初回投稿日:2025年4月12日
本記事では、個人事業主が商号(屋号)を変更する場合に必要な手続について解説します。
まず、前提として個人事業では商号を用いるかどうかは任意であり、また、商号を用いる場合でもそれを登記するかどうかも任意です。従って、以下の手続は、商号を用いている場合に、それを変更するときに必要な手続ということになります。
登記変更手続
商号(屋号)を登記している場合は、その変更登記を所轄の法務局へ申請します。変更手続は、基本的に商号登記時と同様、商号登記申請書に登録免許税3万円分の収入印紙を添付して提出します。また、印鑑の届出を変更前の屋号印にしている場合は変更後の屋号印の登録が必要なため、再度印鑑届出書の提出も必要です。
手続は、「登記・供託オンライン申請システム」(※1)でも行うことができますが、個人事業主の場合は、同システムを利用する機会は限られており、利用登録や設定の手間を考えると、窓口での手続の方がお勧めです。
(※1)法務局関係のオンラインサービスです。
税金関係
所得税や(課税事業者の場合の)消費税などの税金関係においても、商号(屋号)の使用は任意です。例えば、開業時に税務署に提出する開業届や、毎年の確定申告書などに屋号を記入する欄がありますが、その記入は任意です。言い換えると、税務面では個人番号によって管理されているので、屋号はあくまで参考的な位置付けといえます。従って、屋号を変更した場合でも、以降の書類の屋号欄に(記入したい場合は)新たな屋号を記入するだけということになります。
但し、消費税のインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の場合であって、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」において屋号を公表している場合(※2)は、その変更を行う必要があります。詳細は、国税庁「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出手続」をご参照ください。
(※2)個人事業主の場合、単に適格請求書発行事業者の登録申請を行なっただけでは、国税庁の公表サイトに記載されるのは、登録番号、氏名、登録年月日等で、屋号は記載されません。登録申請に加えて「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」を提出して屋号を公表している場合に、同申出書を再提出して公表された屋号を変更することになります。
労働保険関係
労働保険関係が成立したときに、事業所の名称として屋号を含めて登録している場合は、名称変更手続を以下の通り行います。
提出書類 | 提出先 |
---|---|
① 労働保険名称、所在地等変更届 | 一元適用事業は労働基準監督署、二元適用事業は労働基準監督署及び公共職業安定所 |
② 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 公共職業安定所 |
- 一元適用事業、二元適用事業の区別は、「労働保険の加入手続」をご参照ください。
- 手続の詳細は、厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」(第3章 適用事業所についての諸手続き)をご参照ください。また、届出様式などは各提出先へご照会ください。
- e-Gov(※3)によるオンライン手続も可能です。
- ②の書類は、ハローワークインターネットサービス「雇用保険事業主事業所各種変更届」でも届出様式を入手できます。
(※3)デジタル庁が運営する社会保険等のオンラインサービスです。詳細は、「行政のオンライン手続について」をご参照ください。
社会保険関係
社会保険の適用事業所であって、事業所の名称として屋号を使用している場合、名称変更手続を以下の通り行います。
提出書類 | 提出先 |
---|---|
健康保険・厚生年金保険 適用事業所所在地・名称変更届 | 年金事務所 |
- 手続の詳細は、日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き」をご参照ください。
- e-Gov(※4)によるオンライン手続も可能です。
- (協会けんぽではなく)健康保険組合加盟の場合は、健康保険組合へも別途届出を提出する必要があります(詳細は各健康保険組合へご照会ください)。
(※4)デジタル庁が運営する社会保険等のオンラインサービスです。詳細は、「行政のオンライン手続について」をご参照ください。
その他
以上のほか、商号(屋号)を使用している場合は、銀行名義・取引印の変更、各種契約における名称変更、角印・ゴム印、名刺、パンフレット、HPなどの変更、取引先への連絡等も忘れずに行いましょう。
以上