初回出稿日:2024年4月 4日
最新更新日:2024年9月18日
法定三帳簿 労働者名簿 賃金台帳 出勤簿
労働者を1人でも雇ったら、使用者は各事業場ごとに労働者名簿、賃金台帳、出勤簿を作成、管理し、5年間(経過措置として当分の間は3年間で可)保存しなければなりません(※1)(※2)。これら3つの帳簿を法定三帳簿と呼びます。
法定三帳簿は、雇用保険手続や助成金の申請、労働基準監督署の調査などで必要となり、義務違反には罰則規定もあります(※3)。
(※1)労働者名簿と賃金台帳は、それぞれ労働基準法107条、108条、その保存義務は同法109条による。出勤簿は同法109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」にあたると解されています。
(※2)保存の起算日は、労働者名簿は労働者の死亡、退職又は解雇の日、賃金台帳は最後の記入をした日、出勤簿は最後の出勤日です。
(※3)労働基準法120条による30万円以下の罰金。
三帳簿の詳細は以下の表1に示した通りです。労働者名簿と賃金台帳については、必要な項目をカバーした厚生労働省作成の様式が厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー:労働基準法等関係主要様式」から入手できますので、ご参照ください。
また、賃金台帳については、実務上は年末調整で利用する源泉徴収簿(※4)と統合した「源泉徴収簿兼賃金台帳」を活用しているケースもあります。源泉徴収簿兼賃金台帳としては市販の紙ベースの書式もありますが、ご参考まで筆者が Excel で作成したものを以下に紹介しておきます。
(※4)源泉徴収簿は法定帳簿ではありませんが、年末調整の際に利用すると便利です。国税庁でも雛形を公表(国税庁「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成」)して利用を進めています。
【表1】法定三帳簿
労働者名簿 | 賃金台帳 | 出勤簿 | |
---|---|---|---|
対象者 | 全労働者(パート、アルバイトなどを含む)。但し、日雇労働者を除く。 | 全労働者(パート、アルバイト、日雇労働者などを含む)と事業者(役員等)。 | 全労働者(パート、アルバイトなどを含む)。但し、管理監督者(※5)は除く。 |
記載事項 | ①氏名 ②生年月日 ③履歴(異動など社内の履歴) ④性別 ⑤住所 ⑥従事する業務の種類(※6) ⑦雇用した年月日 ⑧退職や死亡年月日とその理由や原因 | ①氏名 ②性別 ③賃金の計算期間 ④労働日数 ⑤労働時間数 ⑥以下の時間数 •時間外労働 •深夜労働 •休日労働 ⑦基本給や手当等の種類と額 ⑧控除項目と額 | 任意ですが、使用者の労働時間の管理責任等の観点から、以下が必要とされます。 ①出勤日・労働日数 ②始業・終業の時刻 ③日別の労働時間数 ④以下の日付・時刻・時間数 •時間外労働 •深夜労働 •休日労働 尚、労働時間の管理に関し使用者の責任が強化されてきている点にもご留意ください(※7)。 |
様式 | 厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー:労働基準法等関係主要様式」から雛形を入手可能。 •記載内容がカバーされていれば厚労省様式以外でも可 •電子的様式でも可 •日雇労働者の賃金台帳は労働者ごとでなく、まとめて記入(厚労省様式ご参照) | ||
更新時 | 記載事項に変更あるとき | 賃金の支払ごと | 出勤の都度 |
(※5)労働基準法41条2号に規定される管理監督者。但し、管理監督者に該当するかは、単に役職名によるのではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態で判断することになります。
(※6)常時30人未満の労働者を使用する事業においては、業務の種類は記載不要。
(※7)労働時間の管理については、2019年4月施行の改正労働安全衛生法により、単に労働者の自己申告に基づくのではなく「客観的な把握」が法的義務になりました。詳細は厚生労働省「客観的な記録による労働時間の把握が法的義務になりました」ご参照。
以上