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採用時の源泉所得税、住民税関係の手続

人を採用すれば、原則、従業員に関して所得税の源泉徴収義務と個人住民税の特別徴収(※1)義務が発生します。本記事では、これらに関連して採用時に必要な手続について解説します。

尚、給与からの徴収(給与計算)や、徴収した税金の納付など経常的な手続は別記事でカバーします。

(※1)住民税の特別徴収については、別記事「個人住民税の普通徴収と特別徴収」をご参照ください。

採用時の従業員についての所得税に関する手続

従業員から以下の書類を提出してもらいます。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(※2)
前職の「給与所得の源泉徴収票」(採用と同じ暦年に前職での給与所得がある場合)

(※2)この申告書の概要については、別記事「扶養控除等(異動)申告書の概要」をご参照ください。

①は、この内容に従って毎月の給与から源泉徴収する所得税の金額を求め、実際に源泉徴収するために必要になります。また、②は年末調整時に前職の給与所得と源泉徴収した所得税額を含めて年末調整する必要があるために必要になります。

採用時の従業員についての個人住民税に関する手続

住民税は、前年1月から12月までの所得に応じて自治体が算出した税額を、6月から翌年の5月にかけて給与から特別徴収することになっていますが、従業員の採用時には、その対象者の採用以前のステータス等によって手続が違ってきますので注意が必要です。以下、下図1のフローチャートに従って解説します。

【図1】採用時の従業員の住民税に関する手続フォローチャート1

(1)前年(1月〜12月)に所得がない

新卒など前年に所得のない場合や、住民税の課税水準以下の所得だった場合、従業員の住民税の特別徴収は翌年6月からになりますので、採用時点での手続きは不要です。

(2)新職にて普通徴収を選択(例外的)

採用する事業者の状況によっては事業者による特別徴収ではなく、自治体が個人から直接徴収する普通徴収によることが認められる場合があります。詳しくは別記事「源泉所得税、住民税の納期の特例等」の「住民税の普通徴収が可能な場合」をご参照ください。これに該当する場合も、採用時点での手続は不要になります。

(3)前職が自営業などで普通徴収だった

この場合は、普通徴収から特別徴収へ切り替えるための届出である「特別徴収切替届出(依頼)書」を従業員の住所地の自治体へ提出する必要があります(書類の名称、書式は自治体によって異なりますので、「特別徴収切替、自治体名」でネット検索するなどして各自治体の書類をご確認ください)。

普通徴収の場合は、個人宛に送られてくる納付書によって年4回程度に分けて納付しますが、年の途中で特別徴収に切り替える場合は、そのタイミングによって未納付分を特別徴収に切り替えて毎月の給与から徴収することになります(切替のタイミングについては、届出書の注書きなどに従います)。6月から(新たな年度分の)特別徴収を開始する場合も、指定の期日(通常4月上旬頃)までに届出書を提出することになります。

(4)前職が給与所得者で特別徴収だった

この場合は、前職の退職時期や退職時の住民税の処理方法によって、さらに細かい場合分けがあります。下図2のフォローチャートへ進んでください。

【図2】採用時の従業員の住民税に関する手続フォローチャート2

① 転職先で特別徴収を継続

前職の退職時に転職先が決まっている場合には、「給与所得者異動届出書」を退職先から転職先へ送付してもらうか、転職者自身が取り次ぐことで給与からの特別徴収を転職先で引き継ぐことができます。

給与所得者異動届出書は、通常、従業員が退職した場合に退職先から従業員の住所地の自治体へ退職後速やかに(通常、退職日の翌月10日までに)提出する書類ですが、特別徴収を継続する場合には、退職先で必要事項を記入したのち、転職先で必要事項を追記して転職先から従業員の住所地の自治体へ期限内(通常、退職日の翌月10日まで)に提出することになります。

② 普通徴収へ切替

前職の退職時に普通徴収へ切り替え済みの場合は、上記(3)と同様、改めて特別徴収へ切り替える手続を行います。内容は上記(3)をご参照ください。

③ 前職にて一括徴収

この場合は、採用時点での手続は不要になります。

オンライン手続について

採用時における従業員の個人住民税に関する手続としては、以上述べたとおり、ケースによって「特別徴収切替届出(依頼)書」や「給与所得者異動届出書」の提出が必要になりますが、自治体によって書式が異なるなど、やや手間がかかるのが現状です。一方、地方税のオンライン行政サービスである eLTAX によれば全国統一フォーマットでオンラインで手続することができます。但し、これらの届出書の提出には、ブラウザベースの eLTAX Web版ではなく、ソフトウェアをダウンロードする DL版 を利用する必要があり、OSとしては Windows が前提(MacOSは不可)になります(2024年4月現在)。

以上