比較し、両者に2等級以上の差がある場合、被保険者の同意を得た上で、年金事務所等へ申立てを行い、認められれば1年間の平均報酬から算出した報酬月額を基に標準報酬月額を決定することもできます。

(※9)基礎日数とは、月給の場合、基本はその月の暦日数です。( 3月分なら31日。労働日ではありません。)注意が必要なのは、就業規則などで欠勤控除が規定されている場合です。例えば「欠勤1日あたり固定給の22分の1を控除する」との規定がある場合、5月に6日欠勤すると、5月分の基礎日数は欠勤控除の基準である22日を基にして16日(22−6)になります。(暦日数の31日を基にした25日(31−6)ではあません。)

(※10)所謂「特定4分の3未満短時間労働者」(その意味は別記事「社会保険・労働保険の適用基準」ご参照)については「17日」を「11日」に読替えます。

(※11)所謂「短時間就労者」(その意味は別記事「社会保険・労働保険の適用基準」ご参照)については、①1ヶ月でも基礎日数が17日以上ある場合はそれらの月の平均値、②3ヶ月とも基礎日数が17日未満ながら15日以上の月がある場合はそれらの月の平均値とし、③3ヶ月とも基礎日数が15日未満の場合は従前の標準報酬月額で決定されます。

  • 以上のルールを踏まえた、いくつかの計算事例を以下に紹介します。
定時決定の計算事例1(基本的な例)
前提条件
  • 通常の労働者(フルタイム正社員)
  • 賃金締め日:月末
  • 賃金支払日:翌月20日
  • 支給内容 :基本給 300,000円(月給)、通勤手当60,000円(6ヶ月分を3月支給済)
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支払月基礎日数基本給残業手当合計
4月31日300,000円22,367円322,367円
5月30日300,000円31,560円331,560円
6月31日300,000円28,988円328,988円
報酬月額の計算
  • 6ヶ月分の通勤手当の1ヶ月当たりの金額を求め、各月の支給額に加算します。
1月当たりの通勤手当 = 60,000円 ÷ 6ヶ月 = 10,000円
4月322,367円 + 10,000円 = 332,367円
5月331,560円 + 10,000円 = 341,560円
6月328,988円 + 10,000円 = 338,988円
  • 4月、5月、6月は全て基礎日数が17日以上のため、3ヶ月平均で報酬月額を求めます。
報酬月額 = (332,367円+341,560円+338,988円)÷ 3 = 337,638.3‥
決定される標準報酬月額
健康保険: 340,000円(24等級)
厚生年金保険:  340,000円(21等級)

協会けんぽ、東京都、令和6年3月分からの保険料額表による(以下同様)

定時決定の計算事例2(欠勤等がある場合)
前提条件
  • 通常の労働者(フルタイム正社員)
  • 欠勤控除の規定:「欠勤1日あたり固定給の22分の1を控除する」
  • 賃金締め日:月末
  • 賃金支払日:翌月20日
  • 支給内容 :基本給 400,000円(月給)、通勤手当なし
  • 勤怠状況 :3月欠勤なし、4月欠勤日数2日、5月欠勤日数6日
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支払月基礎日数基本給残業手当合計
4月31日400,000円10,324円410,324円
5月20日363,637円(*)9,380円373,017円
6月16日290,910円(*)4.655円295,565円
(*)欠勤控除の端数は切捨てて計算しています。
報酬月額の計算
  • 6月は基礎日数が17日未満のため、4月と5月の2ヶ月平均で報酬月額を求めます。
報酬月額 = (410,324円+373,017円)÷ 2 = 391,670.5
決定される標準報酬月額
健康保険: 380,000円(26等級)
厚生年金保険:  380,000円(23等級)
定時決定の計算事例3(短時間就労者で基礎日数が17日未満の例)
前提条件
  • 短時間就労者
  • 賃金締め日:月末
  • 賃金支払日:翌月15日
  • 支給内容 :時給1,500円、通勤手当630円(1日分)
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支払月基礎日数基本給残業手当通勤手当合計
4月15日180,000円11,250円9,450円200,700円
5月16日192,000円13,125円10,080円215,205円
6月10日120,000円7.500円6,300円133,800円
報酬月額の計算
  • 4月、5月、6月は全て基礎日数が17日未満ながら、15日以上ある4月と5月の2ヶ月平均で報酬月額を求めます。
報酬月額 = (200,700円+215,205円)÷ 2 = 207,952.5
決定される標準報酬月額
健康保険: 200,000円(17等級)
厚生年金保険:  200,000円(14等級)
定時決定の計算事例4(年間平均で報酬月額を算定する例)
前提条件
  • 申立の理由:人事担当者であり、毎年3月、4月に入退社手続が集中し残業時間が多くなるため
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支払月基礎日数基本給残業手当合計
前年7月30日200,000円3,000円203,000円
8月31日200,000円0円200,000円
9月31日200,000円4,500円204,500円
10月30日200,000円3,000円203,000円
11月31日200,000円0円200,000円
12月30日200,000円6,000円206,000円
当年1月31日200,000円0円200,000円
2月31日200,000円0円200,000円
3月28日200,000円12,000円212,000円
4月31日200,000円66,000円266,000円
5月30日200,000円99,000円299,000円
6月31日200,000円34.500円234,500円
1年間の合計2,628,000円
標準報酬月額の計算
  • 4月〜6月の平均報酬で計算
報酬月額 = (266,000円 + 299,000円 + 234,500円)÷ 3 = 266,500 円
標準報酬月額 → 260,000円 (20/17等級)
  • 1年間の平均報酬で計算
報酬月額 = 2,628,000円 ÷ 12 = 219,000 円
標準報酬月額 → 220,000円 (18/15等級)

両者に2等級以上の差があるため、申立が認められれば標準報酬月額は220,000円になります。

  • 算定基礎届は、7月10日迄(10日が土日の場合は翌営業日迄)に提出します。提出は、郵送(算定基礎届送付時に同封されている返信用封筒を利用)、窓口持込(所轄の年金事務所等)のほか、e-Gov等による電子申請も可能です。
  • その後遅くとも9月中には日本年金機構等から標準報酬決定通知書が送られてくるので、内容を被保険者へ通知し、新たな標準報酬月額をその年の9月分から翌年の8月分まで1年間適用します。(給与が月末締め翌月払いの場合は、10月支払分から翌年の9月支払分までの適用になります。)

随時改定

  • 社会保険料は基本的に定時決定による標準報酬月額を基に、その年の9月分から翌年8月分の給与に1年間適用します。但し、給与月額に著しく変動があった場合は年の途中で標準報酬月額を改定する手続きを行います。これを随時改定といいます。
  • 随時改定は、次のすべての要件に該当する場合に行います。
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固定的賃金(※12)に変動があった、又は給与体系の変更があった。
昇給又は降給によって算出した標準報酬月額の等級と、それ以前の等級との間に原則として2等級以上(※13)の差がある。
固定的賃金に変動があった月から継続した3ヶ月間の基礎日数がいずれも17日以上(※14)ある。
  • 随時改定は、上の①が適用される給与支給月を含め、継続して3ヶ月間の基礎日数が17日以上であり、且つ②を満たした場合に、3ヶ月間の報酬の平均を基にに改定し、4ヶ月目の給与からその年の8月分の給与まで適用します(※15)。また、随時改定の要件に該当したら、速やかに「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を年金事務所等へ提出します。

(※12)固定的賃金とは基本給、役付手当、家族手当、通勤手当などをいいます。一方、残業手当、日直手当、精勤手当などは非固定的賃金です。

(※13)例外として、標準報酬月額の上限、下限をまたぐ変化の場合には1等級差で随時改定を行います。該当する場合には、日本年金機構:随時改定(月額変更届)もご参照ください。

(※14)所謂「特定4分の3未満短時間労働者」(その意味は別記事「社会保険・労働保険の適用基準」ご参照)については「17日」を「11日」に読替えます。

(※15)7月〜12月に改訂された場合は、翌年の8月分まで適用します。

育児休業等を修了した際の改定

  • 産前産後休業終了後や育児休業終了後、短時間勤務などで給与月額が下がった場合には、随時改定の要件に該当しなくても、標準報酬月額が改定されます。
  • 育児休業等を修了した日の翌日が属する月から3ヶ月間の報酬の平均を基に、標準報酬月額に1等級でも差が出た場合に、4ヶ月目の給与から改定分を適用します。
  • 3ヶ月のうち、報酬支払基礎日数が17日未満(※16)(※17)の月がある場合は、その月を除外して算出します。
  • 改定による標準報酬月額は、1月から6月までのいずれかの月に改定されたものは原則としてその年の8月分の給与まで、7月から12月までのいずれかの月に改定されたものは原則として翌年の8月分の給与まで適用されます。
  • 改定の要件に該当したら、速やかに「産前産後休業終了時報酬月額変更届」又は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を年金事務所等へ提出します。
  • 尚、厚生年金保険に関しては、産前産後休業や育児休業等による改定により標準報酬月額が下がっても、3歳未満の子を養育している間は将来受給する年金額が養育期間前の高い標準報酬月額で計算される特例があります。これを適用するには、被保険者からの申出を受け事業主が「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申請書」を事業所を所轄する年金事務所等経由、日本年金機構へ提出します。

(※16)所謂「特定4分の3未満短時間労働者」(その意味は別記事「社会保険・労働保険の適用基準」ご参照)については「17日」を「11日」に読替えます。

(※17)所謂「短時間就労者」(その意味は別記事「社会保険・労働保険の適用基準」ご参照)については、①1ヶ月でも基礎日数が17日以上ある場合はそれらの月の平均値、②3ヶ月とも基礎日数が17日未満ながら15日以上の月がある場合はそれらの月の平均値とします。

60歳以上の者の再雇用時の特例

最後に、60歳以上の者の再雇用時の特例である同日得喪について解説します。

  • 高年齢者雇用安定法(※18)により、60歳未満の定年制は禁止され、65歳までの雇用確保措置が義務化されている為、再雇用制度を取り入れている事業者が多くあります。
  • 再雇用時には、社会保険の状況として以下の3つのパターンが考えられます。
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賃金が変わらず標準報酬の等級に変更がない。
賃金が下がり標準報酬の等級が1等級以上低下。
勤務時間等が減少し社会保険の適用要件を満たさなくなる。
  • 以上のうち、①の場合は何ら手続は不要、③の場合は再雇用日を喪失日として社会保険の資格喪失手続を行うことになります(※19)
  • そして②の場合に、特例として同日得喪という手続があります。これは再雇用日付で被保険者資格の喪失届と取得届を提出することで、再雇用後の最初の月から再雇用後の給与で求めた標準報酬月額が適用できるというものです。
  • 本来なら随時改定により4ヶ月目の給与まで保険料の変更を待つ必要がありますが、同日得喪により直ちに(且つ1等級以上で)変更が可能になります。
  • 同日得喪を適用するには、60歳以上で、1日も空くことなく再雇用される必要があります。

(※18)正式名称は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」です。

(※19)資格喪失手続については、別記事「社会保険料の徴収開始と終了のタイミングについて」ご参照。

以上